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第7話 自転車

 自力で編み出した転移魔法の欠点。

 自らの魔力を刻んだ場所にしか転移できない。

 つまり行きたい場所へは、一度は自らの足で行かねばならないという制約がある。

 とはいえ前世では碌に動けない生活をしていたので、欠点と言いつつ、全く苦ではない。むしろ楽しい。気がかりなのは時間だけ。

 アイが首を長くして服を待っている。

 

 ルベリア王国西部領中央都市ブランドル。

 王族であるリーベル公が治める他種族混在都市。都市は、城を中心とした半径八キロメートルの防壁と半径二十四キロメートルの防壁で囲まれており、防壁と防壁の間には農地が広がっている。

 来る場所間違えたかな。

 地図を見て施設から一番近くて繫栄していそうな街を選んだのだけど、大き過ぎるし、厳し過ぎた。

「身分証を」

 まずこれがなければ領地の中へは入れない。

 そして血液検査と唾液検査。

 登録されているデータとの整合性を確認し、病原菌を保有していないかを検査される。

 当然身分証なんて持っていないので、透明化して入領検査の様子を見学し、不法侵入した。

 領内を見てみたいという好奇心と、透明化が通用するのかという欲求に負けてしまった。

「お使いになられますか?」

 防壁を通過すると貸自転車所が設けられていた。定期的に電力によるバスも回ってくるようだ。因みにこの世界では化石燃料を使用することは禁忌とされている。科学技術黎明期の頃には使用されていたらしいが、環境破壊への懸念が深まり、代替エネルギーの生産技術も確立されたため、使用されることはなくなった。

「お借りします」

 次にバスが来るのは一時間後というタイミングの悪さもあるが、自転車はずっと乗ってみたくて憧れていた。乗らない手はない。

 辺りは見渡す限りの田園風景だ。道路もコンクリート舗装されていない土の道路。ただ丁寧に舗装されており平らで硬い。魔法を使った痕跡もある。そしてさらに地下に意識を向けると無数の電力の流れを感じる。それなりの地下施設が広がっているということだろう。

「大丈夫?」

 こけた。

 壮大のこけて地面にうっぷしていたところに、貸自転車所のお姉さんが心配して駆け寄り、声を掛けてくれたのだ。

 恥ずかしい。こういう気持ちは何度経験しても湧き上がってくる。

 子供の姿なのが唯一の救いか。

「は、初めてなので」

 お姉さんは優しく微笑むと、自転車の後ろを持って乗り方を教えてくれた。

 これも、いつだったか。どこかで見た憧れの光景。

 おかげですぐに乗れるようになり、お姉さんはずっと手を振って見送ってくれた。

 笑顔で手を振り合うことが、こんなにも幸せな気持ちになるとは知らなかった。

 僕は意気揚々と自転車を走らせた。




「フフッ」

 女は思い出し笑いをした。

「どうした?」

 夕食を共にしている男が気になり尋ねる。

 女は数時間前の少年との出来事を男に話した。

 女は男も笑顔でその話を聞いてくれると思っていたが、男は次第に表情を曇らせていった。

 気になった女は尋ねる。

「どうしたの?」

「今日は子供は通していない」

 男は城壁の警備隊員である。

 

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