表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りのジャコギート  作者:
13歳、神殿にて
2/52

1.夢

 昔の記憶は白く光って見えない。ただなんとなく覚えているのは、長い長い(きざはし)を登っていたこと。両隣にいた誰か達は多分神殿の者だったのだろう。

 階の頂点には布がかかっていて、その先は見えない。ただ、大勢の人々がいる気配だけは匂っていた。人々が息をひそめて待っている。待たれている対象は、多分、私。

 やがて右隣の誰かが私を少し引き止め、私の着ていた布をはぎ取った。そもそもが素朴な粗末な布を巻き付けていただけだったから、私の貧相な体がすぐに表れた。

 表れたと思った次には私の体は光に包まれた。

 息をひそめていた人々の気配が膨らんだ。

 左隣の誰かが私のそばに膝をつき、多分このようなことを言った。

 ――さぁ、奇跡の子よ。あなたは人々を救わなければなりません。

 私は、救い方なんて分からない、どうやったら人々は救われるの、といったことを口にした。左の誰かは唇を歪めた――もしかしたら私自身が記憶を改竄したのかもしれないけれど。

 ――何もしなくてよいのです、光の子。

 ――何もしなくてもあなたが存在する奇跡が、人々を救うのです。

 よく分からない、と私は言った気がする。

 ――さぁ、光の子。人々は奇跡を待っています。あなたを待っているのです。

 ――人々の前に、その奇跡を顕現させること。それはあなたにしかできないこと。

 ――さぁ、奇跡の子。あの薄布を払って人々を救うのです。

 私は頷いたのだろうか。覚えていない。ただ、私は素直に残りの数段を登り、薄い布を払った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ