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スラッガーにはなれないけど  作者: 世志軒
第1部 第3幕【第1章ː地獄の合宿編】
181/198

第3幕【第1章ː地獄の合宿編】合宿3日目 結末(2)⑤

 伊達剛志がレフト前にしぶとく運び、一死一塁。

 ベンチに重苦しかった空気がわずかに揺れ動く。

 「よし、ここからだ!」

 「今村、頼んだぞ!」


 ――5番、今村聖人。

 荒々しい気性とフルスイングが売りのプルヒッター。

 その存在感は、チームの勢いを象徴する爆発力を秘めていた。


 マウンドの岡田翔は、呼吸を整えながら藤原のミットを見据える。

 (伊達にヒットを許した直後……力任せに引っ張りに来る今村を、どう料理するかだ)


 藤原は一拍置き、静かにサインを送る。

 (豪快なプルヒッター……なら狙いは内寄りだ。思い切り引っ張らせてゴロを打たせる。6-4-3、併殺を狙う!)


 岡田が大きく振りかぶる。

 白球が力強くミットへと走る。


 今村は迷わなかった。

 (狙いは直球だ! 流れにのって、叩き込んでやる!)


 フルスイング――荒々しい豪快さが炸裂する。


 だが、白球は少しだけ内へ食い込み、タイミングを外された。

 「……ッ!」

 打球は快音を裏切り、鋭いゴロとなってショート正面へ。


 ショートが素早く二塁へ送球。

 セカンドがベースを踏み、一塁へ。


 ――6-4-3、併殺完成!


 「アウト! チェンジ!」


 球審のコールが響く。

 大阪大和のベンチは、一瞬声を上げかけて、そのまま沈黙に飲まれた。


 一塁ベースに駆け込んだ今村は、ヘルメットを振り落としそうな勢いで悔しげに顔を歪める。

 (くそっ……打ち損じだと!? 俺が……俺が4番の後ろで併殺なんて!)


 獅子丸がベンチからその姿を見つめ、ほんのわずかに唇を噛む。

 互いにぶつかり合う仲間だからこそ、今村の悔しさが痛いほど伝わった。


 横浜桐生のベンチは一気に沸き立つ。

 「ナイスボール翔!」

 「最高や、これで流れはうちのもんや!」


 ――9回表、最後のチャンスを併殺で断たれた大阪大和。

 スコアは動かず、1-1。

 試合はついに、9回裏の横浜桐生学院の攻撃へと移っていく。

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