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孤高の剣鬼やめます。転生したのでまずは学園で友達作りから〜ぼっち剣士、転生して次こそ最強を目指す〜  作者: 猫額とまり


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第35話 因縁の衝突



(三人称視点)



「しくったなぁ」



 【蟻の巣(アントネスト)】の頭領、イードゥは思わず舌打ちした。



「魔物をぶつけりゃ正義感に溢れた騎士様は、俺たちの所にやってくると踏んだんだが。まさか俺が妖精ちゃんに先に見つかるなんてドジ踏むとは」


「頭領。この後どうするんですか」


「どうもしねーよ。まだ計画の範疇ではある。プランを切り替えればいいだけだ」



 あの妖精ちゃんは殺すけどな、とイードゥは付け足す。



「学園や市街地を盾にしてでも引き籠られると面倒だったが、俺らの方に向かってくるなら話は早い。

プランDに切り替えろ。市街地に潜伏させてた魔物もこっちに戻せ」


「迎撃、ですね」


「そうだ。人気のない場所の方が都合がいい。身の程知らずのおチビちゃん達に、大人の怖さを思い知らせてやろうじゃねーの」



 イードゥの不気味な笑いに呼応するように、赤黒い光を放つ“魔剣”が脈を打っていた。





(一人称視点)



「最優先は周囲の被害を抑えること。そして魔物を生み出している主犯を見つけ、倒すことだ」



 学園を出た俺たちは高速で移動しながら状況の確認を行う。

 リリが主犯と思わしき気配を見つけてくれたので、それを辿っている。恐らく敵は移動しているだろうが、まだ近くにはいるはずだ。



「これは俺の勘だが、敵は犯罪や殺人に忌避感を持たない集団。恐らく傭兵まがいの犯罪集団だろう。体格も戦闘経験も優れている。フィレムより強いやつもいるかもしれない」


「え、ティグルそんなことまでわかるの?」


「リリが襲われた時に残っていた攻撃痕から、おおよそ検討はつく。それにこのへばりつくような悪意の気配は、一度嗅いだら忘れもしないさ」



 リリに導かれながら王都を移動していくと、俺にもその気配がわかるようになってきた。

 人混みに紛れ巧妙に気配を紛らわせているが、今度は逃しはしない。

 だが同時に、気づいたこともある。



「誘導されてるな」


「うん、リリの時と一緒だ。人気(ひとけ)のない方に誘い込もうとしてるみたい」



 向こうもこちらの追跡には気づいているはず。

 そして俺たちを始末するなら、なるべく人気のない場所の方が都合がいいだろう。

 追跡されていることを逆手にとって、俺たちを自分の有利なフィールドに誘い込もうとしているようだ。



「ティグル、どうするの?」


「このまま突っ込む。俺たちとしても人気のない場所の方が都合がいい。人がいる市街地で暴れられたら困るからな」


「りょーかい! 正面突破だね」


「ああ。罠を張っていようが関係ない。真正面から食い破ってやろう」





 そして細い路地を通り抜け、王都の奥まった人気のない方へ進む。

 せりたつ建物の壁が日光を遮り、薄暗く(よど)んだ雰囲気が漂っている。

 リリを初めて見つけた廃倉庫と似た空気だ。



「!」



 リリに向けて無数の矢が放たれたのはその時だった。

 統率された動き。熟練の隠蔽技術と狙撃技術。

 常人ならばこの奇襲でやられていただろう。だがリリは違う。



「ていやっ!」



 リリが空色のサーベルを振るうと、魔術による風が吹き荒れる。

 まるで蜘蛛の糸に絡められるように、迫る矢は空中でその推進(すいしん)力を失った。



「こんな弓矢じゃリリに届かないもんね!」


「――気をつけろリリ。ようやくお出ましだぞ」



 俺たちを囲む寂れた建造物。

 その屋根の上に、全身黒づくめの集団が立っていた。

 身長、性別、種族もバラバラ。だが俺たちに向けられた殺意と、幾つもの死線を潜り抜けた者が放つ覇気は共通であった。


 ――その中でも一人。背が高く浅黒い肌をした男。

 別格だ。目の前の集団の中でも飛び抜けて強い。

 間違いなくフィレム以上。いやあるいは……



「やっぱり……あの格好、覚えてるよ。リリを襲った人達とおんなじだ」


「よう。元気してたか妖精ちゃん? こんなに早く再会するとは思ってなかったぜ」



 マスク越しにもわかる、歪んだ笑みを浮かべながら浅黒い男は話しかけてきた。



「てっきり剣士はやめると思ってたんだがなぁ。あれだけ酷い目に逢っても諦めないとか、強情にも程があるぜ」


「……だったらリリを殺せばよかったでしょ。なんで止血までして生かしたりしたの」


「“殺せ”って命令ならそうしてたけどな。“再起不能にしろ”って命令だったから俺たちは従っただけだ。それに――」




「――お前みたいな面白いオモチャ、すぐに壊したら勿体無いだろ?

腕を斬り落とした時のあの絶望の表情と泣き喚きっぷりったら、今でも思い出して興奮しちまうよ」


「――――」


 周囲の黒づくめ達から、くすくすと静かな(あざけ)り声が聞こえてくる。

 リリは悪意に満ちた眼差しを全身に向けられても、表情を歪めることはしなかった。



「……やっぱりあなた達は悪い人だね。あの時のリベンジ、させてもらうから」


「威勢のいいこと言うようになったねぇ。そこの少年に元気づけてもらったのかな?

ああ、もしかしてお二人さんそういう関係――」



「――口を開けば下衆(げす)な台詞ばかり。リリの前でそれ以上醜い言葉を喚き散らすな」



 浅黒い男の言葉は途切れる。

 【極点】で音の速度を超えた俺が斬りかかったからだ。



「へぇ。やっぱり強いな。調査通りだ」


「!」



 その高速の剣撃は、男の持つ剣で受け止められていた。

 一目でわかる、普通の剣ではない。血を塗り固めたような赤黒く脈動する剣。

 近づくだけで不吉な予感がする。だがそれだけではない。



「今の……俺の力を、吸収したのか」


「あのお嬢様との戦いで使ってたな。相手のエネルギーを吸収する技、だったか?

悪いがそりゃお前だけの専売特許じゃねぇんだわ。世界は広いんだぜ? クソガキ」



 俺の中で男の危険度が数段跳ね上がる。

 見た時点で強敵だとは分かっていたが、剣を合わせたらそれ以上だった。

 この相手は、恐らく今の俺より……



「リリ。……俺はあの男との戦いに集中したい。だから」


「うん。ティグルの背中はリリが守るよ。他の誰にも邪魔はさせない」


「ありがとう。一緒に戦ってくれ」



「泣けるねぇ〜。素敵な友情ごっこだ。見てるこっちが恥ずかしくなってくるよ」



 周囲の黒づくめが一斉に剣を抜く。

 今生で未だ経験したことのない、濃密な殺気に包まれる。



「そんな青臭いガキが未来を失って、絶望する顔が好きなんだ。……興奮しちまうなぁ、お前らがどんな顔してくれるのか、今から楽しみだ――!」



 そして長く濃密な、殺戮(さつりく)の一日が幕を開けた。


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