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昼休み

「気をつけ、令! ありがとうごさいましたァ!」


高校生活初めての昼休み前だからか、テンションの高い男子生徒はデカい声で号令をした。


単純だなァ…


昼休みになったし弁当食べるか。

とりあえず、弁当を誰かと食べるのは避けたい。

誰もいなさそうなところを探しにいこうとした時、肩をトンッと優しく叩かれた。


「あの、澤谷さん…良ければ一緒にお昼食べない?」


優木さんは不安そうな顔で話しかけてきた。


「えっとォ…」


どうしよう、今日弁当を一緒に食べちまったら、このまま毎日食べるノリになるんじゃねーか? それじゃあ友達みたいだ。

優木さんには悪いけどここは断ろう。


「1人で食べるから他の奴と食えばァ?」


ちょっと睨みながら優木さんを見て言えば、優木さんは持っていた弁当箱で顔を隠した。


「そ、だよね。ごめん! 突然誘っちゃって…」


優木さんの声は震えている。

やばい、もしかして泣かせちゃった?


マジかよ…泣かせるつもりじゃ無かったのに。

大体可愛いんだから他の女子を誘えばいいだろ。

なんでオレなんだよ…


確かにオレは、女の子と関わるのは辞めようと思っていたが、だからといって女の子を泣かせてしまうのは流石に人として良くないよな。


これは友達としてじゃない、あくまでクラスメイトとしてだ。


「ごめん…やっぱ一緒に食べない?」


「え?! あっ、ごめんなさい…無理に一緒に食べなくてもいいんだよ? 突然キモイよね」


涙を必死に隠しながら優木さんは早口で言った。


「いやっ、その、違くて…こっちこそごめん。あんま人と関わるの得意じゃなくて、別に優木さんが嫌いなわけじゃないから…」


「ほんとに?」


「ホントだよ、だから一緒に弁当食べない?」


すると優木さんはパァと嬉しそうに顔を上げた。


「あっ、ありがとう! 嬉しい!!」


やっぱ可愛い子だなァ…

大人っぽい雰囲気なのに、中身は子供かってくらい純粋で可愛い。

すると、優木さんは嬉しそうにニコニコしながらオレの机に優木さんの机をくっつけてきた。


俺も弁当を出そう。


先に「いただきます」と言って弁当箱を開けていた優木さんの方を見た。


「へぇ美味しそうだな、優木さんの弁当」


「ふふっ、ありがとう! 私料理作るの好きなんだ〜」


「へ〜、自分で作ったのか、すげぇな。オレは完全に親に任せてるわァ…偉いな」


「やったぁ、澤谷さんに褒められた〜」


あらヤダこの子可愛い。

てか女の子とこういう会話をするのは久しぶりだな、やっぱ楽しい。

それに優木さん料理もできるとか凄いな、これが女子力、オレに欠けているものだな。


そんなことを考えながら、弁当を黙々と食べていると周りからの視線を感じた。

どこにでも居そうな男共が「優木さん? って子可愛くない?」「分かる、ちょー可愛い。彼氏いんのかな」とコソコソと話して始めていた。


わァ、優木さん流石だな視線を集めてる。

まあこんだけ可愛けりゃ男にモテるよなァ…


「あの、澤谷さん?私の顔になにか着ついてるのかな?」


「エッ?」


「さっきから私の顔をずっと見てるから、なにかついてるのかなって思って…」


あ、つい見すぎてしまっていた。


「すまん、可愛い顔だなって思ってさ」


なんかオレ、今チャラい男みたいなこと言ってない?


すると、優木さんは当然茹でタコのように顔を真っ赤にさせた。


「そんな、可愛いだなんて…澤谷さんみたいなカッコよくて素敵な人に言われると嬉しい、な」


照れくさそうに両手を顔に当てながら、優木さんはオレまで褒めてきた。


なんだこの天然チャン…それは反則だろ、可愛いすぎんだよ!

落ち着け自分、これは普通の女の子の会話だ。勘違いするな。


「オレをカッコイイとか趣味悪いんじゃね〜の?」


「そんなことないよ! 澤谷さんのクールで誰とも群れないとことか、言いたいことはズバッて言うとことかカッコイイよ!」


「はァァ?」


何だこの子、やっぱ変な子じゃねーか…

普通はみんな、女のくせに口が悪いオレを怖がったり注意してくるのに。

少し顔の体温が上がる気がしたが気の所為だろう。


「澤谷さん、顔赤い…」


「るっせ!」


ニヤニヤしながらこっち見るな、恥ずかしなァ…


そうこうしていると、さっきからコソコソしながら、こっちをチラチラ見てた男共がまた優木さんの話題について話していた。


「何カップなんだろうな、あの胸」

「デケェよな、Fはあるんじゃね?」

「ぜってぇ色んな男と遊んでるよ、あのデカさは」

「俺も頼めばヤらせて貰えるかな?」


ケラケラと下品な会話を始めた男共に周りの女子はみんなドン引きしていた。

優木さんの方を見ると、明るかったはずの顔が暗い顔になっていた。

「おい、大丈夫か?」


「あはは…早く食べよう? このくらいいつもの事だし平気だよ」


泣いてはいなかったものの、さっきまで血色の良かった顔が青くなっていて手は震えていた。

それを見て頭に血が上ったオレは、自然と声を張り上げていた。


「オイ! テメェらァ!! 飯食ってる時にそんな話すんのよ、飯が不味くなるじゃねーかァ!」


さっきまで騒がしかった教室がシーンとなり、オレの声が響いた。

突然のことに驚いた男共は顔を青くして「ヒッ、スンマセン!!」と言って黙り込んだ。


すると、当たり前だが当然怒鳴ったオレにドン引きしたクラスメイト達は「うわぁ、こっわ…」「逆に雰囲気悪くなるよ」「やば、アイツら死ぬんじゃね?」とコソコソ話しだした。


流石にこれは優木さんも引いただろう。

もう話しかけてこないかもしれないが元から仲良くする予定は無かったんだし別にどうでもいい。

オレはチクリと痛む心臓に気づかないフリをした。


すると俯いていた優木さんは顔を上げた。


「あっ、ありがと!! 澤谷さん!」


ハ………?


「私こんな見た目だから、よくこうやってコソコソ言われることあるし、勘違いされるけど怒ってくれて嬉しかった…! ありがとう。」


泣きそうな顔をしながら、優木さんは俺の手を両手で掴みながらお礼を言った。


ホントこの子は…


小刻みに震えている小さな優木さんの手を、オレは強く握り返した。


「優木さんは、確かに可愛いけどそんなことするような子じゃないって分かってるよ。怒ったのはオレがイラついただけだからお礼はいらねェよ」


すると、優木さんはうるうるしていたはずの目を、キラキラと輝かせた。


「やっぱ澤谷さんカッコイイ…」


「はァ?!」



「あっ、もうお昼休み終わっちゃう!早く食べなきゃ!」


そう言って沢山のご飯を口に詰めた優木さんはリスのように可愛かった。

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