第23話 魔力と細胞体
想像する。
二つの磁石が透明な板を挟んでくっついている状態を。
それが、今僕が推察している魂と肉体の有り様だ。
透明な板は空間の壁で、魂はその壁に隔てられた別空間にあり、肉体に魔力を送っている。そして肉体が滅びると引き合う力は失われ、魂との繋がりも切れる。その時、恨みなどの強い思いによって現世側に魔力が残ってしまうと、それを糧とした幽霊やゾンビが生まれるのではないか。
ただし、地球には幽霊がいる可能性はあっても、ゾンビはいない。
とすれば、地球の人類が魔力を使えない理由は、外的要因ではなく内的要因という事になるのだろうか。
肉体に魔力を使うための機能がない。もっと細かく言えば、魔力伝達細胞や魔力伝達物質がない。
もしくは、魔力阻害物質でもあるのか。あるいはその両方か。
僕の血液から生まれた赤いスライムのおかげで体内に魔力が戻りつつあるので、魔力とこの身体を一体化して、実際の細胞の動きを脳内で直接視認してみる。
因みに、今の僕は赤いスライムに丸ごと包まれながら、治癒と魔力封じの解除を受けている状態だ。その光景は、傍から見みたらスライムに捕食されているように見えていると思う。
なので、爬虫類のような皮膚の男は何もせずにただ様子を伺っている。その表情から察するに、いつ僕の身体が溶け出すのか期待して待っている感じだ。とても気持ちの悪い視線だけど、都合は良いので放っておく。
魔力は順調に回復し、それと共に脳内映像は徐々に鮮明になっていった。
無数の細胞体が四方八方へと伸びる神経線維で繋がり、それらを回路網として電気信号が駆け巡る。まさしく脳細胞の映像だ。
そこへ赤いスライムからの情報もフィードバックされる。
先程まで魔力を使えなかった原因は、とある物質のせいだった。
まず、魔力は全ての細胞体に活性化エネルギーとして供給されている。これによって各細胞は活動を始め、肉体が稼働する。その細胞体の一つに、体内原子を魔素化してあらゆる体内物質を魔力物質化する細胞があり、この細胞によって多種多様な魔法の使用が可能となっている。そして、あの三人の魔法はその魔素化を阻害する物質を生成し、注入するというものだった。
これを踏まえて地球の事を考えると、この物質が地球の人類の肉体には初めから組み込まれているのではないだろうか。
であれば、それを作り出すのは遺伝子か。ミトコンドリアか。
ただ、ゾンビがいない事実が矛盾になる。
肉体が死ねばこの物質は供給されなくなり、肉体に魔力が残っていればゾンビ化が起こっても起こしくはないはず。
この矛盾を解消する要因があるとすれば……オーラだろうか。
あるいは別の物質や細胞体が存在するのか。
……何にせよ確認には行けないので、ここまでにしよう。
魔力封じが解除されたと、術者の三人が騒ぎ始めたし。
とりあえず、あの三人に魔力封じを掛けてみようか。




