立夏
26度に達したこの日、高校2年の井野嶽幌と双子の姉の桜は、買い物から帰っていた。
「スーパーの中は涼しかったのにぃー」
桜が袋をもちながら、暑そうにうだれていた。
「しょうがないさ、今日は立夏だ」
「りっかぁ?」
「そ。夏の始まりだな。このころから夏のような陽気になりだして、気温とかが上がりだすんだ」
「夏なんて来なくていいのにぃー」
幌の言葉に、桜が返す。
「んなこと言ったって、そうじゃないとスイカ割りも、海水浴も、夏祭りだってできないぞ」
「あ、それは嫌だな」
すぐに手のひらを返す桜。
それを聞いていて、ため息を幌はついた。
「まあ、分かっていたけどな。その答え」
「えー、なによそれー」
そういった桜は、笑いながら幌をつついた。