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仮面夫婦の離婚

作者: レモン
掲載日:2026/08/17

 その日は、可奈子のダンナの明人が、単身赴任から、久しぶりに帰ってくる日だった。久しぶりの再会なのに、可奈子は、うかなかった。明人もまた、憂鬱になっていた。

 2人は、とうのむかしに、関係が、おかしくなっていた。唯一、一人息子の祐一が、つなぎとめていた。

 「ピンポーン」と、チャイムが鳴った。可奈子は、てっきり、明人が、帰ってきたのだと思っていた。ドアを開けてみると、そこには、2才くらいの男の子とお母さんらしき女性が立っていた。女性の名前は、華子と言った。

 華子は、おもむろに、「明人さんは、いらっしゃいますか?」と聞いてきた。可奈子は、「まだ、帰っていませんが、何のご用でしょうか?」と言った。華子は、「そうですか。」と言って、「待たせてもらえませんか?」と、聞いた。可奈子は、「主人と、どの様なご関係ですか?」と言った。華子は、「お付き合いしてました。この子は、明人さんの子どもです。」と言った。

 可奈子は、あまりのことになった、と思い、冷静でいられなくなっていた。すぐに、ダンナの明人に、電話をした。事情を説明したら、動揺して、電話を切ってしまった。何度、かけ直しても、つながらなかった。そして、明人は、その日、自宅に、帰らなかった。

 可奈子は、なかなか、子どもができなくて、不妊治療で、ようやくできた子が、祐一だった。それなのに、外で、子どもを作っているなんて、と怒り心頭だった。無神経にも、ほどがあると思い、明人を、許せなかった。

 可奈子は、離婚も、考えたが、やはり、祐一のことを考えると、離婚には踏み切れなかった。

 次の日、のこのこと、明人は、帰ってきた。土下座をして、可奈子に、あやまった。「すまない。彼女が、どうしても、産むというから、止められなかった。おまえとは、別れるつもりはない。許してくれ。」そう、明人は、言って、泣いていた。

 可奈子は、とうてい、許せなかったが、離婚は、祐一が、成人するまで、待とうと、思っていた。もう、仮面夫婦でしかなくても…

 可奈子は、明人に、「あの女の人とは、ちゃんと、ケリをつけてきて!この家には、こさせないで!」と、言った。明人は、「分かった。」と言った。

 明人は、華子のところへ、向かった。華子は、うれしそうにしていた。明人は、ハッキリと、華子に、「おれは、妻とは、別れる気はない。養育費は、きちんと払うから、きっぱり別れてくれ。」そう言って、帰ろうとした。その時、2才の子が、思いがけず、「パ、パ」と言ったのだ。明人は、目もくれず、後にした。華子は、大泣きしていた。

 明人は、転勤先で、華子と、夫婦同然の生活をしていたのだ。なので、自宅に戻る、直前まで、ほとんど、一緒に、暮らしていたのだ。

 1ヶ月後、華子は、明人に、電話をしてきた。「2人目が、できたみたい。今度も、産むわ。」明人は、「待ってくれ。今度は、諦めてくれ。」そう言ったが、華子は、聞かなかった。

 明人は、可奈子に、正直に、ありのままを、話した。可奈子は、ショックだった。明人と、やり直そう、と、思っていた矢先の出来事だった。あまりのことに、可奈子は、自分を、忘れそうになっていた。

 明人に、可奈子は、「どうするつもりなの?」と、聞いた。明人は、「華子を、説得するつもりだ。」と言った。明人は、本当に、困ったことになってしまったと、思っていた。

 可奈子は、迷っていた。離婚した方がいいかもしれない、と。この状況になってまで、離婚しないというのは、ダメなのかもしれない、と思った。明人とは、もう、関係が、破綻しているのだし、祐一にとっても、いいことは、ないかもしれない、と、思っていた。

 可奈子は、明人と、ふたりで、じっくり、話しあおうと、思っていた。夜、寝室で、いろいろと、話し合った。可奈子が、離婚した方がいいと思う、ということも。祐一のことも。明人は、別れたくない、の、いってんばりだった。

 可奈子は、生まれてくる子には、罪はないと思った。明人も、自分とは、ダメだったから、浮気したのだと思っていた。明人に、、可奈子は、「離婚しましょう。2人の未来のために。」と、言った。「祐一は、私が引き取ります。」可奈子は、言った。明人も、よくよく、考えていた。可奈子との生活は、もう、こうなれば、成り立たないかもしれない、と、思った。悲しいけれど、自分が、しでかしたことだから、あきらめるしかないのかもしれないと、思いはじめていた。明人は、言った。「分かった。養育費は、払うよ。」そう言って、明人は、出て行った。

 離婚を、切り出したものの、可奈子は、本当に、祐一と二人で、やっていけるだろうか、と、不安になっていた。でも、やっていくしか、ないのだと、心に言い聞かせていた。

 そう思っていた時、華子から、一本の電話がきた。「奥さん、すみません。私のわがままで、こういうことになってしまって…。」可奈子は、ようやくの思いで言った。「立派に、2人のこどもを育て上げてね。」そう言って、電話を、切った。

 これからのことを考えると、不安もあるが、親子2人で、楽しく、暮らしていこうと、思っていた。


 

 


 

 

 


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