プロローグ
私を包むは純然たる光輝、辺りに満ちるは空虚な期待、
逃げ出すことなどできはしない、光輝は私を離さない。
私の名はジャコギート、偽りのジャコギート、けれど誰もその名を呼ばず。
光の、奇跡の、と呼ばれ続けて私は私の名を忘れた。
リン、天使のリン。それは私にとっての天使。
その本質を見抜く目は私の中の闇を見抜いて私を救った。
私を包むは純然たる光輝、辺りに満ちるは空虚な期待、
けれど私はその内に闇を抱え、ただ光輝はそれを隠していただけだった。
リン、天使のリン、私の救い。
神殿は彼女を許さないだろう。私を連れて逃げ出した彼女を許さないだろう。
けれど彼女は後悔していないと言った。後悔するくらいなら始めからしないと言い切った。
リン、私の救い、私の闇と私の光は救いの天使を殺してしまった。
あぁ、私の闇は光を押しのけ、そして私は奇跡を失った。
リン、天使のリン、彼女はその最期で真実私を救って逝った。
神殿は私を許さないだろう。奇跡を蹴散らした私の生をきっと許さないのだろう。
それでも私は生きて行く、つぶした右目を彼女の代わりに引き連れて。
私はジャコギート。偽りの名を持つかつての奇跡。
光が愛したかつての寵児。
私を包むは純然たる空虚、辺りに満ちるは空虚な光輝。
初めての真実に、私は怯えず足を踏み出す。