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第2幕: 高校1年生の春──紅白戦 秘蔵っ子井上の課題とは④
5回表
先頭の8番打者。
初球、外角のストレートに手を出し、平凡なレフトフライ。
続く9番打者。
カウントを追い込まれた後、落ちる球に泳がされ、空振り三振。
あっという間にツーアウト。
(やっぱり……簡単には打てねえか)
1年生ベンチの雰囲気が再び沈みかけた、その時――
ここで千堂陸が再び打席に立つ。
(この流れを切るわけにはいかない)
初球、外角のストレート。千堂は冷静に見送る。
2球目、内角のストレート。千堂は迷わず振り抜いた。
「カキンッ!」
打球は三遊間を破るクリーンヒット!
「ナイスバッティング、千堂!」
1年生ベンチが盛り上がる。
千堂はすぐに一塁ベースを駆け抜け、相手バッテリーの隙をうかがった。
「絶対に繋ぐ!」と意気込んだ佐藤悠真だったが――
結果は、外角ストレートを強引に引っ張り、セカンドゴロ。
千堂は俊足を活かしてスライディングするも、アウトカウントは3つ目。
「チェンジ!」
1年生チーム、またしても得点できず。




