1.再会
そして多分、私がひとりになりたいのだということは、彼らに残らず知れていたということだろう。でなければあんなに不安定な私を本当にひとりにしてくれるわけはなかった。と、それもあとから分かったことだ。
泣いて追い出すようにして、私は中庭でひとりになった。
なってしばらくは、正直自己嫌悪した。子供のような癇癪をおこしたものだ。だが、そのおかげでほんの少しだが息つける時間を手に入れた。きっとソンブレは早々に帰ってくるだろうから。それまでは。
行方をくらますつもりなどなかった。
だって、私には光が集っている。どこにいたって私の周りだけは光り輝いて、だから隠れたり籠ったりということは考えられなかった。ただ、ひとりになれればそれでよかった。それは、本当だ。
だというのに、ひとりになって気が緩んで、眠りに落ちた私が覚めたとき、私は神殿の外にいた。
「‥‥え?」
目が覚めて、生まれて初めて薄闇というものを目にした私は、まるで思考ができなくなった。
「目を覚ましたか」
頭から被さっているのは黒い布だろうか。少しばかり恐慌に陥って、脱ぐこともできずに闇雲に暴れた私だったが、横合いからかかった声に動きを止めた。聞き覚えが、ある。記憶よりも落ち着いた声音だが、忘れようもない。
「‥‥リン?」
「あぁ」
落ち着いて跳ね除ければ何ということはない布だった。だが、一瞬目に映った彼女がまた私に頭巾状になった布を被せてしまった。その一瞬、膨張したように光が溢れてすぐ収束した。見たことのない現象に、瞠目することしかできない。
「光が‥‥」
「邪魔だから」
頭巾をかぶっていればいいようで、だから私は頭ごと彼女の声のほうを向いた。視界の端は黒く切り抜かれている。それだけのことが私にとっては酷く物珍しい。
「これ、は、何?」
これ。この布も、そして私が知らない場所にいることも、リンが私の目の前にいるという事実も全て含めたつもりで私は尋ねた。
リンはそれに薄く笑った。
「あんたを攫ったんだよ」
「攫‥‥った?」
そう、と彼女はあまりに簡単に頷いた。
「それは私が知る限り最も深い闇だ。それですら相殺しきれないほどにあんたの光は強くなってしまったものだから」
最も深い闇。それは冷たいものだと思っていたのに、暖かく、私は拒絶もできなかった。
「あんたに光が集まれば集まるほど、闇もどこかに集まるんだよ、覆われた闇」
辛そうに、だがいたわりを込めた、凝り目が私を見ている。




