第8話 出来る意味
「いやー。ここ最近、ずっと一人で飯食ってたからさぁ。久しぶりに誰かと一緒に食えるの嬉しいわー!」
「そう」
「そういやガラガラって、蛇のゲラなんだよな? つまり、半分蛇ってこと?」
「割合はわからない。しかし、要素が入っていることは間違いない」
その言葉を聞くと、夢宙は不意に足を止め、恐る恐るガラガラに振り返った。
「あのさ、もしかして……鼠とか、食う?」
「食いません」
断言するガラガラに安堵した夢宙は「良かった良かった」と頷くと、歩行を再開した。
「じゃあ、人間に食えるものは食える感じ?」
「そう。でも、必須ではない」
「ほーん……? 因みに、他のゲラも飯は食えるの?」
「製造者の意向によっては、食事が必須の個体も存在すると思われる」
「ふむ……。ならばやはり、ガラガラは人間と一緒にご飯を食べるべきですな」
夢宙はガラガラを見てニカッと笑った。ガラガラは、そんな夢宙を不思議そうに見つめる。
「だって、ガラガラを生み出した博士は、ガラガラが食事を摂れるようにしたんだろ? 絶対に必要ってわけじゃないなら「そんなもんいらーん!」ってしてもおかしくないのに」
ガラガラはふと思い出した。
自分がまだ、液体の中に浮いていたときのことだ。
意識はあったが、瞼は閉じていた為、周りの様子を見ることはできなかった。
しかし代わりに、聞こえていた。
自分に話しかける博士の声が、毎日。
ゴポゴポと邪魔をする液体の中で、ガラガラの名前を呼ぶ声、語りかける声、気にかける声を、確かにガラガラは聴いていた。
「だから、やっぱり必要なんだよ」
夢宙のその言葉は、ガラガラの内側にすんなりと落ちていった。
ゲラならば本来、否定するはずの言葉だった。意味のないことをわざわざ行うという機能は、ゲラには搭載されていない。
「つまり、博士は俺に食事をして欲しいということ」
「そういうことだ!」
話を理解してもらえたことが嬉しいのか、夢宙はブンブンと腕を振り回す。ガラガラも勿論巻き込まれる。
「今日は何にしようかなー。やっぱ食事ビギナーには、王道にハンバーグとか、オムライスとか——」
「っ!」
夢宙が呑気に会話を続けているとき。
何か鋭い物体が、高速で夢宙の頭部目掛けて飛んできていることを、ガラガラの舌が感じ取った。
ガラガラが夢宙を庇うように前に立つと、鋭い物体はガラガラの鎖骨と鎖骨の間辺りを通り過ぎ、夢宙の眉間にまで到達した。
トスッ。
人が命を落としたにしては軽い音が鳴り、力無き人体は、体を庇う気配も見せず、遠慮も躊躇もなく地面に倒れ込んだ。
「……むちゅー?」
返答は、ない。




