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偽りのジャコギート  作者:
17歳、隣国への旅路
17/52

4.光の御子の守護者

 襲撃者の男は、身内も仲間もいないのだと言った。ただ仕事を受けて完遂することだけを続けてきたのだと。


 そうだろうな、と私は思った。近くに誰かがいればこれほどの闇には囚われまい。どんなに世間から見て悪党だろうとも、心許す相手がいればそこには光がある。孤独は闇を引き寄せる最たるものだ。――では、私は?


 ――私は世界にひとりきり。ただひとり、光の寵児である私の孤独は闇を引き寄せるのか?


 くだらない。益のない物思いを首の一振りで振り払って、私は男に目を移した。


「‥‥では、私を殺すという仕事を受けたということですか」


「愚かなことをしました」


 あれほどの闇を埋めたのだ。男は最早誰よりも私に近いほど、光の恩寵を受けている。


 だので愚かな行為に出る可能性は皆無だと、きちんとした治療を受けさせてもらった。皇子は少しばかり面白くなさそうだったが聞き入れてくれた。基本的に彼は私の行為の邪魔をしない。


「いえ。そういった行動に出る人々にほど、光の救いは必要なのですから」


 いくら光の恩寵を受けても、私以外の人々は光を纏ったりしない。ただその面持ちは穏やかで、慈愛に満ちている。


 そう、それは神殿長と同じくらいに。


 男は目を輝かせると頭を垂れた。


「愚かな私をお許しください」


「顔を上げて。私が許さないなどと何故思うの」


「あぁ‥‥光の御子様」


 けれども男は顔を上げず、言い切った。


「私の生命を貴女様に捧げます」


 そうしてから顔を上げて、誓った。神でも私でもなく、光にかけて誓った。


「私は貴女様の盾となります。貴女様に剣は必要ない、ですから私は盾となります」


 畏敬と崇拝の念が痛いほど伝わる眼差しだった。


「そのように存在することをお許しください」


 だから私は誠実に相対するしかないではないか。


「‥‥私は光の下に生きてほしいと願うのだけれど」


「それでも」


「‥‥それでも私の盾でありたいと願うというのね」


 このような生き方は、己を道具と見なす人間にしかできないことだ。だから羨む必要はないのですよ、隣国の第3皇子。


「いいわ、許します。私の盾として生きて」


 無駄に生命を散らすことだけは許さない、と、そう告げれば心底嬉しそうにまた頭を垂れるのだ。


「仰せのままに。光の御子様」


 こうして私は守護者を手に入れた。

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