兄(6)
何が起きたのか、その時は、さっぱり判らなかった。
新しい弟の学年で流行っているらしい「流行性の貧血」……そんなモノが有るなど、この時までも、それ以降も聞いた事は無いが……に似た症状で母親が倒れ、入院待ちの、ほんの数日で死亡してしまった。
葬式の準備は……子供の自分からしても、最初はてんやわんやで……気付いた時には、葬儀屋任せになっていた。
通夜の間、母の身内と、父や祖父が何かを言い争っていた。
そして、夜も遅くなってから、「沼田のおじさん」一家がやって来た。
皮肉なモノだ。
この家に居る2人の子供は、死んだ母とは血の繋がりがなく、死んだ母が産んだ唯一の子供である妹は、「沼田のおじさん」の養子になっている。
座敷で言い合いをしている父方の親類と母方の親類を見た叔父は、ゲンナリした表情になった。
だが……。
「やめろ‼」
大声で両者を怒鳴り付ける。
「おい、あんたも事情を知れば……」
母の一番上の兄が、そう言った。「沼田のおじさん」は、母の親類からも「ウチの一族の数少ない良識人」と見做されていたので、どうやら、その「事情」を知れば、自分達の味方に付いてくれると思ったらしい。
「話は後で聞くから、まずは……」
「沼田のおじさん」は、一緒に来た妹……今は「沼田のおじさん」の養子になっているが……に目をやり……。
「この子に、母親の死に顔ぐらい……」
その時、父方・母方の親類全員が青冷めた顔になる。
「み……見ない方がいい」
「どういう事だ? おい、そう言えば、義姉さんの死因は何も連絡が無かったが……」
そう言って「沼田のおじさん」は、棺に近付き……。
母親の死に顔を見てから……しばらく黙っていた。
ゴクリ……と生唾を飲み込む音が、響いた気さえした。
「病気じゃ……ないのか……?」
「そうだ……呪詛だ」
「おい、待て、誰がやった? この家の周囲に張られている結界は……」
「そうだ……全く無事だ。『何か』が入り込んだ形跡は無い。だから……」
「馬鹿な……何でだ? どうなっている?」
「判るだろう? ほぼ、確実に……」
母親の兄は、そう言った。
「何を馬鹿な事を言っている?」
父親が反論。
「いや、そうとしか考えられん。俺の妹を呪殺したのは、この家の誰かだ」




