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オレの部屋

電車で服をどこで着替えるか話し合った結果オレの家に行くことになった。


家の前に着いたのはいいが、優木チャンは不安そうな顔をしてモジモジとしている。


「本当にお邪魔しちゃっていいの? 迷惑じゃないかな…」


「そんな気にすんなって、オレの親はむしろ喜ぶと思うぞ」


「でも…」


「いーからァ」


オレは不安そうな優木チャンを無視して家のドアを開けた。


「ただいまァ」


「お邪魔します…」


オレは靴を適当に脱いでリビングに向かった。

ちなみに優木チャンは綺麗に脱いで並べている。

リビングには夕飯の準備をしている母さんがいた。


「おかえりなさい。あら…? その子誰?」


母さんは不思議そうに俺のうしろに隠れている優木チャンを見た。


「友達だけどォ」


「お友達?!」


母さんは目と口を大きく開けた。


「うそ…本当に友達出来たのね?!」


「嘘だと思ってたのかよ…」


「だってアンタ中学生の時友達いなかったし心配だったのよ。オマケにガラも悪いから…よかったわぁ、安心した」


母さんは嬉しそうにそう言ったがガラ悪いって酷くないか? 確かにオレは高身長だし目つきも悪いが。


すると、オレのうしろに隠れていた優木チャンは俺の横に立って会釈した。


「こんばんは、優木南乃葉と申します。遅くにお邪魔してしまってすみません…」


優木チャンは申し訳なさそうな顔で頭を下げた。

そんなに悪いことをした人みたいにしなくても…


「あら全然いいのよぉ、アキと仲良くしてくれてありがとね」


「いえ、こちらこそアキちゃんと仲良くなれて毎日が楽しいです!」


なんかすげぇ恥ずかしい…


「そう言って貰えると親としても嬉しいわぁ。あっそうだ! 良ければ夕ご飯うちで食べて行かない?」


「え?! さすがに悪いですよ!」


優木チャンは両手をブンブンと横に振った。


「遠慮しなくてもいいのよ? 私としては人が多い方が楽しいからむしろ食べて言って欲しいくらいよ」


「でも…」


優木チャンはオレの顔を見た。


「優木チャンが食べていきたいって言うならオレも全然いいと思うぞ」


「ならご馳走させてもらおうかな…」


それを聞いた母さんは満足そうに笑った。


「じゃあ決まりね! 今日はお父さんも遅くなるって言ってたし丁度言いわ。準備してくるから荷物置いてきなさい」


「へーい、優木チャンついてきて、俺の部屋2階だから」


「わかった」


階段を登り終わったオレは部屋のドアを開けた。

部屋のベットには読みかけの百合漫画が置きっぱなしになっていた。


「ここがアキちゃんの部屋かぁ、入っていい?」


「ちょっと待ってくれ! 部屋汚いから片付ける、すぐ終わるから!!」


オレはベットに置いてあった漫画を素早くクローゼットの中に隠してある本棚に入れた。

クローゼットには興味本位で買った百合漫画と小説を入れている。

これをもし見られたら同性愛者だってことがバレるかもしれない。

それは絶対に避けたい。

オレは他にも何か無いか部屋を一通り確認したあとドアを開けた。


「終わった、入っていいよ」


「お邪魔しま〜す」


「荷物は適当に置いてていいよ、とりあえずまず着替えよ…ってなにジロジロと人の部屋みてんだよ」


優木チャンは物珍しそうにオレの部屋をジロジロと見ていた。


「思ってたよりも物が少なくてシンプルな部屋だなぁって思ってさ、なんかカッコイイ部屋だね!」


「そうかァ?」


確かにオレの部屋は物は少ないし、家具も白黒茶のシンプルな色ばかりだ。

女子の部屋って感じはしないから優木チャンみたいに女子力が高い子には新鮮なんだろう。


「私はすぐに物買っちゃうから部屋が散らかるんだよね〜こういう綺麗な部屋憧れるな」


「まあ服とかも殆ど買ったりしねぇからな。てか、そんなことよりも早く脱げよ、胸キツイだろ…」


巨乳じゃないから分からないが、多分胸を潰すのはキツイはずだ。


「あっごめん! すぐ脱ぐよ」


優木チャンは慌てて服を脱ぎ出した。

オレはジャージのままでいいからまた脱ぐ必要は無い。

オレは優木チャンが着替えているのをなるべく見ないようにうしろを向いた。


「なんでうしろ向いてるの?」


「気分だよ! いいからさっさと着替えろ」


友達である以上今後もこういう場面が何度かあるだろう。

慣れなくちゃな…見ているうちに慣れるか? いや無理そうだ。

どうしたらいいだろうかと考えていたら肩をポンと叩かれた。


「着替え終わったよ〜 はい借りてたブラ。本当助かったよ、ありがとう!」


「別にいいよ、こんくらい。元からこれ捨てる予定だったし」


すると優木チャンは顔を少し暗くさせた。


「伸びては無いと思うけど私が使ったせいで着にくくしちゃったかな?」


「だーかーらァ! 気にすんなって」


オレは優木チャンの頭に手を当てた。


「嫌だったらそもそも貸さねぇよ」


優木チャンは少し目を潤ませた。


「ありがとう…」


優木チャンは大きな目を細めて小さく笑った。


こんな笑い方もできるのか…

可愛い… けどなんかこの子、よく泣きそうな顔するし、どこか怯えてるような感じがするんだよな。

グイグイ来る時は来るのに、その後は申し訳なさそうにしてるっていうか…気の所為か?

さっきの笑顔もまだ申し訳なさが混ざっていた気がした。


「アンタ達〜? 早く降りてきなさい! 準備できたわよ」


下の階から母さんの大きな声が聞こえてきた。


「今行くー!」


「あわわ、急がなきゃ! 行こ行こ!!」


まだ知り合って間もないのもあるがお互いの事をよく知らない。

だからなんとも言えないか…

オレはとりあえず考えるのを辞めにしてリビングに向かった。

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