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孤高の剣鬼やめます。転生したのでまずは学園で友達作りから〜ぼっち剣士、転生して次こそ最強を目指す〜  作者: 猫額とまり


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第34話 戦友



(三人称視点)



 授業の後更衣室で着替え次第、リリとティグルは食堂で合流する予定だったのだが。

 そのわずかな隙を狙ったかのように、学園にそれは現れた。


 人間の街に現れるはずのない、魔物の大群。

 どこからか突如現れたそれは、学園に侵入し生徒を手当たり次第に襲っていた。


 無視する訳にもいかず魔物を相手取り、学園の体勢が整う時間を稼ぐ。

 そうして何体かの蟻を倒した辺りで、リリは違和感に気づいた。



(これ、普通の魔物さんじゃない……暴走させられてる?)



 先日のティグルとの修行でたくさんの魔物を相手取ったリリだからこそ気づけたことだ。

 或いは人間とは違う、妖精独特の感覚がそれに気づかせたのかもしれないが。



(ぞわぞわして気持ち悪い変な魔力。この魔物さんの魔力じゃない、外から無理矢理注がれた?)



 リリがこの襲撃の真相に近づいた時、はたと上空を見上げる。

 彼女が魔物の中に感じ取った不気味な魔力。それと同じ気配を感じ取ったからだ。


 空から降り立つ巨影。新たな闖入者(ちんにゅうしゃ)である鳥型の魔物は、明確にリリに対し殺意を向けていた。

 リリの優れた聴覚は、メキメキと内側から不自然に肉が膨れ上がる音を捉えていた。



「こんな魔物さん、王都の空にいるわけない……誰かが魔物を生み出してる!?」


「「「Kyooaaaa!!」」」



 リリの四方を囲んだ魔物が、一斉にその嘴で襲いかかってくる。

 人間の頭部など一撃でもぎ取れるであろう威力。その致死の攻撃を、リリは飛び上がることで回避した。


 背中の翅が、リリの意思に応じて羽ばたく。



「【風装】!」



 ガリウスより教わった風の魔術が、リリの機動力をアシストする。

 魔術を使えるのは魔女の血を取り込んだ者のみ。だがあくまでそれは、人間のみの話。

 妖精であるリリは、元より風魔術を行使することができる。



「ごめんね魔物さん、できるだけ痛くないようにするから……!」



 魔物の追撃を空中で回避し、リリはその身体に触れる。

 風の流れ、魔力の流れ、魔物の運動エネルギー。

 それらの流れをリリは、掴んだ(・・・)



「とりゃあっ!」



 莫大なエネルギーの奔流(ほんりゅう)にそっと力を加え、流れの向きを変えてやる。

 “柔剣術”の基本、ベクトル操作(受け流し)。相手の力を利用したリリは、その小柄な身体で魔物の巨体を投げ飛ばしてしまった。



「Kyoaa!?」



 ボウリングのように別の魔物と衝突し、無防備な状態となった瞬間をリリは見逃さない。



「【風刃】!」



 小さな妖精から放たれた魔術は、容易に魔物達の首を刈り取った。

 だがまだまだ魔物は残っている。攻撃を受け流し跳ね返しながら、リリは周囲の警戒を怠らない。



(魔物を生み出してる悪い人が近くにいるはず……こんな芸当ができるのはきっと【魔女】だけだ!)



 魔女。人類に仇なす害敵。

 実物を見たことはないが、今の不気味な魔力の感覚は覚えている。妖精としての感知能力を使えば、その源を特定するのは不可能ではない。

 ましてやリリは、力の流れを掌握する柔剣術の天才だ。



(……! あっちの方角から、同じ魔力の流れがきてる!)



 人間のティグルにはできない、妖精の感覚頼りの探知方法。

 驚くべきことにこの場の誰よりも早く、リリは黒幕の場所を特定してみせた。



 ――それは同時に。敵が潜伏する必要がなくなったことを意味する。



「え」



 それは狙撃であった。

 魔物を生み出しながら奇襲の機会を伺っていたイードゥが、先にリリに居場所を察知されたことに勘付いたのだ。

 カウンターで遠距離射撃、そして離脱を行う見切りの早さは見事なものである。


 だがリリはそんなことを気にしている余裕はない。

 高速で放たれた矢は、既に眼前にまで迫り――



「――たあっ!」



 リリの小さな頭を貫く直前で、その軌道をギリギリで逸らすことに成功した。

 流れた矢が鳥型の魔物に刺さり、泡を吹いて即座に絶命する。



(毒矢! しかも今の動き、リリ覚えてる……!)



 忘れようがない。かつてリリを絶望の(ふち)に追いやった男。

 両手を斬り落とすだけだった前回と違い、明らかに殺害目的で放たれた軌道。



(ティグルが言ってた、リリ達を狙う悪い人間さん! もしかして魔物を生み出してるのもあの人!?)



「――リリ、無事だったか」


「ティグル!」



 直後、眼前に降り立ったのは、ティグル・アーネスト。

 はぐれていたリリを探して、ようやく見つけたのだ。

 同時に放たれる剣閃。リリの視力でも追いきれないそれらは、彼女を取り囲んでいた鳥型の魔物を瞬殺してしまった。



(すごい剣筋、だけどちょっと怖い……いつものティグルじゃない、怒ってる?)


「リリ。この襲撃は恐らく俺達を狙う敵が引き起こしたものだ。学園の被害を抑えるためには俺たちが学園の外に出るしかない」



 ティグルの表情は、リリが見たこともないほど険しいものであった。



「恐らく命の取り合いになる。……もしも勇気がないなら、リリはここで保護してもらっても――」


「リリも行くよ」



 それはティグルから話を聞いた時点で、既に決意していたことだった。

 トラウマの象徴。仇敵との再戦。

 以前のリリならば、それだけで戦意を喪失していただろうが……



「今度は勝つよ。リリ達だけじゃなく学校まで狙うなんて、絶対許さないんだから」



 今のリリは強い。

 それに今度は一人じゃない。一緒に戦ってくれる戦友がいる。



「……愚問だったな、すまない」


「いいよ! リリを心配してくれたんでしょ? でも大丈夫!」


「わかった。なら一緒に戦おう。俺たちの因縁に決着をつけるぞ」


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