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 その日の学校が終わり、帰宅部の僕は地下鉄と山手線を乗り継いで帰宅した。そして私服に着替えて、中学時代からお世話になっている地元の学習塾に通った後、僕はコンビニに寄り道し部屋で勉強する時につまむジュースとスナック菓子を買って、二度目の帰宅をした。父と母、それに兄はすでに夕食を終えており、父はテレビのHDDに録画した海外ドラマを見ていた。僕は自分の為に残された夕食のミートソースのスパゲッティを食べながら、父の見ている海外ドラマを横目で見ていた。

 食事をしていると、風呂から出た兄が食事をしていた僕のテーブルにやって来た。兄は今、とある会社でアルバイトをしながら大学に通っており、文学部で外国文学を学んでいた。

「よう、お疲れ。今日はどうだった」

 兄は言った。大学に通い始めてから僕と兄の生活リズムは噛み合わなくなっていたから、今日に兄と会話をするのは初めてだった。

「別になんもないよ。平和だった」

「そうか」

 僕の言葉に兄はつまらなそうに答えた。

「兄貴は明日休みだよね。どうするのさ?」

「新しく買った車でお出かけするよ。そろそろ山の辺りが良い感じになる時期だし」

 兄は答えた。丁度今年の誕生日のお祝いに、不動産会社経営の伯父さんが、気前よく車を買ってくれたのだ。予算二〇〇万円で買ったのは、中古の五年落ち三万キロの白いメルセデス・ベンツ・C200。選んだ動機は昔のアメリカのラッパーたちが初代モデルに当たる車を愛用していたとのと、中古の白いベンツがラッパーの成り上がり映画に登場するのが理由だった。これで我が家の車は父が持つレンジローバーと合わせて二台体制になったのだった。お陰で兄はそれまで所有していたヤマハの四〇〇ccのバイクを手放す事になったが、気にしては居ない様子だった。兄は大学の休みを利用して一人で何処かへ出かけるのが好きな人間で、関東近辺の主要な観光地を巡るのが趣味だった。

 その事が、僕にある事を思いつかせる。

「そういえば兄貴、訊きたいんだけれど、奥多摩方面へ電車で行くには何線を使えばいいの?」

 突然僕に質問されたにも関わらず、兄は平然とした様子でこう答えた。

「確か青梅線で行ける。新宿から出ているはずだよ」

「そう」

「あっち方面に用事でもあるのか?」

「奥多摩の先にある、山梨の村に住んでいる友達のところに行こうと思うんだ。それで兄貴なら行く方法を知っているかなと」

 その言葉を聞くと、兄はこう僕に提案した。

「なら、今度俺の車で行こう。あの辺りは今頃行くと自然が美しいし、冷たい空気が気持ちいんだ」

「俺は友達二人と行くんだよ。それに遊びで行くわけじゃない」

 僕がそう答えると、兄はこう続けた。

「それなら、俺を行くときの運転手代わりに使えばいい。お前を入れて三人なら乗れるよ。どうする?」

 兄の言葉に僕は少し考えた。行きの電車賃は節約できるので悪くないなと思ったが、お調子者の兄に友人を付き合わせたくないのも事実だった。

「それは友達と話して決める」

 僕はそう答えて食事を終えて、部屋に戻った。

 部屋に戻ると僕はLINEで小川と加藤の会話グループにメッセージを送った。内容は目的地近くまで兄が送ってくれるという事、移動は兄貴が買ってもらった自慢の愛車ベンツになるという事だった。

 スマートフォンを放り出して返事を待っていると、小川と加藤から返信があった。ロックを解除して確認すると、二人共そちらの都合が良ければ構わないという内容だった。

 やれやれ、と僕はため息を漏らして、LINEで兄に今度の土曜日に目的の場所まで送ってもらうように連絡した。


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