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方向音痴

2日連続予告無しで休載してしまい申し訳ありません。

今回のは少し長めの話となっていますが見てくださったら幸いです。

待ちに待った放課後が来た…!


みんなはオリエンテーションだけなのは楽だと言っていたが、ひたすら話を聞くだけの時間は動くのが好きなオレにとっては地獄のような時間だった。


「アキちゃん、一緒に帰ろう!」


「へーい」


すると優木チャンは教室を見渡した。


誰か探してるのか?


「あっ、いたいた! 美濃さ〜ん」


優木チャンは大きく手を振りながら美濃の名前を呼んだ。

突然名前を呼ばれた美濃は驚いたのか持っていたカバンを落とした。


「え?! 私ですか?」


優木チャンは美濃の近くに小走りで向かった。


「一緒に帰ろうと思ったんだけど美濃さん何通?」


「私、家が近いので自転車通ですよ?」


すると優木チャンの頭は犬のようにシュンとなった。


「そっか、じゃあ一緒にに帰れないのか…残念」


美濃は一瞬だけ落ち込んだ顔をしたが、直ぐにニヤリと笑った。


「お誘いありがとうございます! 私は幸せ者ですね〜!! 帰りはお二人の時間を楽しんでください。」


そう言いながら美濃は体をくねくねとさせながら笑っている。


キモイぞ…


オレたちは美濃と別れたあと学校を出ていった。


駅に向かおうとしたら、優木チャンはオレの背中をポンっと叩いた。


「ねぇアキちゃん、お腹空かない?」


「流石にまだ空いてねぇよ…」


「そっか、じゃあカフェよらない?」


「話聞いてたァ?」


優木チャンはオレの言葉はガン無視でどこいこうかな〜とボソボソ言っている。

てか、昼休みもお菓子いっぱい食べてなかったか?


「近くの美味しそうなカフェ見つけたから行かない? ダメかな…」


こんなに可愛い子が上目遣いで頼んだら大体の人はいいって言うだろうな。

だって可愛いから仕方ない。そう、仕方ないんだ。


「仕方ねぇな… 暇だし別にいいけどォ」


「やったぁ! ありがとう」


優木チャンはそう言いながら笑うと、オレの右手をギュッと握った。

オレが突然のことに驚いている間に優木チャンはオレの手を引っ張って前に進んだ。


「じゃあ、こっちの方にカフェあるからついてきて!」


やばい、これはヤバイ


オレは、顔の温度がドンドン上がっていくのを感じた。

もし、この顔を優木チャンに見られてたらどうしようか、手汗はかいていないかと、色んなことを考えてしまい自分がどの道を歩いているのかも考える余裕がなかった。

そんな中、優木チャンはドンドン前に進んでいるが、オレは必死に自分を落ち着かせようとするので精一杯である。


大丈夫だ、手を繋ぐことくらい小さい時から何回もやっているじゃないか。

ましてや女同士、そんな恥ずかしがることじゃないだろ…!

優木チャンだってほら、何も気にせず歩いているじゃないか、オレは意識しすぎなんだよ、友達なら普通だ。


手から伝わる優木チャンの体温と小さくて柔らかい手の感触に動揺せずにはいられなかった。


すると突然優木チャンは足を止めた。


「えっと、ここどこだろ…?」


「は?」


オレは周りを見渡したが見知らぬ道だった。

というか廃墟だらけの不気味な場所で、さっきまでいた煌びやかな街の風景は無かった。

オレは優木チャンの方をじっとみた。

すると優木チャンは明後日の方向を向いて冷や汗流した。


「えっと…迷っちゃったかな?」


そう言いながら優木チャンは「てへっ」と舌をだした。


可愛っ…じゃなくて!


「オイ! どうすんだよ、来た道覚えてないわけ?」


「ごめん! 全く覚えてない!! おっかしいなぁ…」


おかしいのは優木チャンじゃね?というツッコミは出さないでおいた。


「マップアプリは?」


すると優木チャンは申し訳なさそうにスマホの画面を見せた。

画面には0%と表示がされていた。


「しゃーないな、オレのスマホは…」


オレは仕方なく、制服のポケットからスマホをだした。

今日は殆どスマホを使っていなかったし充電はたっぷりあるはずだ。

オレは、電源を切っていたスマホを起動させた。


「あれ? 圏外になってる?!」


「大丈夫、落ち着いて」


優木チャンは慌ててるオレの肩に、そっと手を置いてキメ顔をした。


「なんかキメ顔してるとこ悪いけどこの状況は優木チャンのせいだからな」


「大丈夫だから! 私迷子になってもちゃんと家に帰れるって特技があるんだから」


優木チャンはドヤ顔をしているがそもそもその特技、優木チャンが迷子になること前提じゃね?


「優木チャンもしかして方向音痴?」


「ちっ違うよ! 迷子になることが多いだけだし」


「それを方向音痴って言うんだよ!」


うぐっとダメージをおった優木チャンは何とか話題を変えたいのか「えっと、その」と言いながらあたふたしている。


「あっ! アキちゃんは元来た道覚えてないの?」


「前見てねぇから覚えてねぇよ」


手を繋いでることに緊張してそれどころじゃなかったとはいえねェ…


「そっか、じゃあもう私の特技をみせるしかないなぁ、アキちゃん私についてきな!」


優木チャンは勘に任せて前へ前へ進んで行った。


「めっちゃ不安なんだけど…」





30分くらいは歩いただろうか、まだ外は明るいが今日中に駅まで着くのか不安でしかない。

明らかに人が通る場所じゃないようなところばかり通るものだからオレはどんどん不安が大きくなっていくばかりだった。


「ここ通れば着く気がする! いいや、着くよ。私の勘が言ってる」


信用ならない勘だな…

オレはそう思いつつも優木チャンが指で指した方向をみた。

そこには建物と建物の間で、人が1人ギリ通れそうな隙間だった。


「もしかしてここ通るの?」


「もちろん!」


「マジかよォ…」


だが、道がわからないんじゃどうしようもない。

優木チャンの勘を信じてここを通るしかなさそうだなァ…


オレは意を決してその狭い隙間に入っていった。

暗くてよく見えないし、狭くてカニ歩きをしないと進めない上に、頭を下げることも出来ないから足元も見れない。

オレは壁に手を当てながら慎重に進んだ。


ふと、うしろを見たら優木チャンは隙間の前で止まっていた。


「優木チャン? 早くきなよ、何してんのォ?」


「あっごめん、この隙間ギリギリ通れなくて…」


「はァ?!」


オレは一旦優木チャンのところに戻った。


「なんでだよ、俺が入ったんだし行けるだろ。ビビってんのか?」


「だから入らなかったの!」


そう言った優木チャンは、涙目になりながら隙間に入ろうとした。

だか、優木チャンの豊満な胸がつっかえて隙間に入らなかったのだ。


「私、やっぱダイエットしないといけないな…」


「いやいや、それはその胸のせいだろ! 太ってるとかじゃなくてさ!!」


「そっか胸のせいか… なら潰せば行けるかも!」


「いやどうやって潰すんだよ…」


オレたちは学校帰りだ、胸を潰すものなんてもっているわけがない。


「アキちゃんってスポブラでしょ?」


突然の意味不明な質問にオレは驚いてつい「はァ?!」と叫んだ。


「そうだけどなんで知ってるんだよ…」


「だって透けてるから…」


そう言いながらオレの胸元を指さした。

よく見るとうっすらとオレの着用しているスポブラが見えた。


「ホントだ…やっぱシャツ1枚じゃ透けるよなァ」


「アキちゃん、もっと恥じらいとか持とうよ…」


流石にこのくらいでは恥じることは無い。

それにこれが見えたところで興奮するやつはいないことは承知しているからな。


「そんなことより、オレがスポブラだからなんなわけェ?」


すると優木チャンは顔を赤くして困ったような顔をした。


「えっと、無理にとは言わないけど貸してくれないかな?」


全く予想していなかった言葉が返されてオレは目を見開いた。


「なんでだよ?! 大体サイズ全然違うじゃんか!」


「だからだよ! スポブラって胸潰せるし、サイズが小さければもっと潰せるかなって思って…」


あ、なるほどね…オレは胸はあまりないけど、ガタイがいいから胸がデカイ優木チャンでも何とか入りそうだしな。


ん? でも待てよ…


「ここで脱げってことか?」


「当たり前でしょ?」


「いやここ外! オレが脱いだやつ着るってことは優木チャンも脱ぐんだぞ?」


「大丈夫だよ〜、どうせ誰も通らないし」


「そういう問題じゃなくない?」


この子には羞恥心が無いのが? 流石のオレでも外で裸になるのは常識的に問題があると思う。


「そんなこと言ってる余裕無いでしょ! 早くここ通って帰らなきゃ」


「そもそも道を間違えたおバカチャンは誰だよ…まずここ通れば帰れるかどうかさえわかんねぇじゃんか!」


「ごめん… でも絶対駅に着くから!」


何がそんなに優木チャンの自信を持たせるかは分からないが、もうどうでもよくなってきた。


オレはネクタイを外して、シャツのボタンを1つずつ外した。

優木チャンはその様子をジーっと見てい

る。


「おい、あんまこっちみんなよォ...」


「女同士なのに〜、アキちゃん照れ屋さんだね。下着が透けてるのには照れなかったのに変なの」


「うるせェ! ひっぱたくぞ!!」


「ごめんごめん! 」


誰だって脱いでるとこ見られたら恥ずかしいだろ…


オレは悲しいことに、少ししか無い胸を手で隠しながらスポブラを脱いだ。


「ホラ、さっさとつけろ」


「ありがとう」


オレのブラを受け取った優木チャンは愛らしい笑顔でお礼を言った。


なんかもう、この笑顔だけで何でも許せちゃうと思ってしまうオレは重症だな。


あ、そういえば


「ねぇ、優木チャンがオレの下着着るとして、オレは何着りゃいいんだ?」


「え? 私のを貸すよ」


「いやガッバガバになるだろ!」


さも当たり前のように優木チャンは言ったが、どう考えてもサイズが違すぎる。


優木チャンの下着を着るのは避けたいため、カバンに何が良さげなものは無いかと漁った。


お、いいもんあったじゃねーか!


オレは、カバンの中からジャージをだした。

ジャージならブカブカだしノーブラでも目立たない。

今日、体育があったおかげで助かった。

オレはジャージを着て優木チャンに「コレでいいから下着は借りねーよ」と言った。


それを見て安心した優木ちゃんはバックの中にマフラーを入れたあと、服を脱ぎ始めた。

ブレザーとセーターを脱いで、シャツだけになった優木チャンの姿を初めて見たが、ブレザーとセーターで少し目立たなくなってしまっていた豊満な胸の形がよく見えるようになった。


ほんとに高校生かと疑いたくなるくらいの大きな胸に、色気たっぷりのぷっくりとした唇にオレの目は釘ずけになった。


あれだな、中身は天然なのに見た目はエロいのって、いいな…


すると、見られていることに気づいた優木チャンは『?』マークを頭に浮かべてオレを見た。


「どうしたの?」


「ナッ、ナンデモネェ…」


なにガン見てんだオレェ!! 友達をそういう目で見るのは良くないって何度も言ってるだろ!


オレはこれ以上変なことを考えないように目を逸らした。


「アキちゃん…もしかしたら下着伸ばしちゃかもしれない…」


「あー、全然いいよ。それ結構前から使ってる古いヤツだし、破いても大丈夫」


「流石に悪いよ! その場合弁償しなきゃ」


「いいって、そもそもまだ着てないだろ? 早く着ねぇと風邪ひくぞ」


「わかった…で、なんで後ろ向きながら話してるの?」


オレは優木チャンの下着姿を見ないように首を後ろに向けていた。


「べっつにィ? そういう気分なだけだけど」


苦しい言い訳だったがそれ以外何も思いつかなかった。

幸い天然な優木チャンは「そうなんだ」と言って信じてくれた。


「着替え終わったよ〜」


優木チャンを見ると胸が先程より小さくなっていた。

ちゃんと潰せたようで良かった。


「コレでこの隙間通れそうだな、日が暮れる前にさっさと行くぞ」


オレが先に建物の隙間に入った。

優木チャンはギリギリではあるが胸を潰したおかげでつっかえることなく隙間に入ることができた。


「やった! これで帰れるね」


「ここ抜ければ帰れる保証なんてないけどな…」


慎重に隙間の奥の光を頼りにオレたちは進んだ。

1分もしないうちに隙間を抜け出すことが出来た。


「はァ、なんか狭いとこだと息苦しいわ… 開放感やべぇ」


すると、うしろにいた優木チャンも隙間から出てきた。


「やっとだ! なんかすごい達成感」


辺りを見渡すとさっきまでいた不気味な空間とは違い、よく見知った駅がそこにはあった。


「マジかよ、ほんとに優木チャンの勘は当たるんだな」


「だから言ったでしょ? 迷子になっても帰れるって」


優木チャンは誇ったような顔をしているが、そもそも迷子にならないで欲しいと思った。


「時間もやべぇし、悪いけどカフェはまた今度な」


「ううん、私がそもそも迷子になったのが悪いし… ごめんね」


急にしおらしくなった優木チャンに戸惑ったが、オレは無意識に優木チャンの頭を撫でた。


「気にすんなって、冒険みたいでまあまあ楽しい時間だったぞ」


オレはそう言って笑った。


「アキちゃん…!」


優木チャンはオレに勢い良く抱きついた。


「ありがとう!! アキちゃんのそういう優しいところ私大好き」


「だっ…そういうこと軽々しくいうなっての!」


「女同士だしいいでしょ! それに本当の事だし」


そうだった…女同士ならこれが普通か…なんか複雑だ。


「わかったから離れろ、電車そろそろだから急ぐぞ」


オレが駅の方まで走ろうとした瞬間、優木チャンが「あっ」と声をだした。


「どうした?」


「服どうしよう…」


「あ…」


完全に忘れてたわ…


仕方ないので着替えるのは後にしてオレたちはそのまま電車に乗ることにした。

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