第2幕: 高校1年生の春──紅白戦 2年生の壁⑬
カウント0-1。
(落ち着け……大振りせず、しっかり捉えればいい……)
だが、頭でそう考えていても、体が固くなる。
2球目、内角低めのスライダー。
松岡は「ここだ!」とばかりにフルスイング。
「ゴンッ……!」
バットの根元に当たり、打球は詰まった。
「ファウル!」
(くそっ……!)
思ったよりも球が曲がった。もっと落ち着いて打てば……
だが、カウントはすでに0-2。追い込まれた状態になってしまった。
(俺が……打たないと……!)
焦る気持ちが、松岡の視界を狭めていく。
江原は石上にサインを送り、静かに頷く。
「最後は、高めの釣り球で振らせるぞ」
3球目、インコース高めの速球!
(こい……!)
松岡は強く踏み込み、思い切りバットを振る――
「ブンッ!!」
「ストライク! バッターアウト!」
無情にも、松岡のバットはボールにかすりもしなかった。
「よっしゃあ!」
2年生ベンチが盛り上がる中、松岡は力なくバットを持ったまま、立ち尽くしていた。
(……なんで、こんな簡単にやられるんだ)
悔しさが胸の奥に込み上げる。
彼は誰よりも努力してきた。パワーもつけてきた。それなのに、結果が出ない。
(俺は……4番の役目を果たせてない)
ゆっくりとベンチへ戻る松岡。
千堂はじっと彼を見ていた。
「松岡……」
松岡は視線を向けることができなかった。




