1「運命譲渡(ディスティニー・ギフト)」
俺の名前は山田 太郎29歳、独身のサラリーマン。
俺はそろそろ死ぬ。
なぜかって?俺の今目の前に広がっている光景を教えてあげよう。
ピッカピカのライトに照らされて、鉄の塊が俺目掛けてキスを迫ってくる。
そう、トラックに轢かれそうなのだ。
今日は、俺の誕生会でちょうど帰る時だった。
過去1に酔っ払った俺は車の運転の真似をしながら気付けば車道に乗り出していた。
それから今に至る。
この人生、まぁまぁ楽しめたからいっか。
車とぶつかり稽古とか人生に一度くらいしか味わえないしな。
今度は、異世界転生とかしてみたいな。
(キキィー!!ドンッ!!)
鉄の塊はとうとう俺にキスをすることができ、満足げにその場に立ち止まった。
身体の力が抜けていくのがわかる。
まるで浮いている感覚である。天に向かって身体が上がっていく。
——ハッ!
「ここは…どこ?」
足の裏にはふわふわなクッションの感触。
俺の足は雲を踏みしめている。
(雲?曇って柔らけぇのか…)
目の前にはピカピカに輝く階段。
アニメでよく見る天界そのものである。
「やっほー!みんな大好き女神ちゃんでーす⭐︎」
突然、女神と名乗る女性が話しかけてきた。
大きな羽を携えた金髪のショートカットギャル。
(女神ってこんなギャルいんだっけ…?もっとこうお姉さん的な…)
「突然だけど…あなたには今流行りの異世界転生をしてもらいまーす⭐︎」
「異世界転生…?」
(異世界転生?今、異世界転生て言ったよな!キタァーー!異世界転生!!してみたかったんだよなぁー!)
漫画の世界でしか聞いたことのない単語に思わず聞き返す。
まさか、平々凡々に暮らしていた俺に異世界転生のチャンスが来るとはっ!
「そうでーす⭐︎異世界と言えばスキルっしょ!
どんなスキルか気になるよね!ね!」
(スキルもキタァァー!!これは、チートスキルをもらって異世界無双するパターン!のんびりまったり異世界ライフが待ってるぜ!ここは、異世界初心者ですアピールしといた方がいいか…)
「スキル…?ちょっとまだ理解が追いついてn…」
(キラン♪ピコン♪)
「なにっ?」
一瞬目の前が真っ白になり、身体に何かが纏わり付いた感覚になる。
その纏わり付いた違和感も次第に身体に馴染む。
「あなたに、スキルを授けたよ⭐︎スキル名は…《運命譲渡》」
(え、名前カッコよ!絶対強いやん!のんびり異世界ライフ確定ぃ〜)
「スキルの内容は…やってたら分かってくるでしょ⭐︎」
(そこが1番大事だろぉ!適当すぎるだろこの女神…)
「おい、説明しろよ!"ダメガミ"!」
「なんですって!女神怒ったもん!!」
「ご、ごめんて——。」
「えーーーい!!」
「うぁぁぁぁぁぁぁー!!」
突然目の前の時空が歪み、身体の感覚が無くなる。視界上のつま先が消えていくが、感覚はある。
瞬きをするとそこは先ほどの天界とはまるでちがう。
鳥の囀り、森のさざめき、心地よい日光。
目の前には異様な雰囲気の神社らしき建物。
足の感触はふわふわのクッションからグチョグチョの地面へと変わっていた。
(ここは…?森?神社?)
急な、景色の変化に脳の処理が追いつかない。
身体の感触を確かめる。足先、手先の感触、喉の渇き、心臓の鼓動。
それは確かに生前のものと同じ。
(俺、異世界転生したんだよな…)
女神の対応、目の前の景色、全てに不信感を覚える。まるで壮大なドッキリをかけられているかと錯覚するほどに。
(確かスキルを貰ったんだよな…どうやって確認するんだ?…)
"ウィンドオープン"、"能力値確認"など、異世界物の漫画で見たことある確認方法を試してみる。しかし、何も起きない。
(俺はほんとに異世界転生したのか…とりあえず何しようか?)
突然、頭の中に音が響く。
〈スキル"運命譲渡発動〉
(な、なんだ?どうした?)
目の前の景色がモノトーンになる。
音も聞こえず、周りの木々たちは時間が止まったかのように固まっている。
(時間停止系のスキルか?でも、俺の身体も動かないぞ)
景色、身体共に動かない。しかし、思考は活動している。まるで世界に自分1人取り残されているかのように。
<行動を選択してください。
1.お賽銭を入れお祈りする。
2.周りを散策する。
3.山の頂上を目指す。——>
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