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偽りのジャコギート  作者:
18歳、光と闇
46/52

1.目にしたもの

 そして、川の向こうに、光を抱いた私の旅の終わりを見た。



 旅の終わりが近付いていることは感じていた。


 掻痒感は耐え難いほどで、リンに手を引いてもらわねば歩けないくらいに息苦しかった。凝り目である以外は盲目のリンに手を引かれている、という可笑しな事実に気付けなかった程私は、光は追い詰められていた。


 それを強要するリンを最早憎く思うほどに。


 ソンブレはいない。もうここ数日、息苦しさが耐え難くなった頃とどちらが早かったか、見ていない。それもどうでもいいことだ。私の世界には最早神殿は無関係で、私とリンだけがあるような気がしていた。


「さぁ。あんたは何を見る?」


 大きな川を挟んだ向こう、わだかまるそれに手が届かないところで、私の顔を上げさせたのはきっとわざとなのだろう。多分、それよりも前から、リンは、私の光を追い詰めるために。


「‥‥あ」


 そこには闇があった。


 かつて果ての神殿で、私は毎朝崖下の闇を見ていた。それくらいのことでしか、私は光を苛めなかった。その頃に見ていたものと、あぁ、似ている、と思った。


 忘れていたのに。私はかつてはそのように、光を神殿を忌み嫌っていたのに。それを忘れていたのに。


「私の目には、あれは迷子に見えるよ」


 隣でリンが何かを言っている。


 私は闇から目を逸らせない。


「私があんたをここに連れて来た意味が分かる?」


 あれは迷子。凝り目を持つリンがそういうのなら、あの本質は迷子。


 ではその家はどこ?


「8年前にあんたに出逢って、次に逢うことは禁じられて」


 私の見開いた目は、ひたすらに闇を映し続ける。


 すぐにでも駆け付けたいのに、それには川が邪魔をする。それに私の左腕を抑えるリンも。


 邪魔をする。


「私は聖者なのだし、世界を巡っていた。本質を見抜くなんて目は、なかなか利用しようにもできないものだし、気楽なものだった」


 隣に立つリンがどんな表情で私を、光を、あるいは川の向こうの闇を見ているのかは知らない。私の左手を握るその手に、どんな力が込められているのかなど。知らない。


「そしたら、ねぇ、あの町で」


 思い出を語るように軽妙に。どこか楽しそうなのに私はその先を聞きたくない。


 あぁ、これは、どちらの感情?


 私のもの、それとも光のもの、私には分からない。


「まさか再会するはずはなかったものに再会したんだよ」


 駄目、だ。


 このままリンに喋らせたら駄目だ。止めなければならない、そしてあの闇を払うのだ、それが光の子である私に課せられた使命。


 それは光の意志で神殿の教義で、では私が望むものは?分からないから私は、リンを止めることができずに闇を凝視する。


「ジャコギート。あれはあんたの闇だろう?」

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