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第8話 アイテムボックス的魔法と聖戦の狼煙

 街を囲む防壁を抜けると駅前ロータリーのような光景が広がっていた。バスにタクシーに路面電車。自動車の個人所有は認められていないため自家用車っぽい車は少ない。

 全体的な街並みの印象は『パリ』だろうか。

 ヨーロッパ風の多層階建築物が並び、どの建物にも繊細な装飾が施されている。とても芸術的な街だ。   

 そして、そんな美しい街の中を様々な種族の人達が行き交っている。大きい人、小さい人。長耳、獣耳。有角。有牙。それぞれの身体的特徴や肌の色などは誰も気にしていない。むしろそれらが更に街に鮮やかさを加えているように思えた。

 

 服、食材、食器類など、あらかた欲しい物を買い終えると夕方になっていた。

 お金。は、もちろん施設とともに受け継いだお金。今は堂々と甘えさせて貰う。そういう時期。うん。

 荷物は既に施設に転送済み。

 出発前にアイテムボックス()な魔法を完成させていたのは正解だった。

 方法は、転移魔法の応用。物を転移魔法で包み、転移紋章を刻んだ施設の部屋に転送するだけ。加えて部屋全体を魔力で満すことにより、内蔵物の把握、整理、引き出しも可能となった。因みに、僕の魔力の影響を受けていない者はその部屋には入れない。それほど部屋の中の魔力密度は濃くなっている。

 ということで、残る目的は転移紋章を刻む場所を探すだけとなった。

 せっかく来たのだから、できればやっておきたい。


 日が暮れて二時間程経過。

 紋章を刻める場所はまだ見つかっていない。

 そもそも人目に付かず、勝手に落書き出来て出入り自由。尚且つ壊されることのない場所。なんてあるのだろうか。

 ふと、諦めの境地にいる中、夜空を見上げた。

 違和感は感じていた。雨が降る直前に湿度の上昇や独特な匂いを察知するうに、肌触りの悪い魔力の流れを。

 夜空に赤い稲光が走る。

 魔力の光出(こうしゅつ)だ。

 それは強力な魔力の収束時に起こる現象であり。予兆である。

 赤い稲光は巨大な魔法陣を形成。後、【隕石魔法】を発動した。

 終わった。

 不覚にも、炎を纏った直径二十メートル程の岩が迫り落ちてくる状況に、自分の能力の事などすっかり忘れて絶望感を抱いてしまった。

 もちろん街の上空もがら空きではない。防壁の上には結界に長けたものが交代制で常駐し、複数人で結界を張り続けている。なので街の上空には二重の結界が張られていることになる。

 それを思い出して、今度は恥ずかしさが込み上げた。

 ただし、一枚目の結界は簡単に突破された。範囲が広いため、結界の強度もその分弱くなっているということだろう。そして、続けての二枚目の結界には、緊急の増員で強化が施されたようで、威力を完全に殺すことに成功。威力を失った岩は結界に沿って防壁の外へと転がり落ちていった。

 それを見ながら湧き上がった感情は、安堵ではなく失望と怒り。

 見た目ほど大したことのない魔法に一瞬とはいえ我を忘れて絶望し、恥ずかしめを受けた。

 ならばやることは一つ。

 本物の【隕石魔法】を完成させる。

 そしてあの魔法の発動者に見せつけてやる。

 おそらくそいつはあの集団の中にいるだろうし。

 隕石魔法は街を破壊することは出来なかったが、結界に穴を開ける事には成功しており、その穴から不審な者達が次々と街に侵入を果たしていた。



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