9/151
第2幕: 高校1年生の春──紅白戦開始③
「おいおい、あの人ってもしかして…」
紅白戦の準備をしている1年生の1人が準備をしていた手を止め、目を丸くした。
「甲子園でも投げてた人だよな!?」
その言葉をきっかけに、周囲の選手たちもざわめき始める。視線の先には、マウンド上でキャッチボールをしている左腕、石上直人の姿があった。
「俺、知ってる! 1年生のとき、“両翼左腕”って呼ばれてた人だよね!? 今の1軍エース、岡田先輩と並んでさ!」
「マジかよ…」
紅白戦の2軍先発として指名された石上は、かつて1軍のエース岡田翔と並び、1年生ながら甲子園で登板を果たした逸材だった。技巧派の石上、そして試合をコントロールする本格派の岡田。当時の横浜桐生学院の左腕2枚看板として、期待を一身に背負っていた。
そんな石上は2軍のマウンドに立っていた。