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優木チャンからのキス


「澤谷〜外でサッカーしようぜ」


「いや俺達と野球しようよ!」


「いや、俺と遊ぼうぜー!」


昼休みになって弁当を食べ終わった瞬間クラスの男子数人に声をかけられた。

昨日まで一切話しかけられることはなかったというのに今は色んな人に遊ぼうと誘われている。

何故そうなったかと言うと、それは体育の授業がきっかけだ。


オレがバスケで男子2人をボコボコにしたところを見て興味を持った男子が次々に挑んできたのだ。

しかもオレは全勝した。

その結果、女子なのにこんなに出来るなんてすげぇ!と思われたらしく男子懐かれたのだ。


「澤谷俺とサッカーするよな!」


名前は覚えてねぇけど運動部に入ってそうな男共が次々に話しかけてくる。


「悪いけどパス、お前らだけでしとけよ」


「「「そんな…!」」」


断られた男共はあからさまにショックを受けた顔をした。


「分かったらさっさと散れ!」


オレが軽く男共を睨んでやったらビクッと震えてオレの前から去っていった。

オレは短気だからこれ以上しつこかったら一発殴ってたかもしれない。

諦めがよくて助かった。


「アキちゃん、断ってよかったの?」


それを見ていた優木チャンは心配そうにオレの顔を見た。


「いいんだよ、流石に疲れたしな」


それに優木チャンと一緒にいる時間が減ってしまうから…なんて口が裂けても言えねぇけど。


「澤谷!!」


すると今度はキンキンするような高い声が聞こえてきた。


オレはわざとらしく、あれ〜? と言いながらキョロキョロと周りを見渡した。


「誰かに呼ばれた気がしたが気のせいか〜?」


「ここよ!! ふざけなでちょうだい!」


キンキンする声の持ち主はオレのスカートをツンツンと引っ張った。


「あー、ミニ子チャンじゃないか。小さくて気づかなかったわ」


「谷内よ!やない!! ミニ子じゃないんだから! それにそんな見えないくらいちっさくないわよ、わざとでしょ!」


谷内は足をドタバタさせながら顔を赤くして怒った。

子供か…


「そんなことより試合中だったことについて言いたいんだろ?」


「そっそうよ! なんで私との試合をすっぽかして男子とバスケしてたのよ!! 意味わかんない」


まあそうなるよな…


「悪かったよ、でもまあ勝負はまた別の何かで決めればいいだろ?」


まあ、オレが負けることはないと思うしな。


「確かにそうね。中途半端に終わったのは気に食わないけどそうしましょう! そうね、何で勝負しようかしら…」


谷内は頭を抑えながら必死に考えているが、オレはスポーツ全般得意だから負ける気がしない。

そんなことを考えていたら何かをひらめいたのか、谷内は「あっ」と言って手を叩いた。


「次の中間試験で総合点数の高い方が勝ちよ! それでいいわね」


なんだって?!

テストだと? オレは勉強は殆ど出来ない、勉強なんてしてこなかったから当たり前だが、人生でいい点数なんてとったことは1度なかった。

まあ、負けても罰ゲームがある訳じゃねーしどうでもいっか…

そんなことを呑気に考えていたら美濃が目を輝かせながらやってきた。


「勝負するんでしたら負けた方は罰ゲームをやるってことにすればいいんじゃないですか?」


「それいいわね!」


おい美濃余計なことを…!


するとずっとオレ達の話を聞いていた優木チャンが口を開いた。


「罰ゲームじゃ可哀想なんじゃないかな? 勝った方にご褒美とかの方が楽しめると思うよ?」


おお、優木チャンナイスアイディア!

谷内はうーんと考えるポーズをとった。


「確かにそうね、優木の言う通りだわ。もし負けたら嫌だもの」


谷内は優木チャンの意見に納得したみたいだ。

有難う優木チャン、マジ女神…


「優木チャンナイス」


オレは優木チャンにグッチョブと親指を立てた。


「えへへ〜」


するとそれを見ていた美濃はまた何かを思いついたのかニヤニヤとしている。

余計なことを言うんじゃないよな?


「あの、ご褒美は優木さんからのキスはどうですか?」


「え?!」


「はァ?!」


キスだと?!しかも優木チャンからの?何言ってんだこいつは!


オレはどういうことだと美濃に問い詰めた。


「おっ落ち着いてくださいよ!」


「美濃お前、優木チャンからのキスとかふざけてるのかァ?」


オレは美濃をギロリと睨んだ。


「ひえ、目が怖いですって! ふざけてないですよ〜! ただ、そうした方が澤谷さんも本気で勝負に挑みそうだなと思ったからですよ!! それに頬にキスですからね!」


なっ、こいつ…!


「別に優木チャンとキスなんてしたいとか思ってねぇからな!!」


オレは咄嗟に否定したが絶対顔赤くなってるよ…


「そっ、そうだよ! そんなの罰ゲームになっちゃうよ、アキちゃん嫌がってるしやめようよ…!」


すると優木チャンは涙目になった。

しまった…! これじゃあオレが嫌がっているみたいじゃないか。


「違うんだ優木チャン、嫌なんじゃなくて優木チャンがもし、オレに…その、きっキスをすることになったら嫌だろうなって思って、別に優木チャンからキスされるのは嫌じゃねーよ…?」


これじゃあ優木チャンからのキスが欲しいみたいに思われるんじゃ?

どうしよう、顔がどんどん熱くなっている気がする。

きっと今オレの顔は真っ赤だ。

すると優木チャンの顔もどんどん赤く染まっていった。


「わ、わたしもアキちゃんにキスするの嫌じゃないよ?」


オレは一瞬優木チャンの言葉が幻なんじゃないかと疑ったが、前には頬を赤らめている優木チャンがちゃんといる。

マジかよ…もしかしたら優木チャンオレの事…


「アキちゃんは私の大事な友達だからね!」


そう言って優木チャンはオレの手を取って笑った。

あ、そうだよな。うんオレ達友達!


そんな様子を見ていた美濃は満足そうにした。


「じゃあ決まりですね!」


「ちょっと待ってよ! 私に勝つメリットないじゃない!!」


谷内は自分のツインテールを引っ張りながら声を荒げた。

お前禿げるぞ?


「谷内さんがもし勝って優木さんからキスしてもらったら澤谷さんきっとめちゃくちゃ悔しがりますよ〜」


「なるほど! 悔しがる澤谷を見れるのならこれでいいわ!!」


よくねぇよ!! もしオレが負けたら優木チャンが谷内にキスすることになる。

それは絶対に避けなければ…これは友達として阻止するのは当然だ。

消して優木チャンが好きだからとかでは無い。

あくまで優木チャンを守るため、それだけだ。

谷内もオレも美濃に上手く収められている気がするのは気に食わないが…


にしても優木チャンからのキス…駄目だ。想像しただけでニヤけが。


「澤谷さん、嬉しそうな顔してますけど勉強得意なんですか?」


あ。


「無理だ出来ねぇわ!テストの点で勝負は無しきしろ!!」


「はぁ?! 何言ってるのよ、決まったんだから今更無かったことにはしないわよ? ちなみに私は中学で国語以外は赤点とったことないのよ!」


すごいドヤ顔してるけど赤点は取ったんだな…

でもオレは人のことを言えない。

なぜなら中学ではほぼ全教科赤点を取っていた。

今のままじゃ負け確定じゃねえか…!


「おい美濃! 勉強教えてくれ、お前頭いいだろ? 授業中眼鏡掛けてるし」


眼鏡掛けてる大体頭がいいはずだ。


「それはちょっと無理ですね。中学の時は歴史は満点だったんですけどあとは全部平均以下でした〜」


美濃はてへぺろとポーズとった。


「嘘だろメガネの癖に! あとてへぺろ似合わねぇ」


オレは地面に膝から崩れ落ちた。


「相変わらず酷いですね!あとその眼鏡=頭いいの考え方がもうバカなんですよ?」


希望を無くしたオレは美濃の声など聞こえていなかった。

すると優木チャンがオレの前にしゃがんだ。


「アキちゃん、私でよければ教えるよ?」


「え…いいのか?」


「私中学では平均以上取ってたし、ある程度は教えられると思うよ」


そう言ってニコッと笑っている優木チャンが今のオレには天使に見えた。

頭に天使の輪っかが見えるよ〜!


「有難う優木チャン!」


「じゃあ高得点目指して頑張ろう!!」


優木チャンからキスしてもらう為に優木チャンから勉強を教わるのはなんだかおかしい気がするが細かいことは気にしないでおこう。

こうしてオレと谷内の戦いがまた幕を開けたのだった。



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