妹(7)
その時は、何が起きたのか、さっぱり判らなかった。
最後に会ってから、3ヶ月ほどしか経っていない。
そして、その「最後に会った時」には、健康そのものの筈だった。
実の母親が突然死したので、通夜に来い……実家から来た、その、いきなりの連絡は、何の事だか、さっぱり判らなかった。
いや、今の親も、私も、言葉の意味は理解出来た。
しかし、実感が全く湧かない。
交通事故などでは無いらしい。
特に前々から体の調子が悪かった訳でも無いのに、たった、3ヶ月の間に、病気に罹って、ポックリ死んだ。
もちろん、そんな齢ではない。
「何が……どうなってるの?」
今の父親が運転する車の中で、私は、そう訊いた。
「判らん……」
今の父親は、私の修行の為に、この3ヶ月、ほぼ、実家に顔を出していない。
実家に何かの異変が起きていたとしても……世間一般の基準では良識人であるが故に、逆に一族の鼻つまみ者である今の父親には、何の連絡も行っていないであろう事は、予想が付いた。
「すいません、ちょっと遅れるかも知れません……」
今の母親が携帯電話で実家に連絡する。
電話をかけてから通じるまでに、結構な時間がかかった。
多分、実家の方でも、てんやわんやの状況なのだろう。
何せ、冠婚葬祭などに関する「実務能力」が最も有りそうな、肝心のその人が死んでしまったのだから。
「明日の天気は、どうなってる?」
「台風みたいね……」
「少し、どこかで休憩するか……」
しばらく後、私達は、道路沿いのファミレスに居た。
今の父親は、実家……と言うか、私の実の父親に連絡している。
葬儀に関するアレコレを訊きながら、途中のコンビニで買ったノートとボールペンでメモを取っていた。
「くそ……葬式の段取りなんかを誰も考えてないみたいだ……どうしたものかな……?」
「葬儀屋さんが何とかしてくれるんじゃ……?」
「でも……あの兄貴達の事だから……」
どうやら、これが因習呪術師一族の情けない実態のようだ。
一族とは距離を置いて、普段は会社勤めをしている今の父親を除いて……生活能力みたいなモノは皆無。
パトロンが居た頃の「貯金」で何とか食っている……お先真っ暗な連中。
逃げ出せた私は、まだ、いい。
しかし、親類から来た養子の筈なのに、実家との縁が切れない兄は……一体全体、これから先、どうなるのだろうか?
「とりあえず、明日、台風が来た時の雨具と……他に必要そうなモノを途中のコンビニで買ってから行くか……」




