隣の席の子
成長するにつれて、女の子と関わるのがだんだん辛くなってしまったオレは女の子と関わらないようにするために中学生活を1人ぼっちで過ごした。
女の子は同性なら平気で抱きついてくる。
それが恋愛的感情ではなく、あくまで友達としてオレを信頼して抱きついてきているのだ。
抱きつかれた時に当たる柔らかい胸にフワッと香る甘い香りに日々、耐えるのは辛かった。
信頼してくれている女の子達を性的な見てしまう自分が嫌になってしまう。
そんな辛い思いをするならそもそも関わらない方がいいと思った、1人になるしか無いのだ。
高校は女子が少ない工業高校に入学した。
クラスに30人中オレをいれて6人しか女の子はいないし、これで女の子との関わりが少なくなるだろう。
それに勉強は苦手だし丁度いい。
そんなことを考えていたら高校生活2日目に入っていた。
現状はどうなったかというと、入学式に話しかけて来た人は居たもののオレが中学時代に少し揉めたとき柔道部男子を拳1つで倒した事が噂になっていたらしく、不良だと勘違いされたみたいで近づく人は居なくなった。
好都合だな。喧嘩強くて良かったと初めて思ったぞ。
これで平和な高校生活が過ごせる!
そんなことを考えながら窓を見ていたら、横から突然甘い香りがした。
「あのぉ、澤谷さん? 私は隣の席の優木南乃葉。よろしくね」
ニコニコしながら話しかけて来た隣の席の優木さんは、セーターで半分隠れた手をフリフリと振りながら自己紹介をした。
うわぁ、可愛い。めっちゃタイプだわ……いやいやいや、ニヤつくな、優しく接してはいけない…!
「よろしくゥ…」
オレは優木さんを軽く睨んで返事をした。
多分これで相手は機嫌が悪そうだと思い込むだろう。
大抵この態度で応答すれば「怖っ」って言って去っていく。
この子もこれから話しかけてくることはなくなるだろう。
すると優木さんはパァァと顔を輝かせた。
…え?なんでェ?
「なに、笑ってんだよ…」
「あ、ごめんね! 澤谷さんって無口って聞いてたから話しかけても応答してくれると思わなくって、つい、ふふっ嬉しいな」
うわあ、何この子めっちゃ可愛い。
うわ、てかよく見るとめっちゃ美人。
大きくてくりくりとしたタレ目は可愛らしいが、つい触りたくなるようなふわふわした長い茶髪に、ぷっくりとした唇は大人っぽさを感じさせた。
高校生とは思えないくらい色気のある子だな…
オレの髪もロングだが黒髪のストレートだから全く雰囲気が違う。
そもそも俺の目は細くて大きくないから当たり前だけど。
オレは優木さんの体のほうに目をやった。
うわあ…胸すごいな、デッケェほんとに高校生か?
厚着だから分かりずらいけど、全体的にムチムチしててエロォ……っじゃなくて! おい、またそういう目で見る!
なに男子中学生みたいなこと考えてるんだ。
ほんとに懲りないなオレ…
頭を抱えていたら澤谷さんが「どうしたの?」と小首をかしげて心配そうに見てきた。
あぁ、可愛い…動き一つ一つが可愛いかよ。
アァァ! ダメだダメだ、オレは女オレは女オレは女。
「なんっ、でも、ネェ…ヨ!」
「そっか、なら良かったぁ」
あんま良い噂のないオレに話しかけてくるとかこの子天然チャンなんだろうな…
この子は要注意人物だ、気をつけないと。
「お前ら席に着け〜。工業は実習しかないとか勘違いして勉強サボっていいと思ってる奴ら、留年になるからな、1年間勉強頑張れよ〜」
担任がそう言うと「はーい」と元気いっぱいなクラスメイト達の声が重なった。
嘘だろ、高校では勉強するつもりはなかったのに…