デカい
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入学してから3日目の朝、オレは息を荒くしながら爆速で駅まで走っていた。
「間に合った〜!」
母さんに忘れ物ないかと聞かれていなければ忘れ物をするところだった。
荒くなった息を整えながらスマホで時間を確認した。
あと1、2分もすれば電車が来る時間だなと考えながらスマホをポケットにしまった。
「ばあっ!」
「うおっ?!」
突然、誰かに後ろから抱きつかれた。
背中に当たっている柔らかい感触にこの甘い匂いは…
オレは抱きついてきた人の顔を確認するため後ろを向いた。
後ろには予想通りふわふわした茶髪の美少女がいた。
「おはよう〜、びっくりした?」
優木チャンはにししと悪戯っ子のように笑っていた。
やっぱ可愛いな…
「突然抱きついてくるなよ…ガチびびったわ」
「ごめんごめん! アキちゃんがいたから嬉しくて」
あー、またそういうことを言う、この天然チャンがァ!
オレの背後にいた優木チャンはササッとオレの横に並んだ。
「うぅ、寒い〜」
「いや流石に寒くないだろ…てか、昨日も思ってたんだけどさ、優木チャンはなんでそんなに厚着なの? もう3月だよ」
オレはシャツの上からセーターを着ているだけだが、優木チャンはブレザーまで着ていて、スカートの下にはタイツまで履いていた。
まあ、まだそこまでは分かるのだが何故かマフラーまでつけている。
確かにまだ風は冷たいし厚着の人はチラホラいるものの流石にマフラーをつけてる人はいなかった。
「いやぁ、私寒がりでさ〜 結構着込んでないと耐えられなくて…」
「えェ… 大袈裟じゃね?」
「大袈裟じゃないよ! 逆にアキちゃんは薄着過ぎない? せめてブレザーは着ようよ、風邪ひくよ?」
「大丈夫、オレ暑がりだし。」
「そうなんだ…なんか私達真逆だねぇ」
「そうだなァ」
まあ、自分と似てる奴がいたら普通にやだけど…
そうこう話してるうちに電車が来た。
「ほら、早く乗るぞ」
「は〜い」
電車に乗ったオレたちは席を探したが通勤ラッシュで電車は混んでいて座る席がなかった。
「仕方ねぇな、立つしかないか」
「だねぇ」
近くにあった吊り革を掴んだ途端、オレたちの後ろに立っている他校の女子高校生らしき人達がこっちを見たと思うと、コソコソ話し始めた。
「ねぇねぇ、前の人たちデカくない?」
「胸が?」
「違うよ、確かに片方の胸はデカイけど身長の話だよ」
「ほんとだぁ、どっちも大きい〜、 何センチだろ?」
もしかしなくてもオレらの話だよな? おい、なんだよ片方はデカいって! 確かにオレはあまりでかくねぇけどさ…
まあ、それはいいとして、オレは女なのに身長が結構デカい、178cmもある。
だからか優木チャンの身長が大きく見えなかったのだが、よくよく見てみると確かに普通の女の子よりデカい。
「優木チャンって身長何センチくらいあんの?」
「身長? えっとねぇ、確か168cm? デカい方だと思うよ〜」
「へぇ〜… まっ、オレのがデカいけどな」
よし、身長は負けていない!多分これから越されることも無いだろう。
「アキちゃん、身長大きいもんね〜、なんだか私が小さくなった気分だよ。私、いっぱい食べてはいるんだけど殆ど脂肪に変わっちゃうからさぁ… 気をつけないと!」
「とか言いつつデケェパン食うなよォ… 朝ごはん食ってなかったわけ?」
優木チャンはいつの間にかカバンからでっかいパンをだしてモグモグ食べていた。
「食べたけどお腹すいちゃってさ〜」
「いや、腹減るの早すぎるだろっ!」
「私、人の3倍くらい食べないとダメみたいなんだよねぇ」
あぁ、だからどこそこデカイんだな…謎が解けたわ。
ただ、明らかに1部に栄養が行き過ぎているだろ…何処とは言わんが。
「そこまで太ってる訳じゃねーし気にしなくていいんじゃねぇの?」
「いやいや、気になるよ…アキちゃんや他のみんなは細いし羨ましいなぁ」
「それオレ以外の人には言うなよ? あとオレは筋肉がちゃんとあるからァ、その辺の棒みたいな腕したヤツと一緒にすんな」
そう言いながらオレはドヤ顔で腕をまくって筋肉を見せた。
「わあ〜ほんとだぁムキムキ!」
優木チャンはそう言いながらオレの腕をペタペタ触った。
筋肉があることで大して褒められたりしたことないけど鍛えてて良かったァ…!