第21話 魔物人形生産工場にて
僕の従者となることと引き換えに、リオンがダンジョンの管理者になることを承諾してくれたので、リオンと領主様をダンジョンのある一室に案内する。
そこは第四層と同じ地層にある一室で、魔物人形の生産工場だ。
設備自体は僕が転生した施設の簡易版で、生体培養液が入った円柱型のカプセルが左右に十本ずつ並び、その中に魔物のDNAを注入することにより魔物人形が作られる。
機材や組み立ては施設の機械の中にいる方のアイに手伝ってもらい、急いでなんとかした。
因みに、なぜかこの魔物達は魔力を有していて、疑似魂が無くても勝手に動く。
一応、元々魂が無い生物だからじゃないかと推測はしているけど、本当のところは分からない。
あくまで仮説なので、これから時間を見つけては調べてみようと思っている。
「ハルト様は魔王ですか?」
リオンが周囲を見渡しながら呟く。
領主様も同じ様な思いを抱いたようで、僕の返答を興味深げに待っている。
「違うから」
リオンも領主様も残念そうな態度を見せた。
そこはホッとするところなんじゃないだろうか?
「しかし、これだと私がすることは殆どないんじゃないですか?」
「いや。アイテムの補充とか魔物の数の調整とか。あとは……」
「ああ。そういうのは代わりにやってくれそうな奴らがいるので、そいつらに頼んでみてもいいですかね?」
「そいつらによるかな。どんな奴らなの?」
「『カフーリ』です」
「カフーリ?」
領主様の声が裏返った。
「ほ、本当にいるんですか?」
カフーリとは大地の妖精で、体長は十センチ程で人型。見た目に反して力持ちなうえ、ほとんどの土魔法を使えるらしい。もちろん妖精らしく姿を隠すことも得意なので、ダンジョンの管理に向いているだろうとのことだった。
「ですが妖精は気まぐれとも言われていますよね。それに、お願いして来てくれるものなのでしょうか? また」
領主様はそこまで言って口を噤んだ。
胸の内にあるのは対価への懸念だろう。
それはリオンも察しているようで、その懸念に対する返答で話を続けた。
「カフーリ達にとって最も価値のあるものは快適な住処です。あいつらにとっての快適な場所とは世界にとって健全な場所なので、そういう場所があれば積極的に住処にしますし、守ろうとします。そして、この場所は、今はまだそこまでの場所ではありませんが、きちんと手入れしていけば住処として相応しい場所になるはずです。というより、あいつらが住み着けば確実でしょう。ですので、住処として認めれば対価としては十分かと」
領主様は子供らしく期待した感じで僕を見つめてきた。
よっぽどカフーリを見てみたいのだろう。
「分かった。交渉してみて」
「ありがとうございます」
そして、ついでにと、里帰りの許可も求めてきた。
「邪竜様が消滅したことを報告しないといけないので」
それもそうか。
「じゃあ、手を出して……いや。甲を上で」
リオンの右手の甲に転移の紋章を刻んだ。
「これは?」
「危険を感じたら魔力を込めて。助けに行けるから」
主を守れなかった罰として処罰される可能性もあるはず。村の場所を漏らしたら凄惨な方法で処刑されるって言ってたし。用心するに越したことはない
「……ありがとうございます」
リオンは端正な顔立ちを柔らかく崩し、とても明るい笑顔でお礼を言ってきた。
ただ、一瞬暗い表情を浮かべたのは気のせいではないだろう。




