ちっさい子とバスケ
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なんとか授業までに体育館に着いたが、先生に早めの行動をしろと軽くお叱りを受けた。
オレ達が整列した後、高そうなジャージを着た体育教師が授業内容の説明をし始めた。
「今日の授業は皆んな入学したばかりなので仲を深めるためにもバスケをしたいと思います。」
バスケか、あんまルール詳しくないけど中学校の授業でやったとき楽しかったんだよな。
「じゃあ男女に分かれて試合するからチームを自由に分けてくれ、男子は左の方、女子は右の方でやるように」
チームは自由と言っても女子6人しかいねぇぞ…
「アキちゃん! 一緒にチーム組もう」
「おー、いいぜ。あと一人は……美濃! 一緒に組まないか?」
オレは端っこの方でオロオロとしていた美濃に声をかけた。
「え! 私運動苦手なので見学でもしとこうかなって思ってたんですけど…」
「女子6人しかいねぇから1人抜けただけでも困るんだよ。別に足引っ張っても怒んねぇから組むぞ」
オレは少し強引すぎたかもしれないと不安になったが美濃は嬉しそうにニヤニヤした。
「澤谷さんやっぱかっこいい…美灯那クンみたいです!!」
美灯那クンがどんな奴かは知らないが褒め言葉として受け取っておこう。
それよりもさっきから誰かに見られてるよな…
「ねぇ、2人共。オレさっきから視線感じるんだけど呪いとかだったらどうしよう」
すると美濃は笑いだした。
「何言ってるんですか〜澤谷さんったら、後ろに人がいるんですから当たり前じゃないですか」
「あ、なるほど。後ろに人がいたからか〜」
………はァ?!
後ろを向いたら確かに人がいた。
後ろにいたのは、ツインテールの小さい女の子だった。
「まじかよ気づかなかったわ…誰このちっさいの、小学生?」
すると後ろにいた女の子は口を膨らませた。
「ちっさいとか言うな!! クラスメイトの谷内美鼓よ!」
「同い年かよ! 高校に紛れ込んだ小学生かと思ったわ…」
身長がオレの胸のところまでしかないし目もまん丸としていて高校生には見えない。
「ずっと後ろにいたのに気づかないってことあるんですか…?」
美濃は疑いの視線をオレに向けてきたが本当に気づかなかったのだ。
「仕方ねぇだろ…こいつちっさいからわかんなかったんだよ、てか教えてくれよな」
「てっきり気づいていると思ってました…」
「そもそもなんでこいつはオレの後ろにいたんだ? このストーカーか?」
「ストーカーじゃないわよ! ただ高身長の澤谷が羨ましくてずっとみてただけだし」
そう言って谷内は顔を真っ赤にして口を膨らました。
「お前オレの身長が羨ましかったのか? でっかくなりたいならご飯いっぱい食べれば大きくなるぞ。パン奢ってやるよチビ子チャン」
オレはそう言って谷内の頭を撫でた。
「子供扱いしないでよ! パンなんて要らないんだから!!」
谷内はオレの手を振り払った。
「もう、アキちゃん! ちっさい子には優しくしなきゃでしょ」
「アンタまでちっさいとか言うな!」
「あ、ごめん…!」
優木チャンの悪気ない天然攻撃に怒ったのか、谷内はさっきよりも顔を赤くして怒っている。
「だいたいアンタ達のこと前から気に入らなかったのよ! この高身長女子め!!」
理不尽過ぎるだろ…!
「オレ達だって好きで高身長になったわけじゃないんだから文句言われてもな…」
対応に困っていたら美濃が何かを思いついたのか手をポンッと鳴らした。
「しょぼい喧嘩なんかしてないでバスケで勝負したらどうですか? 気分も晴れると思いますよ。ねっ、谷内さん」
「確かにそうね、勝負よ澤谷&優木!」
谷内はちいさな指でオレ達2人を指した。
名指しされなかった美濃は気まずそうに手を挙げた。
「あの、私も一応澤谷さんのチームなんですけど…」
美濃が見えていないのか、谷内は気にした様子もなくオレを睨んだ。
「絶対に勝ってやるんだから!」
「いいぜ、乗ってやるよ」
「おーい、おふたりさ〜ん無視ですか?」
酷い…と言いながら半泣きになっていた美濃を優木チャンは優しく撫でた。
「私は無視しないから元気だして? 2人も多分悪気は無いから…多分ね」
「はわわ!! 優木さんマジ女神」
くっそ、羨ましいぞ美濃…
「あ、そういえばオレ、バスケなんとなくしかわかんないんだけど大丈夫か?」
「ただの交流を深めるだけのゲームだし別に大丈夫なんじゃない? 私もある程度しかルールわかんないし…」
「あ、私アニメの知識くらいならあるので任せてください!」
美濃は自慢げに言ってるがさっきまで見学しようとしてたよな?
すると体育教師がデカいタイマーを持ってきた。
「チーム決めたなら試合始めろよ〜ここにタイマー置いとくから」
それだけ言い残すと体育教師は男子の方に行った。
「試合って何分かわかるか? てか決まってんの?」
「6分くらいじゃないですか? 知りませんけど」
適当だなァ、任せてくださいって言ったのはどこの誰だよ…
まあ、優木チャンが言ったようにゲームだから細かいことは気にしないでおこう。
「アンタ達、絶対倒してやるんだから!」
谷内はやる気満々といった感じだがこいつもできるのか…?
谷内はクラスメイトの女子2人とチームを組んでいるが、女子2人は巻き込まれてイライラしているのかボソボソと文句を言っている。
いかにもカースト上位に居そうなお洒落女子で怒らせたら面倒なタイプだな…
「じゃあオレ達も程々に頑張るか、おー」
「「お〜」」
オレは一応掛け声を出してみたもののかなり緩いものとなった。
「アンタ達やる気ある訳?!」
こうしてオレ達のしょうもない試合が始まった。