不老不死 前編
「不老不死さんは、愛する人を見送って生きていく。」
暗い部屋。
チェス版がベットの上に置いてある。
そこに、少女が一人。
クレヨンを落書き帳の上で走らせている。
「決めた!次は不老不死だね。」
そう言ってキーファーは立ち上がり、銅鑼を手にとった。キーファーは思いっきり銅鑼を叩く。耳を塞ぐのを忘れて、頭に銅鑼の音が響きわたった。すると、部屋の扉が大きな音を立ててキーファーの目の前を横切る。扉があったところに背の小さな男の子がメガホンをひきずってやってくる。キーファーは苦笑した。
「おい…。なぜ扉を壊した…ダリ」
ダリとよばれた男の子は無表情で会釈をすると、首を斜めに傾ける。
「扉は手でわざわざ開けるより、飛ばした方が最速かと思いまして」
「…たしかに、すぐ来いとは言ったけど。
ヴァレに怒られちゃうよぉ…」
キーファーは壊れた扉を撫でながら呟いた。
そんなことは気にせずにダリはメガホンをひきずってキーファーの近くに寄る。
「要件は…」
ダリが急かすようにキーファーに言った。
すると、キーファーはそうだったと手を叩いて落書き帳を手に取る。そして、ダリの顔に近付けると言う。
「こいつ。ガルディニヤって言うらしいんだけど、『不老不死』にして欲しいんだ。」
「…」
ダリはクレヨンで描かれた黒い髪の王子のような服をきたその人物を見た。その人物の隣には子供のような汚い字で『ふろうふし』と書いてある。
「きっと愛する人に先立たれて、いつまでも生きていかなきゃいけない辛さに押しつぶすされちゃうんだろうね…死にたくても死ねない。哀れだよねぇ」
「いってきます」
キーファーの独り言は聞き入れずにダリは窓から飛び出していった。すると、入れ替わるようにして扉があったところにリーリーが現れる。
「ぁ…や、やぁ…ヴァレ」
「…」
リーリーは答えない。
「こ、これは…ダリが…」
「…ふぅん、じゃあ後でダリぶっ飛ばす」
リーリーはニコニコ笑いながら指をならす。キーファーにはリーリーに角が生えているように見えた。




