第2幕: 高校1年生の春──紅白戦終了 1年生のそれぞれの課題④
次に呼ばれたのは、高橋拓海。
「高橋、お前の守備は安定していたな。」
監督の第一声に、高橋は静かに頷く。
「二塁手としての役割はしっかり果たしていた。冷静な判断力もあり、凡ミスもなかった。」
「ありがとうございます。」
高橋の返事は落ち着いていた。しかし、次の言葉が続くことは予想していた。
「……だが、打撃はどうだった?」
「……」
高橋は拳を握る。
自分でもわかっていた。
ヒットを打てた場面もあったが、結果的に納得のいく内容ではなかった。
「お前は、しっかりボールを見極めることができる。だが、それが逆に仇になった場面が多かったな。」
「……はい。」
「選球眼がいいのは長所だ。だが、お前は『選びすぎて』甘い球を逃していた。」
監督の言葉に、高橋はグッと奥歯を噛みしめる。
「この試合、お前は追い込まれてから苦し紛れにバットを振る場面が多かった。初球や甘いコースのボールを狙えず、結局難しい球を打つことになった。」
「……」
「それが原因で、打ち損じたり、打ち取られたりしていたな。」
試合の場面が蘇る。
(あの時、最初のストライクを思い切って振れていれば……)
(チャンスを作るために、しっかり狙い球を決めていれば……)
確かに、自分は「慎重に打席に入る」ことを意識するあまり、「攻めるべき球」に手を出せていなかった。
「お前は堅実なバッターだ。それは大きな武器だが、今のままだと“慎重すぎる”のが課題になる。」
監督は腕を組みながら続ける。
「チームが苦しい時、ただ“ミスしない打撃”をするだけでは意味がない。お前に求められるのは、確実にチャンスを広げることだ。」
高橋は静かに頷く。
「つまり、お前はもっと“攻めるバッティング”を意識しなければならない。」
「……攻める、ですか?」
「そうだ。初球からでも甘い球は積極的に叩け。慎重に見送るだけが“冷静な打撃”じゃない。」
監督の言葉が、胸に響く。
「実際、試合を振り返ってみろ。お前が“慎重に選んで”追い込まれてしまった結果、どうなった?」
「……難しい球を打たされました。」
「そうだ。ならば、どうするべきだった?」
「……甘い球を逃さず、初球から狙って打つべきでした。」
監督は満足げに頷いた。
「そういうことだ。お前の選球眼を活かしつつ、攻撃的なバッティングを意識しろ。そうすれば、もっと大事な場面で役割を果たせるようになる。」
高橋は、深く息をつく。
(俺は、守ることばかりを考えすぎていたんだ)
バッティングでも、もっと積極的に「攻める」ことが必要だった。
「……わかりました。」
高橋は静かに拳を握る。
「次からは、狙い球を決めて、しっかり振りにいきます。」
監督は満足げに頷いた。
「それでいい。お前ならやれる。」
高橋は深く頷いた。
(俺は、もっと攻める打撃を身につける――)




