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さくら  作者: 雨世界
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1 ともだちがほしいの。

 さくら


 ともだちがほしいの。


 ふと見ると、さくらはじっと校舎の壁を背にして、地面を見つめていた。そこになにがあるんだろう? と気になってみてみると、そこにはさくらの影があるだけだった。わたしはまたさくらに目を向ける。さくらはとても真剣な顔をしている。(なにかをじっと考えている顔だった)さくらはすごく綺麗な子だったから、ただそれだけで見とれてしまうくらいに絵になった。わたしは飽きることもなく、じっとさくらのことを見ていた。すると、ふとさくらがわたしの視線に気が付いて顔を上げてわたしを見た。さくらはにっこりと笑って「なに見ているの?」とわたしに言った。わたしは「さくらのこと見てたの。すっごくかわいかったから」と自分の気持ちを正直に言った。するとさくらはその白いほほを赤く染めて「ばか。なにいっているのよ」と照れながらわたしに言った。

 季節は春で、世界にはさくらと同じ名前の綺麗な美しい桜色の花びらがたくさん、たくさん、舞っていた。

 わたしがさくらと出会って友達になったのは、中学一年生のときだった。(同じ一組の教室になったのだ)わたしはさくらと出会って、一目見てさくらにひかれた。すごく綺麗で、絶対に友達になりたいと思った。さくらは綺麗だったけど控えめで大人しい性格をしていたから、目立つようなことはなにもしていなかった。(目立つことは嫌いなんだと言っていた)もちろん、さくらはただそこにいるだけで目立ってしまうのだけど、そのことをさくらもわかっているみたいで、なるべく自分からは目立つことはしないように心がけているみたいだった。(もしかしたら、生まれたときからずっとかわいかったさくらは、今までの生きていた時間の中で、いいこともいっぱいあったと思うけど、なにかいやなこともたくさん経験しているのかもしれない)

 さくらは同じ中学校の制服を着ていても、なんだか一人だけとっても輝いて見えた。同じ制服、同じスカーフ。同じ靴。同じひざ下のスカート丈。全部同じなのに、全然違うのだ。(ずるい)背丈も同じくらいなのに。

 さくらはすごくやさしかったし、まじめで中学校の成績もすごくいいというわけではなかったけど、いつもちゃんと勉強をして合格点をとっていた。(わたしは数学と英語が赤点だった)わたしからみるとさくらは完璧に思えた。さくらになれたらな、と思うときもあった。だけど、さくら本人はあまりそんな風には思っていないようだった。ときどき、さくらはみんなに隠れてとてもつまらなそうな顔をするときがあった。さくらと友達になって、いつも一緒にいるようになって、わたしははじめて、そんなさくらのことを知ることができた。

「さくらもさ、いろいろたいへんなんだね」とわたしがいうと、なんだかちょっとだけ嬉しそうな顔をして「うん。いろいろあるんだ」とさくらは言った。

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