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盗賊-後編

 ニヤニヤ笑っている爺はとりあえず置いておいて、巨乳女盗賊を追って走り出した。

 女はかなり身軽なのか、どんどん引き離されていく。


「おい! 爺。あっちには何がある! 」


 街にほとんど出たことがない俺は、仕方なく爺に女の向かっている方向に何があるのか聞く。


「あっちは確か……。商人地区とスラムですな」

「商人地区とスラム? 真反対の人種ではないか」

「スラムの人間は商人から物を盗んで生活しているからのぅ、仕方がないのですじゃ……」

「……なるほど。それにしても、あの盗賊はすこしお利口ではないのかもしれないな。これだと、スラムに行きますと言ってるようなものではないか? 」

「そうですな……。まぁ、簡単に捕まるならそれで良いではないですか! 」


 それもそうだと思い、俺は少しスピードを緩める。流石に疲れた体。行き着く先はある程度わかるし、あとはずいぶん先を走っている元気なルーデルに任せるとしよう。


 俺と爺は、ゆっくりとスラムに向かった。


―――――


「ジーク様! 爺様! 遅いですよ! 」


 スラムに着くと、ルーデルに開口一番に文句を言われた。それを、ドウドウと押さえながら、さっきの女はどこに行ったのか聞く。


「さっきの女は、そこの家に入っていきました」

「お前の目の前で入っていったのか? 」


 それなら、かなり間抜けなやつだが……。


「いえ、追いつけないと思いまして、そこの椅子に座ってジーク様を待っていたんですが、撒いたと思ったのかここに戻ってきて入っていきました。あっちからは幸いなことに見えなかったようです」

「なるほど、とりあえず入ってみるか」

「わしが先頭をいきますぞ! 」

「頼んだ」


 爺を先頭に俺、ルーデルの順に隊列を組んで家の中に入っていく。

 家に入ると、大量の子供たちがご飯を食べていた。


「なに!? あんたたち誰!? 」


 俺たちが呆然としていると、部屋の奥から女が出てきた。

 絹糸のように細く滑らかな青い髪は肩までのばされており、勝気で大きな青い瞳をしている。140cm程度の身長。そして極めつけに大きな乳房! 間違いなく盗賊だ!


「あのデカさ……間違いなくあいつだ! 」

「ジーク様……声に出てますよ……」

「……とりあえず、アイツを捕らえろ! 」

「ハッ! 」


 そういうと、爺は、逃げようとした女を捕まえ、床に組み敷いた。

 逃れようとする女を逃がすまいと爺が力を入れ始めると、やっと状況に気づいたのか、子供たちが「やめろ! 姉ちゃんをいじめるな! 」「ばけもの! 」「みんなやっつけろーー!! 」と言って爺にパンチやキックをお見舞いする。


「くすぐったいの~。ふぉっふぉっふぉ! もっと鍛えんといかんぞ! 」

「流石、鍛えてるだけあるな。爺! 」

「まだまだ、現役ですからのう! 」


 爺はくすぐったそうにしながら、冗談を言っている。……冗談?

 とりあえず、子供を一人一人丁寧にどかし、床に突っ伏している女の前に腰をかがめる。


「なぜ、ものを盗んだりしたんだ? 」

「うるさい! あんたたちに何がわかるのよ! 」


 女は犬歯をむき出しに吠える。


「わからないが、理由の如何によっては、逃がしてやってもいい」


そう言うと、女は少し考えてから理由を話した。


「私たちは……スラムで生きた人間は、手癖が悪そうだとかで、孤児院に入れてもらえないのよ。……孤児院に入れなきゃ、身元を保証できるものも手に入らない。仕事もできない! ――だから、商人どもから少ない食料を奪って生きてきたんだ」


 王城で勉強していたが、そんな現実は知らなかった。やはり、学と実は違うのかもしれない。


「そんな時にあいつは現れたんだ……。私が、他の貴族どもから金を盗って来れば、一生子供たちを不自由なく暮らさせてやるって言って近づいてきやがった。……もちろん乗ったよ! 当然だろう? これから一生盗みしながら生きていくよりはいいはずだ。でも……あたしは、宰相に騙されたんだよ! ……盗んでも盗んでも、少ないとしか言われなくて……うっ……ううぅぅ――」


そう言うと、宝石のような青い瞳から大粒の涙こぼし始める。


「わかった。では、俺の部下にならないか? お前のような身軽な人間がいると心強い。――その代わりと言ってはなんだが、知り合いの孤児院をやっている人間に子供達を託してもいい」

「お前が嘘をついてるのかもしれないじゃないか……」

「俺は、この国の王子だ! それが嘘などつくものか! 」


正式には"元"王子だが、今回は気にせずに言い切る。


「本当なの? 」


 到底信じられないのか、こちらを疑わしげに見つめてくる。そこで、俺は、知り合いの孤児院を営んでいる人物への手紙を書き、渡してやった。


「明日の朝。これを持って、ここに書いているところに行け! もし、本当で俺についてきてもいいと思ったら、明日の昼に東の外出門までこい」

「……わかったわ。東の外出もんだね。あんたが約束を守ってたんなら、必ず行くと約束する」

「では、また明日会おう! 」


 そう言って、俺たちは宿に戻った。



―――――



次の昼


「本当に来るんですかのう? 」

「来るさ! きっとな……」

「あっ! ジーク様あっち! 」


 ルーデルが指差している方向をみると女がいた。青いミディアムヘアに勝気で大きな青い瞳。年の頃は14歳くらい。その小さな体に不釣合いな巨大な乳房は水色のローブに隠しきれていない。


 そいつは近づいてくると、照れているのかそっぽを向いて言ってきた。


―――待った? ―――と




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