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第18話 毒と核エネルギー

 巨大な獣の手の形をした黒い(もや)が、右側から薙ぎ払うように襲ってきた。

 性質が不明なので、解析機能を付与した魔力障壁を張りつつ、下がって回避する。

 黒い靄の正体は強力な『瘴気』だった。

 魔力障壁で防御は可能だけど、生身で受けていればあらゆる細胞を破壊されて、溶けるように死んでいたと思う。

「何をしている?」

「いや。再現できないかと思って」

「……なんだと」

 右手の上に球状結界を作り、その中で実験する。

 先程の瘴気は様々な毒微粒子の集合体だった。含まれていた毒は『ヒ素』『水銀』『鉛』……金属系が多い。人以外に毒鉱物でも食べているのだろうか。

 名前の付いてない毒もある。

 それらは僕の知識や施設のデータにはない毒だ。おそらく独自に生成しているのだと思う。

 そうなると同じ瘴気は作れないので、とりあえず空気中の元素で毒を作り試してみる。

 靄化したいので親水性の高い毒が理想か。

 魔力によって元素を捕捉し分解。結合。

 青酸系の毒が出来た。

 化学反応の起因や過程を省いて直接操作できる能力は本当に便利だ。

 結界の外に出すつもりはないので、早速、水魔法で靄化。

 魔力で思い通りの形に動かすこともできる。

 成功だ。

 意外と簡単だった。

 ただ応用の幅は広い。

 使う毒次第で状態異常の大半は引き起こせるし、即死させることも可能だ。更に視点を変えれば『治癒魔法』にも繋がる。

 そう考えると、魔法の中で最も多様性に富んでいるのは毒魔法なのかもしれない。

 毒はあらゆる形で世界に存在しているし、多種多様だ。結界などで防ぐという手段はあるが、その結界すら侵食、腐敗可能な毒も見つけている。まさに毒は生物の不完全さを象徴する物質であり、その呪縛から逃れるには完全な肉体を手に入れ。

「グギャァァァヴ」

 ダンジョンの受付の女性が、猛々しい叫び声と共に巨大な魔獣に変態した。

 ニ十メートルくらいはあるだろうか。黒く禍々しい瘴気に覆われているため、どんな魔獣なのか全容は見えない。

 垂れ流しになった瘴気の影響で地面の草花が次々と枯れていく。

 こっちにも影響しそうなので、念のため纏っている結界を多重にする。

 すっかり戦闘中だということを忘れていた。

 よく待っていてくれたものだ。

 いや。警戒していたのか。

 僕の右手の上に浮いているコレは、そうなるのに十分な危険さを秘めている。

 だからだろう、一気に力を開放したのは。油断で破滅するタイプではなさそうだ。

「貴様何者だ」

 一番困る質問。

「只の人ですよ」

 中身は。

「ふざけるな。只の人間がこの瘴気の中で生きていられるわけがない」

「結界得意なんで。そういうあなたは何者ですか?」

「生物の頂点である『竜』だ」

「それはない」

「なんだと?」

「竜はお前のような醜い存在じゃない」

 たぶん。

 あくまで勝手な理想像。竜は格好良くあって欲しい。

 こいつはやたらと口がでかく、翼も薄っぺらくて小さい。これが竜だとは認めたくない。

「死ね」

 余程僕の言葉が癇に障ったらしい。

 醜い大きな口を更に大きく広げ、その中でどす黒いエネルギーを収束させ始めた。おそらく球状のものか熱線として放ってくるのだろう。しかもそれは放射線系のような予感がする。

 金属系の毒を保有しているのであれば、その中に『ウラン』があってもおかしくはないからだ。

 影響を限定的にするために周囲を結界で包む。そして、結界内に魔力を充満させることで元素などの微粒子を掌握。これによって瞬時に放出された物質を解析し、微粒子操作での対策を可能にする。

 やはり放出されたのは放射線を含む核エネルギーの熱線だった。

 余計なことを考えれば心が怯んで動けなくなりそうなので、淡々と対処する。

 幸いなことに放射性物質は熱線のエネルギーに閉じ込められて四方に拡散してはいない。拡散していても対処は出来るけど面倒さが変わってくる。その場合は空間を歪ませて、放射性物質を吸収するブラックホールみたいなものを作らなければいけない。

 今回はそこまでする必要がないので、それぞれの反物質による素粒子帯で受けて対処することにした。

 反物質は対となる物質に衝突すると消えてしまうので、結界と魔力で無物質空間を作り、その中に満たした。

 見た目は色鮮やかな星雲だ。

「……何故消えるのだ?」

 熱線は全て消失させた。

 膨大なエネルギーだけを残して。

「なんだ……なんだソレは!?」

 僕の頭上に直径三十メートルほどの巨大なエネルギー球が浮いている。

 これは物質の対消滅によって生まれたエネルギーであり、もちろん攻撃手段として残した。

 既に奴自身の解析も完了させているので、もう()()()()

「待て。私が消えればダンジョンも消えるぞ。そうなればあの街も」

「さよなら」

 言いたいことは大体想像つくので、最後まで聞く必要はない。

 竜と名乗った醜い魔獣は、ぶつけられたエネルギー球の中で一瞬にして跡形もなく消え去った。


 あとは腐った地面を修復して……ダンジョンか。


 どうしよう。

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