第25話 多対個
第一陣は武器も持たずに突っ込んできた人たち。
その中でも先陣を切って飛び掛かってきたのは赤髪特攻野郎。という感じの男。
空中での攻撃体勢は、明らかに右回し蹴りだ。
「俺が一発で終わらせてやるぜ!」
てっきりフェイクだと思っていたけどそのまま思いっきり蹴ってきた。
「オラァ!」
躱しても足に纏った分厚い魔力で蹴られそうなので左腕で防御する。
身体の芯にまで響く衝撃。
相当な威力だ。
だけど今の僕の身体には結界の膜に覆われていて、尚且つこの防御には魔力障壁も張っていたので痛みはない。本当は結界や魔力障壁の強度をもっと上げて、この衝撃まで感じない状態にすることも可能だけど、そうしてしまうと戦いが全く楽しめなくなるのでこの辺りのさじ加減は大事だ。
今回の調整は成功。衝撃を丁度良い感じに楽しめた。
次は。
「アア? 止められただと」
相手のがら空きの腹部に右拳を打ち抜く。相手の蹴りより少し強めの威力で。
「カハッ」
赤髪の男は気絶して倒れ込んだ。
やっぱり相手の攻撃力でこちらの攻撃力を調整する方法は使えそうだ。先に攻撃を受けなければいけないというデメリットはあるけど、相手がどんな攻撃をするのか興味があるから問題はなし。
ただ今は一人一人への調節は出来そうにないので、赤髪の男に合わせた力で戦わせてもらう。
背後から次の攻撃が迫る。
後頭部を目掛けて蹴り上げられた右足を屈んで躱し、体をひねり戻しながら、相手の一本足になっている左足を左回し蹴りで蹴り砕く。そこへまたしても背後から、今度は脳天を狙った踵落としだ。
それでも速さはこちらが上。
先程の振り抜いた左足を軸足として、すかさず右足の裏蹴りで相手の右脇腹を蹴り上げる。
後手に回れば数の力で圧し潰されそうなので、このままの別の相手に狙いを定めて更に攻撃。
蹴り飛ばし。
殴り飛ばし。
押し飛ばし。
飛ばされた相手が他者をなぎ倒すことでスペースが生まれ、そこに移動して更に攻撃。
無双感が凄い。
これだけ密集していると同士討ちを懸念して魔法や武器の使用がないから、まるで不良漫画の主人公だ。
楽しい。
けど。
さすがに多い!
三百人以上は確実にいる。
勢いで飛び込んできたは良いものの戦いに参加できなくて手持ち無沙汰になっている人が大半で、なぜか赤いスライムを囲んで観察している人たちもいる。
……あいつはなぜ戦わないのだろうか。
僕はこんなに頑張っているのに。
……女性に囲まれてどうしていいか分からない?
性格まで僕に似ちゃってるのか?
……これは、退屈している人たちの為にも分身体を造ったほうが良さそうだ。
この数だから、百人くらいかな。
「『百分隊』。がんばれ」
三、四人対一人。ちょうどいい感じの戦闘になったと思う。
ただ、その光景は知らない子供が戦っているように見えている。どうしてもまだ、あの子供が自分の姿だとは思えないのだ。
かといって、前世の姿が本当の自分の姿なのかと自問すれば、それも違和感しかない。
所詮、肉体なんて一時的な借り物。
というのが一番しっくりくる。
だとすればこの光景に違和感を抱くこと自体も無駄か。
「はい! 急いで運ぶ!」
救護班みたいな人たちが入って来た。
地面が気絶した者達で溢れてきたので、場外に移動させるようだ。
爬虫類のような皮膚の男も担架で運ばれて行っている。
「さっさとどかせや!」
「今やってんでしょうが! っていうかあんたも運びなさいよ!」
「そこ! まだ動けるなら戦うか退場するかしなさい!」
なんか空気変わってきていないだろうか。
処刑の場のはずなんだけど。
こんな闘技場があるくらいだから相当な戦闘好きの種族なのかもしれない。
あらかた倒し終えたし、僕の分身体も邪魔のようなので解除しよう。
次の相手は魔法部隊かな。
ローブを着た人たちが離れた位置で僕を囲みだした。




