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谷内と試合


試合が始まって早くも3分経過していた。

状況はかというと、0対3とオレのチームが圧勝している。

それもそうだ、美濃は運動が苦手だからと言って逃げずに敵をマークして頑張っているし、優木チャンは意外と運動神経がいいのか、足が速かった。

オレが敵からボールを取った後、優木チャンにパスを回したらすごいスピードでゴールまでドリブルして見事にシュートを決めた。

それにオレにボールが回ってこれば、身長が高いおかげで誰もオレからボールを取ることが出来ない。

優木チャンも身長高いし身長的に考えてもオレ達チームが圧倒的に有利だった。


「ちびチャン、諦めたらどうだ? オレ達には勝てねぇよ」


「ふんっ、調子に乗らないでくれる? 」


…っ?!


谷内は突然オレの方に凄い速さで走ってきてボールを取った。


やべェ、油断してた…!


そのまま谷内はゴールまで行ってシュートを決めた。


「見たか澤谷!! 低身長でもこのくらい出来るんだから!」


谷内はふんっと鼻を鳴らしてドヤ顔をしている。


「たかが1点入れただけで調子乗んなよ」


オレはボールを拾って優木チャンにパスしようとしたした。

すると、近くで男子2人がボールを投げて遊んでいた。

すると男子2人が持っていたボールが優木チャンに向かって勢いよく飛んできた。


ヤバい、このままだと優木チャンに…!


オレは考える間もなく優木チャンの方まで走った。


「危ないっ!!」


ガッっと鈍い音を立ててボールがオレの背中に勢いよく当たった。


「つッ…!」


「アキちゃん?!」


ヤバ…!


オレはそのままバランスを崩して優木チャンの方へ倒れた。


「アキちゃん?! ひゃっ!」


オレはそのまま倒れた。

だが、優木チャンを潰さないようにと咄嗟に自分の手で体を抑えたが、優木チャンも一緒に倒れてしまった。


「あっぶねェ...あっ優木チャンごめん! 倒しちまって、どっか痛くないか?」


「ううん...! 全然大丈夫、どこも痛くない」


「良かった…」


てかこの体制ヤバくないか?

今オレは優木チャンに覆い被さっている状態だが、これじゃあまるで押し倒しているみたいじゃないか…!


どどどどっどうしよう、優木チャン困り顔だよ! なんか興奮する……じゃなくて!!


どうしたらいいか分からずに固まっていたら優木チャンは口を開いた。


「私を助けてくれたんだよね? ありがとうアキちゃん」


そう言って優木チャンは頬を染めて笑った。

やっぱり優木チャンの笑顔は可愛い。

だか、今の笑顔はいつもの可愛らしい笑顔とは違い、どこか儚げな笑顔だった。

オレはなんだかその顔を見て恩愛の情にほだされた。

この子はオレが守らなくてはならない、そんな気がした。

それにしても…

優木チャンの顔と距離は近いし、優木チャンを押し倒したような状況になってるしでオレの心臓はバクバクなっていた。


「ごめん、退かねぇとな…」


オレがそのまま起き上がろうとした途端、優木チャンは体を起こしてオレに抱きついた。


「へ…?」


ちょ、えっ…なんだ?! 突然抱きついてくるなんて…


優木チャンはぎゅっと抱きつく力を強くした。


「ごめんね、アキちゃん。ボールがぶつかったよね? 凄い音したし痛いよね、ほんとにごめん私のせいで…」


優木チャンの声は震えていた。


「そんな心配しなくて大丈夫だぞ? ほらオレ結構頑丈だからさ」


「でも…」


オレは不安げな顔をする優木チャンをぎゅっと抱き締めた。


「何をそんなにビビってんのか知らねぇけどそんなに気にしなくていいんだぞ? そもそもボールが当たったのは事故で優木チャンのせいじゃない。だから謝らないで」


「本当に? 無理してない?」


「うん、本当だよ。それに優木チャンに怪我がなければそれでいい」


そう伝えたら優木チャンはオレの肩に顔を埋めた。


「やっぱりアキちゃんは優しいね、凄くあたたかい…」


優木チャンはオレを抱きしめる力を強くした。

そんな優木チャンが愛おしくてオレは頭を優しく撫でた。


「…あのぉ、お取り込み中ほんと申し訳ないんですけど、男子2人がずっとそこで土下座してますよ?」


「は?」


美濃が指さした方を見たら2人の男子生徒が土下座をしてプルプル震えていた。


「なんしてんだ、お前ら…」


オレが一言発しただけだと言うのに男子2人は大袈裟に肩をビクリと反応させた。


「「もっ申し訳ございませんでした!!」」


声でけェ…


「なんだよ突然…」


「俺達がふざけてボールの投げ合いしてたせいで澤谷さんに当たってしまったんです、本当にすみませんでしたっ!!」


そう言って男子2人は地面に穴が空くんじゃないかというくらいの勢いで土下座した。


「フーン、お前らがやったんだな。」


こいつらのせいでオレはともかく優木チャンが危ない目に遭うところだった。

オレはゆっくりと男子2人に近づいた。


「ヒィッ!!」


近づいただけだと言うのに男子2人は半泣きになっている。

そんなオレって怖いか…?

男にまで怖がられるなんて流石にちょっと傷つくわ…


「オイお前ら、オレとバスケするぞ」


「……はい?」


男子1人は驚いて口をポカンと開けていた。

するともう1人の方が口を開いた。


「そんな罰でいいんですか?」


オレをなんだと思ってんだよコイツら…どうせ不良か何かだろうと思ってるんだろうけど。


「だーかーらァ」


オレは男子2人の頭をガシッと掴んだ。


「バスケでお前らをボッコボコにしてやるってことだよ。覚悟しとけよ?」


オレはニヤッと笑った。


「「ヒェッ! お、お手柔らかにお願いします…」」


その後オレは宣言した通り男子2人をボコボコにした。

それも谷内との試合中だったことをすっかり忘れたまま…


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