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盗賊-前編

「何?開けられない?お前は何を言っとるんだ!」

「ヒィ!? い、いまは、この街に犯罪者が潜伏中でして……それを捕まえるまで開けるなとの命令が出ております!」

「わしが言ってもか!?」

「ス、スイマセン!宰相閣下からの命令とのことなので……」

外から、爺の怒鳴り声と門番の声が聞こえる。

190cmを超える爺に凄まれたら、怯えるのもわかる・・・

「ルーデル、門番に合掌……」「ぇ!?は、はい!」


ここは、ラグナロク城下町の外出門だ。ラグナロクには四つの門がある。何故四つあるのかは分かっておらず、一説にはラグナロクの街は神を模したもので、それぞれの門が両手、両足となっており、ラグナロクの中央にあるラグナロク城が神の頭を表していると言われている。

流石にそれはないんじゃないか? と考えていると、爺がこちらに戻ってきて俺とルーデルのいる荷車部分を覆っている布を開いた。


「爺、どうなってるんだ?」

「それが、今貴族の居住エリアで盗賊が頻繁に現れるとかで……そいつを捕まえるまで、絶対開くなと上から命令されてるらしいのですじゃ」

「さっき、宰相とか聞こえたけど?」

「それが……被害者はあの宰相の禿げ茶瓶らしいのですじゃ」

「禿げ茶瓶って、爺様……」

「あれがハゲでなくて誰がハゲなんじゃ!」

「茶瓶の方です!」


宰相は、小柄な人物で今年60歳になる。爺よりも年下だが、頭の方が少しかわいそうなことになっているのだ。


「とりあえず、出られないんだったらそいつを捕まえるしかないだろ!」

「そうですな……そやつは夜に出るらしいので、一泊ここらで泊まることになりそうですじゃ」

「じゃあ、僕がここらで最もいい部屋を借りてきますね!」


そう言ってルーデルが走っていった。そんなにお金を使って大丈夫なのか?と思いつつ、ルーデルの金なので任せることにした。


「坊ちゃま~!見つけてきました~~!!」


爺と話しながら数分待っていると、ルーデルが遠くから手を振り、走ってきた。相変わらず仕事が速い。


「もう、見つけたのか!流石、ルーデル!頼りになるなぁ!」

「や、やめてください!」


そう言いながらも、嬉しそうに頬を染めている。


これは、本格的にそっちの気があるのかもしれない……用心しよう。内心では失礼なことを思いつつ、ルーデルのあとについていく。


「ここです!」


 そういって、ルーデルが案内した建物は、見事な豪華宿だった。まず、建材から違う。一般的に建物を作る場合使われるのは木だが、ここは石を使っているようだ。しかも、綺麗に削られていて、すこし光沢がでている。


「すごいな……。一泊いくらするんだ?」

「え~っと3人1部屋で、200ゴーツです」


 200ゴーツって言うと、平民の生活2ヶ月分まるまるするわけか……。まぁ、金はルーデルのだから文句は言わない。


「これは、熟睡できそうですな!」

「いや、熟睡したら泥棒捕まえられないから!」


 宿のドアを開けると、正面にカウンターが有り、厳つい顔のおじさんが立っていた。


「すいません、一泊したいんですが」

「はい、ルーデル様に伺っております。今、部屋にご案内いたしますね!」


 顔は厳ついが、中身は優しそうな人で安心した。


「おお~!!これは広い!」


 部屋についてみると、かなりの広さがあった。俺は王城暮らしで、もっとすごいだろ!と思うかもしれないが、5歳から離棟で暮らしていた俺にとっては、十分すごいのである。


「カーペットふかふかですね~!」

「この絵も中々味わい深いのぅ!」


 ルーデルはカーペットに寝転がり、爺は地獄のような場所を描いた絵に頬ずりしている。

 爺が少し気持ち悪いが、年がいくといろいろあるのだろうと考えスルーすることにする。


「とりあえず、今日は寝ずに暗くなってきたら貴族エリアまで移動するぞ!」

「「ハッ!」」


 そう言って、少し布団に横になった。



「……され!……きてくだされ!ジーク様、起きてくだされ!」


 体が揺れる振動で目が覚めた。寝てしまっていたことに気づいた俺は、即刻起きて外を見渡す。

 ちょうど、日が傾いてきたところのようだ。


「すまない、寝ていたようだ……爺ありがとう」

「なんのなんの!ーーでは、行きますかな?」

「そうだな。そういえばルーデルは?」


 外を見ていたため気づかなかったが、ルーデルがいない。


「ルーデルなら、先に見張っておくとか言って、出て行きましたぞ」

「そうか、相変わらずせっかちだな……」


 そう呟きつつ、準備を整えた俺は、爺を伴って貴族エリアまで走って移動する。


「ハァハァ、やっと着いた。ルーデルは?」

「鍛え方がなっとりませんぞ!ルーデルはあそこです」


 じじいのくせにやたらと元気な爺が宰相の家の門を指差す。ルーデルも気づいたのか、こっちを見ながら手を振っている。

 ルーデルに声をかけようと近づいた時、視界に何かがよぎった。

「女? 」


 それは、貴族たちが住む豪邸の屋根をピョンピョンと身軽に飛んでいる覆面姿の人間だった。

 なぜ女だとわかったかというと、覆面の胸部に膨らみがあったからだ。かなりでかいのか、屋根から屋根にとびごとに大きく揺れている。


「ジーク様!なにを見惚れているんですか!早く追いますよ!」


 み、見惚れてないわ!と言おうとしたが、ルーデルはもう走り出している。


 俺の後ろでは、ニヤニヤした顔の爺がいた。



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