4.出会い
彼女を一目見て、私はあぁと息を吐いた。
「初めまして、あなたが光の子?」
そう尋ねる彼女はまるで私と対に生まれたかのように沈んで見えた。私の髪は金色で、彼女は黒髪をくくっていて。私が着せられているのは白い薄布で、彼女はその身を厚い黒衣に包んでいた。ただ肌だけは彼女も白く、けれど私の肌の白さは光がまとわりついているためでもあるので。
私は神殿の人々がきっと私たちを対にしたいのだと気付きながら頷いて、彼女の目をまともに見て怯んだ。
「‥‥そう、私は光の子と呼ばれている。貴女が、コゴリメ?」
コゴリメ。凝りの目。ようやくこの時、その意味が分かった。
彼女の目は光を見ることはないとすぐに分かった。その目は濁っていた。
私の怯えを知るように彼女は力なく笑った。
「そう。私が凝り目。名をリンという」
同い年くらいだろうに、世の全てを知っているみたいな落ち着いた声音だった。
「リンというの。私は‥‥」
名乗りに応えようとして、咄嗟に名前が出て来ないことに私は焦った。名前。私の名前。光の子、神の奇跡、そんな風にばかり呼ばれ続けて、そういえば私は名前で呼ばれた記憶がほとんどない。
私は誰だっただろうか。
「あぁ、名などただの記号にすぎない。無理に名乗る必要などないさ」
言葉に詰まる私に、彼女はそう言った。まったく無関心であるかのように言ったので、私もそのときは名を探すのをやめられた。けれど心は薄ら寒かった。私は私の名すら忘れている。
「光の子、凝り目の聖者様、それでは私は失礼いたします」
私たちの間には固い空気しか流れていなかったのだけれど、世話係はそう言って去って行ってしまった。去って行く途中、彼女はまたベッドに体をぶつけていた。目を隠しているのだもの、そんなことは頻繁におこることだ。だから私の部屋にあるものは大概が柔らかいか角のないものが選ばれているほどだ。
「彼女たちはよく痣を作ってしまうの」
私はそう言って、それからこの凝り目の聖者には私の世話係が目を隠していることが見えないのだったと気付いて説明を加えた。
「なんでも私を包んでいる光は、常に見るには毒だそうよ。だから、私の周りにいる人たちはみな目を隠しているの。それでぶつかって、よく怪我をさせてしまうのだわ」
私が言うと、彼女は、ふ、と笑った。