第2幕: 高校1年生の春──紅白戦 2年生の壁⑨
(打ち損じた……!)
佐藤は全力で一塁へ向かうが、打球は内野ゴロ。しかも、強く叩けていない分、スピードがない。
(これじゃ……抜けねえ!)
高田優斗が落ち着いて処理し、一塁へ送球。
「アウト!」
佐藤はベースを駆け抜けるが、無情にも審判の声が響く。
「悠真、ナイスラン!」
ベンチから励ましの声が飛ぶが、佐藤は悔しそうにヘルメットを脱いだ。
(俺は……これでいいのか?)
本当に自分の役割を果たせたのか――考えれば考えるほど、答えは「ノー」だった。
本来、この場面で求められるのは「繋ぐ」ことだった。アウトになるにしても、二塁ランナーが確実に進塁できるように、最低でもセカンドゴロを転がすべきだった。
(右方向に転がしていれば、千堂は楽に進塁できた……なのに、俺は……)
自分の打席でもっと展開を変えることができたのに、全くその期待に応えることができなかった。
(走るのは得意でも……バッティングがこれじゃ、ダメだ)
彼は拳を強く握る。
(次の試合までに、しっかり修正しないと……)
静かにベンチへ戻る佐藤。彼の胸には、強い悔しさと、次に向けての課題を克服しようとする意志が芽生えていた。




