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さくら  作者: 雨世界
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 さくらは両親のお仕事の都合で東京に引越しをすることになった。本当なら東京に引越しができてうらやましいなと思うのだけど、わたしはそうは思わなかった。わたしはさくらのことがすごく心配になった。さくら。大丈夫かな。わたしがいなくてもさくらは東京の高校でうまくやっていけるかな? ちゃんとすごく仲良しになれる(さくらのことを守ってくれる)友達ができるかな? とそんなことばっかり思っていた。引越しまでの短い間、さくらはいつも強がっていたけれど、本当はすごく不安だってことがわたしにはよくわかっていた。(さくらの一番の友達だから)

「さくら。大丈夫?」とわたしは言った。「大丈夫だよ。なに言っているの? わたしはもう高校生なんだよ。別に大丈夫だよ。ちゃんとうまくやっていけるよ。大丈夫。大丈夫」とさくらは言った。

 でも、わたしは全然安心することができなかった。(できたら、引越しのあと少しの間、さくらについていってあげたいくらいだった)わたしはいつもさくらのことを思っていた。さくらとさよならをするのは寂しかったし、(すぐに会いに行けるような距離ではなかった)さくらを失うことはつらかった。でも、それ以上にさくらのことが心配で心配でしかたがなかったのだ。だけど、高校生のわたしにはさくらになにもしてあげられることはなくって、さくらは引越しの日を迎えて、泣きながら、みんなでお別れ会をして、さくらは東京に引越しをして、わたしとさくらがずっと暮らしていた田舎の町からいなくなってしまった。

 さくらが引越しをしてから、わたしはしばらくの間、ぼんやりとすることが多くなったのだけど、もうさくらだって高校生なんだし、東京でも、きっと友達がたくさんできて、幸せに毎日を過ごしているのだろうと思うようになった。(きっとわたしの心配のしすぎなのだと思った)それにもともとさくらにはこんななにもない田舎の町よりも(今ではわたしはこの町のことが大好きになっていたけど。だってわたしのふるさとなんだから)東京のほうがずっとずっと似合っていたのだ。ある才能のある人がいるべき場所におさまっただけなのだと思った。(そういう目に見えない運命のような力が働いたのかもしれない)だから、さくらはきっと大丈夫なんだとわたしは思った。

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