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馬車

「東の暗黒大陸に行こうと思う」


俺は、城門をくぐり抜けると、唐突に話す。


「東でございますか? 」


そう答えるのは、12歳くらいの少年――ルーデル。


「東の暗黒大陸に向かうにはラグナロクの東に位置する大国、イルガード国を抜け、5つの小国を抜ける必要がある。東側の国々は最近まで戦争をしていたから、治安が悪くなっているだろう」

「それは、危険だと思うのですがのぅ? 」


今度は70歳はいっているであろう、巨漢の老人が質問してくる。


「治安が悪いってことは、戦孤児や職を失った人達に溢れているだろう。俺は、そう言った人々を俺の国の住民にしようと思っている」

「戦孤児を……ですか? そのような輩を用いるのですか!? 」

「まぁ、いいじゃないか。そういう人と接する機会は、これから多くあるぞ? 気にするな」

「ジーク様は自由すぎます! 」

「ルーデルよ、落ち着きなさい。ジーク様の無茶は今に始まったことではない」

「し、しかし……」

「まぁ、それはいいとして」

「良くないんですが……」

「まぁ、いいとして。二人共この指輪のことを知ってるか? 魔具のようなんだが……」

「……」

「いや、知りませんな……。わしも長いこと生きてますが、そのような物みたこともありませぬ……」

「そうか、ならいいんだ。悪かったな」


 魔具使いである爺でも知らないとなると、よほど珍しいものなのかもしれない。


 城下町についてみると、かなりの賑わいを見せていた。


「そういえば、どうやって移動しようか……。馬車とか持ってないんだが」

「そうですなぁ……。わしらも金は持って来ておらんしなぁ」

「爺様は適当過ぎます! 金なら、私が1万ゴーツほど持ってきました……」

「1万とは多いのか? 」

「多いですよ! 一般の平民が一ヶ月に使う金が100ゴーツほどです、馬車なら2000ゴーツあれば買えるでしょう」

「おぉ、さすがルーデル! お前のこと愛してるぞ! 」

「やめてください……」

「ふぉっふぉ! ルーデルや。頬を染めているとそちらの気があるように見られるぞ? 」

「染めてません! 本当に……。早く行きますよ! 」

「かわいいやつだなぁ! 」

「ふぉっふぉっふぉ! 」


―――――


「ここが馬車を売ってるとこか~、初めて来た……」

「何か御用でしょうか? 」


 出てきたのは、ねずみ顔の小男だった。俺たちを冷やかしと勘違いしているのか、その顔は面倒くさそうに歪んでいる。


「馬車を売ってもらいたいんだが、どの程度の金が必要だ? 」

「馬の状態、荷台の状態によって、値は変わってきますが、平均的なやつだと1500ゴーツほどです、はい」

「じゃあ、それでいいので今すぐ買うことはできるか? 」

「もちろんでございます! ささっ、どうぞこちらへ」


 俺たちが購入する気があるとわかったからか、態度が一変した。手をモミモミしながら近づいてくる姿は、ちょっと気持ち悪い……。



 案内された部屋はなかなか綺麗にされていた。ふかふかのカーペットに高価な調度品の数々。ねずみのようななりだが、結構な大人物なのかもしれない。


「ささっ、こちらの部屋でお掛けしてお待ちください! 」


そういうと、ねずみ顔の男は部屋を出て行った。


「あの男、結構な人物かもしれませんね」


ルーデルもそう思ったのか、こちらに耳を近づけて囁いてくる。


「そうだな。しかし、ここはラグナロクの城下町だ。変なことはできない」

「そうでした……。引き入れたら中々使えると思ったんですが」

「お前さんはまだまだ若いのう! もっと精進せい! 」

「わ、分かっております! 」


 そんな話をしていると、馬車の用意ができたのか先ほどのねずみ男が帰ってきた。


「お客様、馬車の用意ができました。料金を頂戴したいのですが! 」


 そう言って目を金のマークに変えながらにじり寄ってくる。


「近づくな! 気色悪い……。ルーデル出してやってくれ! 」

「ハッ! これが金だ、あと貴様、坊ちゃまに気安く近づくな! 」


 ルーデルは金の入った袋を投げ渡すと、今度は威嚇し出す。ちなみに坊ちゃまといっているのは、名前だと万が一身分がバレたらめんどくさくなるからだ。

今は服も平民が着る少し高価な程度のものを着ている。


「ハ、ハイ! すいませんでした! 」


 ルーデルの剣幕に驚いたのか、ねずみ男が後ずさる。といっても、ゴーツが入った袋は忘れずに持っているところに商人魂が伺える。


「1499、1500。はい、確かに1500ゴーツいただきました。では、馬車まで案内します! 」


そういうと、少しルーデルを避けながら俺たちを先導していく。


「こちらが、お客様の馬車になります」


 紹介された馬車は、普通の馬に木でできた荒削りの荷台がついているものだ。


「こんなものか? 」

「そうですね、まぁ1500ゴーツだったらこんなものでしょう。

「じゃあ、乗り込みますかな。ルーデルと坊ちゃまは後ろに乗ってくだされ! 操縦はこの爺がやりますぞ! 」

「無理して、腰を痛めるなよ! 」


笑いながらいうと、爺は少しむっとして


「年寄り扱いせんでください! わしはこれでもまだまだ現役ですからな! ふぉっふぉっふぉっふぉ! 」

「そうか、じゃあ安心だな。ルーデル、行くぞ」

「はい! 」


こうして馬車を手に入れた俺たちは、城下町を出るため門に走り出した。


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