序
死は誰にでも訪れる。
そこら中に転がっている。
ましてや間引かれた子供の命に価値なんてありはしない。
なのに涙がとめどなく溢れた。
苦手だったあいつの優しさ。
嫌いだったあいつの上昇志向。
期待していたあいつの未来。
僕らをごみ溜めから救い出してくれるのではないかと。
無垢な小さな足掻きは廃棄物の毒に奪われ、僕らの希望は悪臭に吹き消された。
絶望と焦燥。そんなものを感じる資格なんてない。
いつも地面を見つめていただけなのだから。
そんな自分が恥ずかしく情けなかった。
もう誰かに期待するのは止めた。
ただただ必死に縋りつく。
目の前の奇妙な存在に。
なぜか僕らの汚れた手を掴んでくれたとても綺麗な手に。
こんな人間になりたいと思った。
許されるならばと芽生えた夢を語り、初めて人の目を真っ直ぐに見つめた。
知識を求め。力を求め。身の程を知らない愚か者が嘲笑の中でもがく日々。
侮蔑。中傷。嫉妬。畏怖。怒り。期待。
称賛は保身と利益の産物。
笑顔の裏の蔑視に気付かない振りをして掌で踊る。
命がけを食べ漁り、恐怖を閃きの糧とし未開を切り開く。
出会いは誰かの差し金か奇跡か。
分かり合う心。対立する思想。
垣間見る差別と暴力。
欲を喰っては欲を肥やし、吐き出すのは更なる支配と隷属。
正義と悪の振り子は折れ、困惑の中で無力を嘆いた。
支えは仲間とあの手のぬくもり。
破壊と創造。正悪は信念で呑み込みひたすら進む。
雨ざらしの心に傘を差し出し、踏みつけた地面に種を蒔く。
どんなに摘まれても再び花を咲かせる強い種を。
笑顔だけが全ての指標だ。
嘘で悪者を演じる。
求めたのは新たな時間。
果たせていない約束が今もこの身をこの世界に縛る。
体を切り刻み。
入れ替え。付け替え。
劣化したものを新しいものへ。
それでも限界はやってくる。
眼前の勇者たちの罵りも餌に過ぎない。
必要なのは新しい器と膨大な力。
そして神の欠片。
冷たい夜風が孤独感を撫でる。
眼下に広がる都市の煌びやかな夜景が達成感を僅かに満たす。
戦いの行方は悪魔の分身で事足りる戦況。
全ては思惑通り。
だった。
最後に失敗したのはいつだったか。
絶対的な力の渦に全てを搔き消された。
唐突に現れた得体の知れない存在は敵か味方か。
与えられたのは想いの結晶。
謝罪。称賛。怒り。感謝。労い。
走馬灯の中で暖かな光が心を包む。
それでも手放せない心残り。
返答は一つ。
(信じろ)
いつの間にか全てを背負っているつもりでいた。
人一人に抱えられるものなんてたかが知れているのに。
肥大し過ぎた自信と責任感。
託されることはあっても託したことはなかった。
ならば最後くらいは信じて終わろう。
世界は自由だ。




