表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スラッガーにはなれないけど  作者: 世志軒
第1部 第3幕【第1章ː地獄の合宿編】
123/198

第3幕【第1章ː地獄の合宿編】合宿2日目・ダブルヘッダー編③

 2回表。マウンド上の柿沼は、初回に浴びた猛攻の余韻を引きずったまま、うつむき気味にキャッチャーのサインを覗き込んでいた。

 バッターボックスには、この回の先頭打者――4番・藤原守が立つ。


 初回に放った特大のツーラン。その打球音と軌道はいまだにスタンドに残響のように響いていた。

 だが藤原自身は、そんな過去の一打など一切気にしていないようにいつものルーティンを意識して、淡々と打席に入る。


 初球。外角高めのストレート。打ち気を逸らすつもりの配球。

 ――だが、藤原は逆にその甘さを見逃さなかった。


 「カキィィィン!」


 乾いた打球音とともに、白球が右中間へ高く舞い上がる。

 打った瞬間、それとわかる完璧な放物線。右中間スタンドへ突き刺さる、2打席連続のアーチ。


 スタンドがどよめき、ベンチが沸き返る。藤原は表情ひとつ変えずにホームを踏むと、静かにヘルメットを脱ぎ、次の打者へ目を向けた。


 スコアは8-0。


 続く5番――藤城慎也がバッターボックスへ向かう。

 強肩強打のライト兼投手。だが彼は、藤原の打球をただ眺めていたわけではない。


(今の球、浮いてた。なら、次もある)


 藤城は初球から狙いを定めていた。

 インコース。やや高め。迷いなく振り抜いた。


 「打ったァ――! 大きい、左中間!」


 打球はぐんぐん伸びていく。レフトとセンターが交差する位置まで追ったが、その視線の先で、白球はスタンド中段へ飛び込んだ。


 2者連続のソロホームラン。藤城は小さく拳を握ると、ベースをひとつひとつ確かめるように回っていった。

 ホームに戻ると、待っていた藤原と軽くグータッチを交わす。言葉は交わさずとも、その拳にこもった手応えは同じだった。


 スコアは9-0。

 これが横浜桐生学院の4番と5番。全国を狙うチームの「中軸の本気」が、ここにあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ