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ぼくはみんなと違うから

作者: 石馬

連載中のものが一区切りしたので前々から書いてみたかった短編に手を出してみました。


…一話完結って難しいですね。


楽しんでいただけたら幸いです。

 昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。

 おじいさんはいつも山へ行き、芝刈りに出かけるのが日課です。

 おばあさんはその間、川へ洗濯に行ったり、料理を作ったりと家事仕事をしながらおじいさんの帰りを待ちます。


 ある日、おばあさんがいつものように川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。

 これは甘いものが大好きなおじいさんが喜ぶだろうと思ったおばあさんは、その大きな桃を我が家まで持ち帰りました。

 芝刈りから帰ってきたおじいさんはたいそう喜んで、その桃を包丁でスパッと切りました。

 するとどうでしょう、大きな大きな桃の中には、元気な男の子が入っていたのです。


 男の子は桃から生まれた桃太郎と呼ばれ、おじいさんとおばあさんに大事に大事に育てられました。

 しかし桃太郎には、ひとつだけ悩みがありました。


 それは、自分にはお父さんもお母さんもいないということです。


 桃太郎も最初はそんなことは気にしていませんでしたが、周りの子供たちがそのことを理由に仲間はずれにしはじめたのです。

 おじいさんとおばあさんはたいそう心配しましたが、桃太郎はいつも笑顔でこう言いました。


「ぼくは、みんなと違うから」


 どこかかなしいその言葉を、桃太郎は胸をはっていつも言っていました。


 桃太郎が大きくなって、彼の村では大きな問題が起こりました。

 鬼ヶ島の鬼たちが、村のお宝を毎日奪いに来るのです。

 たちまちのうちに村は荒れはて、存亡の危機に直面していました。


 桃太郎はこの危機を脱するために、単身鬼ヶ島へ行くことを決めました。

 しかしおじいさんとおばあさんは大反対です。 なんで桃太郎がそんなことまでやらなくていけないのか、二人は桃太郎に問いかけます。

 桃太郎は答えました。


「ぼくは、みんなと違うからさ」


 いつものように、誇らしく胸をはって言ったその姿に、優しいおじいさんとおばあさんはしたがうしかありませんでした。


 せめて立派に見送ってあげよう。

 そう思ったおじいさんは桃太郎に「日本一」と書いた旗を渡しました。


 せめてひもじい思いはさせないであげよう。

 そう思ったおばあさんは桃太郎にふくろいっぱいのきびだんごを送りました。


 おじいさんとおばあさんに見送られて、桃太郎は意気揚々と鬼ヶ島へ向かいました。


 途中、大きな白い犬に出会いました。

 その犬は体が大きいのを良いことに、周りの犬に威張って得意な顔をしていました。 しかしあまりにみんなから恐れられていたせいで、犬が怪我をしたことをきっかけに仲間はずれにされてしまいました。


 えさも自分で取れない犬に、桃太郎はおばあさんからもらったきびだんごをあげました。

 そして犬に言いました。


「君は他の犬と違って、大きくて強いのだから、他の犬よりも優しくなければいけないよ」


 犬は桃太郎に深く感謝して、お供として一緒に旅をすることにしました。


 途中、いたずら好きな赤毛の小猿に出会いました。

 小猿は体の色とその小さい体のせいで、まわりの猿から仲間はずれにされていました。

 いたずら好きな小猿は、その度にあっと驚くいたずらで他の猿を見返そうとしています。 しかし群れからはずされた小さい猿には、食べ物を探す方法を教えてくれる親がいませんでした。


 そんな小猿に、桃太郎はおばあさんからもらったきびだんごをあげました。

 そして小猿に言いました。


「君は他の猿よりも小さいけれど、あたまが他の猿よりも良い。

 それをもっとみんなの役に立つことに使わないといけないよ」


 いたずら好きな小猿は桃太郎の言葉の通りにしようと思い、お供として一緒に旅をすることにしました。


 途中、ひときわ美しい羽の雉に出会いました。

 その雉はとても臆病で、せっかく食べ物を取っても周りの体の大きな鳥たちに食べ物を横取りされてばかりいます。 そんな雉に桃太郎はおばあさんからもらったきびだんごをあげました。

 そして、雉にこう言いました。


「君は賢いし力もあるのだから、なにか困難に出くわしたときは逃げないで立ち向かう勇気を持たなくてはいけないよ」


 食べ物をくれた桃太郎に感謝した雉は、桃太郎のお供として一緒に旅をし、桃太郎の言いつけを守ろうと決めました。


 三匹のお供を連れた桃太郎は、とうとう鬼ヶ島に着きました。


 桃太郎と三匹のお供は、バッタバッタと鬼を倒していきました。


 たまらず、鬼たちは降参しました。

 鬼たちに宝を返してもらおうと、桃太郎たちが鬼ヶ島を見渡すと、鬼たちは痩せていて、 みんなおなかを空かせているようでした。お宝もどこを見渡しても見つかりません。


 一人の鬼に話を聞くと、村から奪ったお宝はすべて、食べ物を買うために売ってしまったそうです。


 かわいそうに思った桃太郎は、鬼たちに自分の持っているすべてのきびだんごをあげました。

 鬼たちは桃太郎に聞きました。


「なんでお前は、俺たちを倒しに来たのにそんな助けるような真似をするんだ?」


 桃太郎は答えました。


「ぼくは人とは違うからさ。

 ぼくは桃から生まれた桃太郎だ。

 だからぼくたちは、もっと人とは違うことをしなければいけないんだ。 最初は君たちを倒すのがぼくの役割だと思ったけど、君たちも人とは違うせいで苦しんでいる。

 だからぼくは君たちの助けになりたい」


 桃太郎のその言葉に心を打たれた鬼たちは、改心して人々と共に生きる努力をしようと決意しました。


 それから数十年後、人々と鬼たちは共存することに成功しました。


 鬼ヶ島には、桃太郎の銅像が建てられ、この言葉が一緒に添えられています。


「ぼくは、みんなと違うから、みんなと違うことをしなければいけないんだ」

いかがだったでしょうか?


この話はいつぞやテレビであったことを自分なりに書いてみたものです。


正直上手く書けた自信はありません。


感想やアドバイスは常に待っています。


どうぞ宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] こういうテーマ性の強いお話大好きです。 道徳のテキストみたいでした。 周囲の偏見に立ち向かう勇気が欲しいですね。 「違うから」という言葉は、言い方・使い方を間違えるとひねくれた偏狭な人物像に…
2010/07/05 19:31 退会済み
管理
[一言] どうも、おこきです。石馬さんの作品を読ませてもらおうとしたら『童話』があるではないですか! 自分は、このサイトで童話を読んだことがなかったので興味津津になり読ませて頂きましたw 石馬さん…
感想一覧
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