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指輪

 一ッ目の化物が放った赤い光に包み込まれ、次に来るだろう衝撃に備えて目を閉じ、歯を食いしばる。

 走馬灯なのか、瞼の裏では母と過ごした幼少期の思い出が、流れては消えていく。

 最後に、母が処刑された場面が流れてきたとき、自分は、こんなところで何もなせずに死んでいくのだと考えると、頭の中が激情で染まるが何もできない。


 しかし、幾度待てども痛みはやってこない。瞼を開いてみると、やはり赤い世界だ。しかし、視界になにか白い光も混じっている。

 それは、手や脚等、体すべてを覆っているようで、その光が赤い光を相殺しているように見える。

 どこから、白い光が来ているのか見てみると、俺の胸が光っていた。正確には胸ポケットが光っている。胸ポケットを探ってみると光り輝く指輪が出てきた。


「この指輪は……。いや、そんなことより皆は……」


 そう呟き、周りを見渡してみると、あたり一面赤い世界なのに、ティリアと気絶している爺、ルーデルの姿ははっきり確認することができた。

 3人にも、白い光の膜が張り付いており、それが赤い光を防いでるようだ。

皆の現状に安堵し、再度指輪について考える。

 指輪はラグナロク城の離棟の内部に巨大な空間を作り、壁のカモフラージュまで作って隠されていた。確か、あの離棟はラグナロク建国後に出来たもので、2代目ラグナロク帝王が作ったものだ。その当時、造ったはいいものの誰が使うでもなく捨て置かれたと文献には書かれていた。


「2代目帝王がこの指輪を隠したのか? 一体何のために……」


 考えてみるが、何を考えて2代目がこの指輪を隠したのか、この指輪は一体なんなのかについてはわからない。


指輪について考察していると、ティリアも現状に気がついたのか、目を開けるとある空間を指差した。


「ジーク様、あれ見て! 赤い光が白い光に喰われていくわ! 」


 ティリアが見ている先を見てみると、赤い光が段々と白い光に侵食されて行くのが見えた。白い光は、赤い世界を食い尽くすと、一ッ目が出している赤い光を辿り、一ッ目の化物を包み込んだ。

 しばらくして光が消えると、そこには何もいなくなっていた。


「どういうことだ……? 」


 光を放っていた指輪は、役割を終えたと言わんばかりに光は消えている。

とりあえず、助かったことには変わりないので、指輪のことは後回しにすることにして、近くで気絶していたルーデルと爺を起こす。


「ルーデル、爺。起きろ! 」

「う……ん……。ハッ! ワシは……。そうじゃ! ジーク様ご無事ですか!? 」


 まずは爺が起きた。


「ああ、大丈夫だ。この指輪が守ってくれた」

「この指輪が……ですか? 」


 そう言いながら爺は、ジッと真剣に指輪を見ているが、やはり何もわからなかったようで降参のポーズをとる。


「やはり、わしには分かりませぬな……」

「しかたがない。指輪の正体も追々分かってくるだろう。それよりも、あの化物はなんだったんだ? 」


 長く生きている爺なら、何かわかるかもしれないと聞いてみるが、それもわからなかったようで、首を横に振る。


そこで、ルーデルも起きた。


「うっ……。ジーク様? ここは一体……」

「ルーデル、ようやく起きたか。全て終わった後だぞ」

「!? あの化物はどうなったのですか!? 」


ルーデルも爺と同じような反応をしたので、先の会話の通りの事を伝えてやる。


「そうでしたか……指輪が。化物については、私も聞いたことがありません」


 やはり、ルーデルも知らなかったようで、無念そうに答える。


「あたしは、噂程度なら聞いたことあるよ! 」


 そこでやっと、今まで黙っていたティリアが発言した。


「なに!? どんな噂だ? 」

「確か、最近暗黒大陸の方から出てくる化物がいるって、噂で聞いたことあるよ。あの化物ってそれなんじゃない? 」

「そんな噂が……。しかし、ここは暗黒大陸からかなり離れた場所だぞ? 暗黒大陸からここまでは数多くの国を通らないといけないし、どうやってここまで来たんだ? 」

「さぁ……。そこまでは分からないけど……」

「ジーク様! そこまで考えても分からないものは分からないものですじゃ。それよりも、早く移動しませんかな? 」


 それもそうだと考え、移動することにした。馬車は先の戦いで一ッ目の化物に潰されてしまったので、ここからは歩いて、イルガード国に行くことになる。

 現在地からは馬車で2日の距離だったので、歩いたら6~10日くらいだろう。


「あの化物のせいで、先行きが長くなるなぁ……」


 ルーデル、爺、ティリアの三人は無言で同意してくれた。




「お前ら、ここに有り金全部おいて行きな! 」


 そう叫んだのは、黄色いバンダナをした目の細い男だった。


「またか……。これで何回目だ? 」

「6回目です」

「6回っておかしくないか!? 同じ山の中にどれだけ潜伏してるんだ! 」


 黄色バンダナを無視しつつ、ルーデルと話していると、ついに耐えられなくなったのか黄色バンダナが怒鳴り声をあげる。


「お前ら!? 俺をなめてんのか! 」

「舐めてはいないが……。ルーデル、今回は生かしておいてくれ」

「ハッ! 」


 ルーデルはそう言うと、ナイフを大剣に拡大し、黄色バンダナに突きつける。


「命が惜しければ、我々に投降しろ」

「ま、魔具使いがなんで!? 」


 そう言いながら黄色バンダナはあっさりと捕まった。俺は捕まった山賊に近づくと、出来るだけ威厳があるように目に力を込めて尋問を開始した。


「さて、お前たち山賊は、ここらに一体どんだけいるんだ? 」

「俺たちリリス一家しかいねぇよ! 」

「リリス一家? じゃあ、お前らのボスは誰なんだ」


 黄色バンダナは最初、ボスのことを口外するのを躊躇っていたが、ルーデルが剣をこれみよがしに見せつけると、慌てて答えた。


「俺たちのボスは、リリスの姉御だ! ――言ったんだから命だけは助けてくれ! 」

「それは、お前が俺たちを山賊のアジトに案内したら考えてやる」

「そんな!? 家族を売るなんて出来るわけないだろ! 」


 悪いことをしているのは山賊の方なのに、何かカッコイイことを言っている。


「早く教えないと……。ルーデル! 」

「ヒィ!? 教える! 教えるから、あの小僧を近づけないでくれ! 」

カッコイイことを一ていたわりに、簡単に裏切った。


 山賊に案内され、山の中を歩いていく。しばらく歩くと、少し大きめの小屋が見えてきた。


「あそこに、リリスの姉御が住んでる! ――もういいだろ? 逃がしてくれ! 」


 そういう山賊を逃がしてやると、小屋に近づきノックをする。すると、中から可愛らしい声が聞こえてきた。

 声が可愛いといっても、山賊に姉御と慕われるくらいだから、ものすごくゴツイ体をしているんだろう。と失礼なことを考えながら開けてもらえるように言う。

 しばらくして、内側からドアが開いた。



――扉の前に立っていた女性は、信じられないくらい清楚な女性だった――


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