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スラッガーにはなれないけど  作者: 世志軒
第1部 第3幕【第1章ː地獄の合宿編】
121/198

第3幕【第1章ː地獄の合宿編】合宿2日目・ダブルヘッダー編①

合宿2日目

初日同様、地獄の走り込み、ケースバッティングを行った後、午後、横浜桐生学院恒例のGW連日ダブルヘッダーである。

横浜桐生学院は専用グラウンドを2つもっており、どちらも公式戦を行えるほどの広さである。

毎年GWの時期に、強豪校をグラウンドに招待し、試合を行うというのが毎年の恒例行事である。


この時期の連日のダブルヘッダーの成績、GW後に行われる関東大会の成績で夏の予選のメンバーが決まる。


そして今日のダブルヘッダーの相手は

昨年の夏の大会で西東京ベスト4の武蔵野実業高校むさしのじつぎょうこうこうと昨年、東東京でベスト4の成光学園高校せいこうがくえんこうこうである。


初戦の第1グラウンドでは横浜桐生学院の1軍メンバーVS武蔵野実業高校との試合、第2グラウンドでは、1年生のレギュラー候補や1軍の控え選手や2軍選手が中心の試合となる。




朝の空気がまだひんやりと残るグラウンド。静かに陽が差し込み始めた三塁側ベンチから、横浜桐生学院の選手たちが整然と飛び出してくる。合宿2日目、第1試合。対戦相手は西東京の強豪・武蔵野実業高校。だが、試合開始の合図が鳴る前から、すでに空気は一方的だった。


「1番、ショート、神野くん」


場内アナウンスとともに、神野隆雅がバッターボックスへ向かう。


普段は代走専門として起用されてきた彼にとって、今日のスタメンは特別な意味を持つ。


合宿という限られた機会の中で、スタメンを掴むチャンスが与えられたのだ。


その目は静かに燃えていた。


(今だけは、走るだけの男じゃないって証明してみせる)


 武蔵野の先発はエース右腕・柿沼。技巧派として名を馳せ、緩急とコースで打ち取るタイプの投手。だがその2球目、神野は一閃した。インコースのツーシームを完璧に捉えた打球は、ライナーで左中間を破り、フェンスまで転がる。


 俊足の神野は一塁を蹴り、すでに加速態勢。守備の返球が二塁に到達するころには、彼は三塁ベースへダイブしていた。


「セーフ!」


 先頭打者スリーベース。ベンチがどよめく中、次打者・加藤勇斗が打席へ。熱血男は初球から迷いなくバットを振った。打球はライト線を鋭く切り裂くライナー。神野が余裕を持って生還、1-0。


「ナイスラン、神野!」「加藤、いいぞ!」


 歓声が響く中、3番・高田優斗がゆったりとバッターボックスへ。柿沼の変化球を見極め、カウント2-2からの直球を強く引っ張った。打球は鋭く左中間を破る。加藤が一気にホームイン、2-0。


 打順は4番・藤原守。県内屈指のスラッガーがバットを構えたとき、スタンドの空気が明らかに変わった。柿沼が投じたスライダーが甘く入る。藤原は一呼吸置き、フルスイング。


 カキーン――。


 右中間スタンドに吸い込まれる打球。弾道は美しく、誰もがそれとわかる一撃だった。ツーランホームラン。ベンチが総立ちになる。4-0。


 まだノーアウト。5番・藤城慎也がセンター前に鋭い打球を運び、続く原田圭吾も逆方向へ流してライト前。止まらない攻撃。


 そして7番・白井翼。カウント2-1、ベンチからのサインはバスターエンドラン。振り抜いたバットがレフト線を破り、藤代が生還、5-0。原田も三塁に達し、なおもチャンス。


 三好大翔の打席。堅実な二塁手は1ボール2ストライクからの外角球をきっちりセカンドへ転がし、原田がホームイン。6-0。


 岡田が一度は三振に倒れるも、粘り強く8球投げさせる姿勢でベンチを沸かせた。


 打順が巡り、神野がこの回2度目の打席へ。今度はセンター返しのクリーンヒット。白井がホームに生還し、ついに7点目。


 初回で打者一巡、7点先制。桐生学院の1軍が“格の違い”を見せつける形で、試合の主導権を完全に握った瞬間だった。


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