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孤高の剣鬼やめます。転生したのでまずは学園で友達作りから〜ぼっち剣士、転生して次こそ最強を目指す〜  作者: 猫額とまり


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第32話 【蟻の巣】



(一人称視点)



 翌日、フィレムは学校に来なかった。

 普段通りの不登校なのか、それとも昨日の決闘が尾を引いているのか。



「えー!? ティグル、フィレムと決闘したの!?」


「ああ。フィレムの方は本調子じゃなかったようだが」



 昨日の決闘は深夜ということもあってか、他に広まってはいないようだ。

 そのため未だ学園の頂点はフィレム、ということになっている。俺としても不本意な決着だったし、その事実自体は別に問題はない。



「リリが決闘を申し込んでもいつも断られるのに……どうしてティグルが?」


「なぜ俺の方に来たのかはわからん。だがきっかけは恐らく、この間の退学通告だ。あの提案を断ったから、力づくで俺を追い出そうとしたんだろう」



 ……もっと遡れば、俺が校外演習で勝負を吹っ掛けたのがきっかけだったかもしれないが。

 フィレムの取り巻き連中から襲撃を受けた時、その手際の悪さから俺はフィレムの立ち位置に疑問を抱いた。

 彼女がリリを襲わせたのか否か。それを直接見極めたくなった俺は、あの校外演習で接触することにした。

 そしてそこから連鎖的に状況が変化し、予想外の大物(・・)が釣れた。

 フィレムは犯人ではなかったが、この大物には早いうちに対処しなければならない。



「この決闘のことは他言無用で頼む。俺もフィレムも門限を無視して寮を出ていた身分だ、バレたら叱られるからな」


「……うん、そういうことにしておくね。でもどうしてリリには教えてくれたの?」


「ああ。ここから先の話は、リリにも関係することだからな……」



 真昼間にも拘らず、学園の外から粘つくような視線を感じ取っている。

 もはや隠す気もないのだろう。逆に出所を悟られないよう、大量の人員を監視につけて気配を散らしている。

 とはいえ策がないわけでもない。俺はリリに事情を語り出した。





(三人称視点)



 【蟻の巣(アントネスト)】は、三十人程度の人数からなる傭兵集団である。

 護衛や魔物討伐から、誘拐や暗殺まで。金さえ貰えばなんでもこなす。

 確かな実力を持つこともあって、その筋(・・・)では悪名が広がりつつある。


 そんな【蟻の巣】だが、レオルド公爵と繋がっている事実を知る者は少ない。

 レオルドが隠蔽工作に長けているのもあるが、目撃者を残さない【蟻の巣】の確かな仕事ぶりも大きな要因である。

 アヴァロン王国の騎士団も、彼らの動向をほとんど捉えられていないのだ。



 そんな彼らはここ数日、次の標的の監視に張り付いている。




「……あいつら出てきませんね、頭領」


「そりゃそうだろ。学生なんだから普段は学園に篭ってるのが普通だ」



 頭領と呼ばれた男――傭兵団のリーダー、イードゥは、呑気に寝転びながら部下に答えた。


 全身黒づくめの衣装を纏った彼らは、離れた地点からティグルとリリを観察していた。

 レオルドから与えられた任務は、彼ら二人の殺害。

 だが率直に言って、彼らの状況は決して良いものではなかった。



「あいつら学園に立て篭もるつもりです。男の方は夜になるとなぜか学園の外を出回りますが……」


「俺たちを誘ってるんだよ。お前らじゃ勝てねえから乗るなよ」


「でももう、狙うならそのタイミングくらいしかありませんよ」



 ここ数日ティグルとリリは、常に行動を共にし学園内から出てこない。

 歴戦の傭兵団といえど、監視の厳しい学園内に入り込むのは容易ではない。

 魔術によるセキュリティに加え、現役の騎士を含む教師陣が大量に居るのだ。

 その中には“元”円卓の騎士、ルフォス・ガラハッドも含まれている。


 更に……



「明らかに監視が増えてませんか?」


「チッ。やっぱあのガキ、教師共にチクりやがったか」



 監視がバレた時点で、こうなることはイードゥも予想できてはいた。

 これこそがティグルの策。彼はリリが再度襲われる可能性を教師に伝え、監視を強化してもらっていた。

 今の彼は自分一人で戦うだけでなく、他人の力を頼る強さも持ち合わせている。


 標的に加え教師まで相手取るとなると、いかに歴戦の傭兵であっても難易度は跳ね上がる。

 そして時間を掛かれば騎士の増援がやってくるだろう。そうなればイードゥ達の任務は失敗だ。



「証拠もないのにどーやって説得したんだか」


「どうします頭領、前の妖精少女の時みたく、学園の外に出るまで待ちますか」


「いや、そんな暇はねぇ」



 イードゥはティグルの手際を素直に賞賛していた。

 ティグルは常識こそ欠如しているが、こと戦闘に関しては頭が回る。

 自分が有利な戦況に持っていく知恵も、その一部だ。



「あん時は買い出しの瞬間を狙ったが、今回時間はあいつらの味方だ。もし【円卓の騎士】が来たら、俺らの任務は継続不可能だからな」


「え、円卓……多忙な彼らが、証拠もないのにわざわざ学園に来ますかね」


「さっきレオルドから情報がきてな、円卓の騎士の一人が、正式に護衛任務として学園に派遣されるそうだ。到着は明日らしいが」


「かなり不味いじゃないですか」



 イードゥもこの業界に入ってそれなりに長い。王国が誇る十二人の騎士、円卓の騎士の強さも当然知っている。

 もし彼らが一人でも学園にやってきたら、依頼続行は絶望的だろうと考えていた。



「円卓の騎士が到着すれば奴らの勝ちだ。だからそれまで学園に篭って時間を稼ぐ。生活物資は教師に調達してもらう。即興の割にはよく出来た籠城作戦だよ。実際こうして手が出せねぇでいる」


「……今からでも依頼主に掛け合って辞退を」


「そりゃ最後の手段だ。やっぱり依頼をこなせませんでしたー、じゃ【蟻の巣】の信用に傷がつく。俺ら傭兵業にとって信用は命より重いからな」


「なら、どうするんですか?」


「決まってるさ」



 イードゥはそう言って立ち上がった。

 彼とて幾度も困難な依頼をこなしてきた歴戦の傭兵。

 何の対策も講じずここで寝そべっているわけではない。



「城を崩すなら足元から。蟻の道を塞ぐなんざ到底不可能だと、頭の堅い騎士共に教えてやろうじゃないの」





 ……あれから数日。

 監視の視線は未だに感じるが、攻めてくる気配もない。


 視線から察するに、奴らの狙いは恐らく俺とリリだ。

 俺はともかく、リリは一度奴らに敗北している。彼女も修行で以前よりかなり強くなったが、俺がいない間に奇襲を受ければ万が一ということもある。迂闊な行動はできない。


 成功するかは半分賭けだったが、俺はガリウス先生を説得して見張りを強化してもらうことができた。

 学園内部の守りは強固だが、夜になるとそれも薄れる。万が一学生寮にいる内に奇襲を受けたりしないよう、学内のセキュリティを一時的に強化してもらったのだ。

 加えて元円卓の騎士であるルフォス学園長のツテで、護衛として現役の円卓の騎士を一人招集できたらしい。多忙なのかすぐにはこれないようだが、それまで持ち堪えれば状況は打開できる。


 襲われるという具体的な証拠もないのに、ガリウス先生とルフォス学園長は最大限協力してくれた。それほど俺の言葉を信頼してくれているということだろう。感謝してもしきれない、いつかこの恩は必ず返さなければ。


 フィレムとの決闘から何日が経ったが、監視している人物が捕まったという報告もないし、俺の挑発に乗ってくる様子もない。あれからフィレムも学校にやってこない。

 何も変化のないまま時間が過ぎていく。だが幸いにも時間は俺たちの味方だ。

 明日になれば円卓の騎士がやってくる。そうなれば奴らが手出ししてくる可能性は限りなく小さくなる。

 そう考えながら、俺とリリは籠城最終日を迎えた。



「……!?」



 それは食堂で昼食を摂っている時だった。

 何かの破砕音と、人々の悲鳴。そして(おぞ)ましい魔力の波動。

 それらは全て、学園の敷地内から感じ取ったものだった。


 生徒の一人が、慌てて食堂にやってくる。



「大変だ! 学園内にいきなり魔物がッ」


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