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スラッガーにはなれないけど  作者: 世志軒
第1部 第1幕
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第1幕【第1章ː対照的な天才~少年時代の出会い~】

「走れ、陸!」


リトルリーグのグラウンドに監督の声が響く。千堂陸せんどう りくは、全力で一塁から二塁へ駆け抜けていた。周囲の景色が風のように流れていく。足元の砂ぼこりを巻き上げながら、彼のスピードはまるで風のように速く、守備側が送球を始めるよりも早く、すでに二塁ベースを踏みつけていた。


「また盗塁かよ……すげぇな、陸は」


ベンチからその様子を見ていたのは、天童獅子丸てんどう ししまるだった。彼はチームの4番打者を任される怪物スラッガー。まだ小学生でありながら、すでにその体格は大人顔負け。屈強な体躯に、両腕には筋肉がうねり、バットを振ればその弾道は場外まで飛んでいくほどだった。


「お前、ほんとに速いな。こっちがびっくりだよ」


獅子丸は、腕を組みながら一人つぶやいた。彼の目には、陸の走塁を見守る中での驚きが表れていた。しかし、その驚きとは裏腹に、彼の瞳は確かな自信を宿している。


「お前は塁に出るで終わらせねぇ

その言葉には、ただの賛辞ではなく、幼いながらも真剣な意志が込められていた。次の打席が回ってきた時、獅子丸はバットを握りしめ、準備を整える。


次の瞬間、豪快なスイングが音を立てて振り下ろされ、ボールが飛び立った。その弾道は高く、遠く、見上げるような完璧なホームランだった。グラウンドに響く打球音とともに、ボールはあっという間にスタンドに消えた。


「やっぱり獅子丸は頼りになるな!」

「お前が出塁するから、俺が打てるんだよ!」


陸は、笑顔を見せながら走塁の後、その言葉を返す。彼の言葉には、獅子丸を信頼し、同時に自分自身の力を信じる気持ちが込められていた。二人は、共にリトルリーグの舞台でプレイしながら、お互いのプレースタイルを理解し、育んでいった。


陸のプレースタイルは、俊足を活かした出塁と盗塁、そして巧打。相手の守備をかき乱し、流れを作る役目を果たしていた。獅子丸は、逆に力強い打撃でゲームを決定づけるタイプ。どちらも異なる役割を持ちながらも、お互いの強さを引き立て合っていた。


試合後、二人はグラウンドの片隅で肩を組んで歩きながら、お互いに笑顔を交わした。


「次も、俺が先に出るから、お前が打ってくれよな」

「お前もな、次もホームランだぜ!」


言葉ではただの約束ごとのように感じるが、その目には、お互いに「次こそは」という期待がこもっていた。強敵であり、親友でもある。その関係は、試合を重ねるごとに深まっていった。


「いつか、お前と一緒に甲子園に行こうな」


そんな小さな約束を、二人は交わしていた。しかし、それがどれほど大きな意味を持つものか、まだ彼らにはわかっていなかった──。

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