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変人登場

学校についたオレたちは校門にいる先生に挨拶をして教室に向かった。

教室は学年棟で分けられていて、オレ達電気科の教室は1年棟の2階にある。


「2階なのちょっと面倒だよね〜」


「だよなァ、遅刻した時間に合わなさそう」


「まず遅刻しないようにしてよ〜? 今日も電車ギリギリだったでしょ」


「今日はたまたまだよォ… 色々あってな」


お互いまだ知り合ったばかりだからか世間話程度の話しかできなくてぎこちない。

そのうち慣れて今より仲良くなれるだろう。

勿論友達としてだ、間違っても恋はしてはいけない。


そうこう考えていたら教室に着いた。

オレが教室のドアを開けた途端、既に教室にいる人達が一斉にこっちを見てざわつき始めた。


「はァ…」


オレはため息をつきながら自分の席に向かった。

そりゃそうだよな〜、昨日あんなに悪目立ちしてれば注目も浴びるわ。

てか、優木チャンはオレと一緒でいいのか?

もっと他の女子とも仲良くした方がいい気がする。


「ねぇ、優木チャンは他の子と友達になろうとしないわけェ?」


そう質問すると優木チャンは困ったような顔をした。


「うーん… 他の子はなんか怖くて話しかけられなくてね〜」


「イヤイヤ…自分で言うのは悲しいけど、どう考えてもオレが1番怖いだろ」


高身長で目つきも悪いからまず見た目で話しかけずらいと思う。

その上、喧嘩が強いって噂が流れてるだけで普通話しかけには来ないだろ。


「何言ってるの! アキちゃんは怖くないよ、だってなんというか、こう優しいオーラがでてる!」


優木チャンは身振り手振りしながら必死に伝えようとしている。

なんか可愛い…


「優しいオーラってなんだよ…」


「優しいオーラは優しいオーラだよ! とにかくアキちゃんは怖くなかったってこと」


「あっそォ…」


優しいとか初めて言われた。

正直ニヤけそうなくらい嬉しいが我慢した。


でも、やっぱ他の人とも仲良くなっておくべきだよなぁ…


オレは、クラスにいるヤツらの中で優木チャンと仲良くできそうな人はいないか見渡した。

すると前の席にいた青髪おさげの女子がこちらに向かってきた。


「あの澤谷さん、ちょっといい?」


「えッ、なに?」


「昨日の昼休みのことの話なんですけど…」


「あ〜… 昨日空気悪くしちゃってごめんねェ」


「違うんです!その、すっごくカッコよかったです!!」


……………はい?


するとおさげの女子はオレの机にドンッと両手を当てた。


「なんというか、まるで美灯那君みたいでカッコよかったです!」


な、なんだこいつ…


「いや、誰だよ美灯那クンって」


「ああ、すみません。美灯那くんって言うのは私の好きなアニメのキャラでして〜…と言っても分かりませんよね! 突然すみません」


「イヤいいけどさ、オレがその美灯那クンみたいだからなんなの?」


おさげの女子は「あ、すみません…」と言いながら突然土下座をした。


「私の名前は美濃時羽と言います! あの宜しければ私と友達になってください!!」


「はァァ?!」


「お願いします! 何でもするんで」


そう言いながら美濃時羽は地面に顔をガンガンぶつけた。


ヤバいやつじゃんかよォ…


「わかったからやめろ! 顔上げてくれ」


すると美濃時羽は赤く腫れたデコを輝かせながら顔を上げた。


「いいんですか?! 私なんかが友達に!」


「いいって言ってんだろ!」


クラスメイトからの視線が痛い、それにこのまま放置してたらクラスの奴らからオレが今よりもやべぇやつって思われそうだし…


「ありがとうございます! 何かあった時には私に何なりとお申し付けください!! 美濃時羽、この身が朽ち果てるまで澤谷さんに尽くしますので!」


「重いわ! やめろよ、もっと普通に接しろ」


「これが普通です!」



もうダメだこいつ、完全に変人だ。

知り合ったばかりだが話通じないことはよく分かった。


すると、隣の席にいる優木チャンが機嫌悪そうに口を膨らませてこっちを見ていた。


「優木チャン、どうしたのォ?」


すると優木チャンは席を立って俺の方に近づいてきた。


「アッ、アキちゃんと1番仲良しなのは私だから!!」


そう言いながら優木チャンはオレに抱きついてきた。


「は、はァ?!」


突然のことに驚いたオレは、今の状況に頭が追いつかずにいた。

すると、また美濃時羽は頭を下げた。


「す、すみません!! お2人の仲をお邪魔する気はないんです!」


そう言いながらオレ達から素早く離れていった。


「あ、ごめんなさい! 別にアキちゃんが他の子と仲良くしようと私には関係ないのに… 今のは忘れて!」


「いえ、全然いいですよ。むしろ私が悪いんで… 実は優木さんとも仲良く出来たらいいな〜なんて思ったんですけど邪魔者は去った方がいいですよね…」


アハハーと作り笑いのような笑顔を浮かべて、美濃時羽は教室から出て行こうとした時だった。


「待って! 私と仲良くしたいって本当?」


優木チャンは聞いたことがないくらい大きな声で叫んだ。


「そうですけど…」


「あの、私こんなんだけど…できれば美濃さんと仲良くしたい!」


「えぇ?! いっ、いいんですか…?」


「悪い人じゃなさそうだし、それにさっきのお詫びもしたいし… その、私と友達になってくれませんか?」


優木チャンは震えながらそう言った。


すると美濃時羽は突然真顔になった。


「え、何この可愛い生物〜 可愛すぎる、撫でていいですか?」


なッ…?!


「お前ェ、優木チャン撫でたら承知しねぇぞ?」


オレは反射的に美濃に睨みつけた。


「怖っ! すみません撫でませんから!! そんな怒んないでくださいよ!!」


「えっと…」


優木チャンはオロオロしながらオレたちを交互にみている。


「あ、すみません! 優木さんが可愛すぎてつい… その、こちらこそ友達になってくれませんか?」


美濃時羽は照れくさそうにそう言った。

すると優木チャンは満面の笑みを浮かべた。


「うん!」


わあ、可愛い… でもこの笑顔をオレじゃないやつに向けてるのはなんか腹立つゥ!


「あの、澤谷さん?」


「んだよ」


「優木さんめっちゃ可愛いですね」


「当たり前だろ」


「いいな、澤谷さんは優木さんにあんなに好かれてて…」


そう言われたオレは多分人生で1番のドヤ顔をした。


「だろォ」


「うわぁ、悪い顔… 不気味ですよ〜 まあその顔もまた良きですけど!」


美濃時羽はそう言いながら手をグットの形にした。


「お前、キモイな」


「酷くないですか?!」



こうして優木チャンにオレ以外の友達を作ることに成功した。

変人なのは不安だが…


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