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26話:紅の魔力

どうも、眠れぬ森です。

遅くなり申し訳ございません。

拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。

 マルコ率いる魔法士との戦闘が始まったのだが、俺たちは苦戦を強いられていた。と言うのも、リアスやジェームス、リーネといった戦闘に慣れた者たちの足を、俺たちパーティーが足を引っ張ってしまっていたからだ。


「くっ!?」


「サーシャちゃん大丈夫かい?」


「ありがとうございます、ハルトマン先輩!」


「礼は後で、今は戦いに集中しよう!」


「あ、は、はい!」


 このように俺たちは対魔法士戦闘の経験が浅く、しかも呪いの魔道具(カース・アイテム)で魔力が上昇した魔法士達に苦戦を強いられていた。


「きゃっ…!?」


「リーネちゃん、大丈夫!?」


(わたくし)が援護致しますので、学園長様は攻撃を!!」


「分かっているけど、そうさせて貰えないのよね!!」


 特に、魔力壁を張ることの出来ないアイリスには、リアスとリーネ二人がかりでフォローに徹している為、攻撃に回れないでいた。


「なんで!コイツらダメージを与えても向かってくるのよ!」


 サーシャが相手魔法士の一人に水魔法を放ちつつ、苛立ったような声で言った。そう、相手はマルコが使用したの呪いの魔道具(カース・アイテム)効果で理性を失っているうえに、まるで痛みを感じていないかのようにこちらの攻撃をものともせずに向かってくる。


「これじゃあキリが無いね。」


 ジェームスが相手魔法士に雷魔法を放ちつつ言った。しかし、相手は全身を焦げ付かせながらなおこちらへ攻撃してくる。


「まるで操り人形じゃない、まさか!?」


 その様子を見ながら呟いたリアスが、苦々しい表情を浮かべてマルコを睨みつける。そんなリアスを見ながらマルコはニヤリと笑いながら言った。


「気づきおったか?流石は特級魔法士のリアス・エルドラドだわい。」


「マルコ伯爵、貴方の使っている魔法は、闇系等魔法の精神掌握(メンタルコントロール)かしら。」


「そうだとも、それにこの呪いの魔道具(カース・アイテム)魔力解放の指輪(スクランブル・リング)の力も合わせるとここまで支配出来るわい。」


 マルコはそう言うと、再び魔法を使った。すると、俺たちに倒されて倒れていた数人の魔法士が再び起き上がりこちらへと攻撃をしてきた。


「ちっ、このままじゃジリ貧だね。」


「ジェームス、精神掌握(メンタルコントロール)はどんな魔法だ。」


 俺は魔法を回避しながらジェームスに問いかけた。すると彼は魔力壁を展開しながら答えた。


「相手の精神に干渉する闇系統魔法の一つで、本来は相手の負の感情を引き出して動揺させる魔法だよ。でも、マルコ伯爵は今の増強された魔力を使って完全に精神を乗っ取っているね。」


「解除する方法は無いのか?」


「あるよ。」


 ジェームスはそう言うと、糸目を少し開いて続けた。


「使用者が解除するか、使用者を殺す。若しくは魔法を受けた人を殺す、この三つだ。」


「なるほどな。」


 その言葉に、俺は短い返事を返す。つまりはここから生きて抜け出すには殺すしかないということだ。


「どうするんだい?ライアー君。」


 ジェームスは俺を見定めるように問いかけた。俺はその問いに答えるよう深呼吸をした後に、ブラックホークとガーディアンを構え敵に向かって行った。そして、相手魔法士の魔法を躱しながらガーディアンで足を撃ち抜いていく。そのままの勢いで、今度はブラックホークで魔法士の頭を次々に撃ち抜く。そうして、一瞬のうちに十人近くの魔法士を絶滅させた。


「なんだと!?」


「ライアーくん…」


 その様子を見て、マルコが驚きの声を上げると同時にリアスが目を見開いて呟いた。すると、マルコが動揺したからか、相手魔法士の動きが止まった。それを見て、俺はマルコに静かに声をかけた。


「なにを驚いている?殺しに来た奴を殺しただけだ。」


「下賎な魔術士風情が…」


 俺の言葉にマルコは怒りの表情を露わにする。すると、今度はサリアやサーシャ、ジェームスとリーネに向かって叫んだ。


「お前らも魔法士だろう!!なのに何故魔術士の味方をするのだ!!お前たちも崇高な魔法士になりたくはないのか!?共に魔法士の地位を守るために戦おうではないか!!」


 しかし、サリア達はそんなマルコの言葉に言い返した。


「そんなの関係無いよ!!私はライアー君について行く!!」


「そうだわ!!ライアーと居れるなら地位も何も関係無いわ!!」


「そうだね、オレも特に魔法士にこだわりは無いよ。」


「そうですわね〜、(わたくし)は魔法士と言えるかも怪しいところでもありますので〜。」


「な!?貴様ら…!!!!」


 サリアたちの言葉にマルコは驚愕の表情を浮かべて後ずさる。


「残念だったわね、魔法士全員が貴方のような考えじゃないのよ。」


「ぐ…」


 リアスの言葉に悔しそうな顔をするマルコだったが、突然大声で笑いだした。


「ククク…クハハハハハ!!そうか、そういう事か!!」


「何がおかしい、マルコ。」


「いやはや、下賎なクズは伝染するのだなと思うと笑けてきおったわい!!」


「なんだと?」


「ライアー・ヴェルデグラン、貴様はやはり魔法士にとって消さなければならない存在だ!!」


 そう言うと再び魔法で魔法士を操り、俺たちに攻撃を仕掛けてきた。狙いは俺ひとりだ。


知覚限界突破(ブーストアップ)!!」


「ライアーくんの援護をするわよ!!」


 俺は異能を使い攻撃を避けていくと、リアスの言葉でサリアやジェームス達も攻撃を始めた。魔法による攻撃を魔力壁で防ぎ合う、そんな攻防戦始まった。


ガガガガガン!!!

パパパパパパパパン!!!


 俺はブラックホークとガーディアンで敵の魔法士を撃ち抜いていく。しかし、操られているとはいえ向こうも魔法士だ、段々と銃弾の通りが悪くなってくる。リアスたちのも懸命にフォローをしてくれているが、やはりサリアたちを守りながらだと戦うのにも限界がある。


「う…」


「なんなよ…これ…」


「サリア!!サーシャ!!」


 すると、突然サリアとサーシャがふらつきながら膝をついた。俺が声をかけると、ジェームスが叫ぶように答えた。


「魔力の使いすぎで一時的なダウン状態だ!!」


 その言葉に安堵した一瞬だった、俺は横から近づいてくる魔法士に気が付かなかった。


「ヴァァァァ!!!」


「!?」


 気がついた時には既に目前に火の魔法が迫っていた。もはや知覚限界突破(ブーストアップ)を使用して避けられる距離ではない。俺はただ迫り来る魔法を見続けることしか出来なかった。


「ライアー…!!」


 その時、俺の体にぶつかったような衝撃が走り、横に飛ばされと共に何かが覆い被さる。


「あ…ぐっ…!!」


 それと同時に何者かの苦痛に呻く声が聞こえてきた。恐る恐る視線を下に向けると、そこには脇腹から血を滲ませているアイリスの姿があった。


「アイリス!!」


「ライアーくん、こっちへ!!」


 俺がアイリスの名前を叫ぶと、リアスが手招きをしながら叫ぶ。アイリスを抱えたまま知覚限界突破(ブーストアップ)を使用してリアスの元へ行くと、彼女は氷で作った壁を展開した。


「ライアーくん、アイリスちゃんを見せて!!」


「あ、ああ。」


 その言葉にアイリスを降ろすと、リアスは状態を確認し始める。


「はっ…はっ…はっ……」


 アイリスは短いが呼吸はしているようだ。しかし、俺の目からも重傷であることは間違いない。すると、リアスが渋い顔をしながら俺に言ってきた。


「今のアイリスちゃんの状態は早めに治療、もしくは治癒(ヒール)をかけないと悪くなる一方だわ。」


「リアスは無理なのか?」


 俺の問いに、彼女は首を横に振った。


「魔法で壁を作っているから、同時に治癒(ヒール)は使えないわ。」


「それならサリアは…」


「不可能ですわ。」


 そう呟く俺だったが、リーネの一言に遮られた。サリアもサーシャも魔力切れでダウン状態、ジェームスたちもそんなサリアたちを守るために迂闊にうごけない。どう考えても手詰まりだ。


「はぁ…はぁ…ライアー……」


 すると、苦痛に顔を歪めたままアイリスがこちらに話しかけてきた。


「あまり喋るな。」


 俺はそう言葉を返したが、アイリスはそれでもこちらに笑いかけてきて言った。


「アイリス…は、ライアーを、守れ…て、良かった…。」


「アイリス…」


 そう言うと、アイリスは再び意識を手放した。その瞬間、俺はあの日の事を思い出した。そう、はぐれ魔法士のアルベルトと戦った日の事を。

 あの日、俺は仲間を失った。そしてその日からもう二度と仲間を死なせないと、自分も死なないと誓った。それなのに、俺の目の前で仲間が一人重傷を負った。


(また仲間を失うのか?)

《体内魔力上昇、規定値オーバーを確認。更なる魔法での封殺を実行します。》


 そんな俺の頭の中に、あの声が響く。


(また俺だけ生き残るのか?)

《魔力封殺に失敗。大概への強制排出を実行します。》


「ライアーくん…?」


 俺の体から、紅の魔力が滲み出る。それを見てリアスが驚いたように問いかけてくるが、そんな事も気にせずに立ち上がると、リアスの魔法で作った氷の壁から外に出る。すると、待ってましたとばかりに敵の魔法士の攻撃が俺に集中してきた。それを見て、俺は呟いた。


知覚限界突破(ブーストアップ)…」


 世界が色を失いスローになる。その世界で、頭の中に再び声が響いてきた。


《魔力の強制排出を実行中、並行して防衛行動に移行します。》


(うるさい…)


《フェーズIの常時起動を確認しました。フェーズIIの実行を確…どういうことでしょうか?》


 俺は頭の中で呟く。すると、その声は俺の言葉に聞き返してきた。そこで俺は声に対して言った。


(防衛の力じゃない、ここから全員生き残る力が欲しい。)


《不可能です。私は貴方の防衛しか行えま…》


(出来るだろ?)


《……》


 俺の問いに超えの主は黙る。しかし俺はさらに続けた。


(お前が何なのかは知らないが、力を持っていることは分かる。だからこの場だけでいい、俺に力を貸してくれ。)


《…それには代償が必要になる可能性があります。よろしいですか?》


 一瞬の沈黙の後、声の主は答えた。それを聞いて俺は頷いた。


(仲間が助かるなら、そんなもの安いもんだ。早くしろ。)


《かしこまりました。フェーズIIIまで解除致します。それと、しばらくお休みになってください。》


 そんな声が聞こえた後、世界が元に戻ると共に俺の意識は深い闇の底へ沈んで行った。






ーーーーーー

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー






「ライアーくん…?」


 突然、ライアーくんから紅い魔力が滲み出たと思った瞬間、彼は私の魔法の外から飛び出して行った。それを狙ったかのように、敵の魔法士が一斉にライアーくんに魔法を放つ。


「ライアーくんっ!?」


 それに対して彼は立ち尽くしたまま微動だにしない。最悪の状況が頭を過ぎった。しかし、それは覆される事となった。ライアーくんから滲み出ている魔力により、敵の魔法が消し去られた。


「冗談だろ…」


「あらあら…」


 その光景を見てジェームスくんとリーネちゃんが息を飲む。


「なんなのだその力は…」


 マルコ伯爵もその光景に驚愕の表情をうかべている。ライアーくんはそんなマルコ伯爵を気にすることなくこちらを振り返り言ってきた。


「《すみません、少し眠っていてもらいます。》」


 その言葉と共にライアーくんは指を鳴らすと、ジェームスくんやリーネちゃん、サリアちゃんにサーシャちゃんがいきなり気を失ったように倒れた。


「ライアーくん…」


 その様子を驚きの表情をしながら呟くと、ライアーくんはこちらに近寄ってきて言った。


「《すみません、貴女は彼女の治療をお願いします。魔法の壁は解除して頂いて結構です。》」


「ごちゃごちゃうるさいぞ!!やってしまえ!!」


 そう言うとアイリスちゃんに目配せをした。いつもと違う雰囲気のライアーくんに戸惑っていると、マルコ伯爵が再び精神掌握(メンタルコントロール)を使用して、魔法士を操り魔法をけしかけてきた。すると、ライアーくんは魔力壁を私たち全員にかけてきた。その魔力壁は敵の魔法士の魔法を全て防ぎきった。


「なに!?貴様、魔術士ではないのか!?」


 その光景に、マルコ伯爵は再び驚きの表情を浮かべる。そんな彼を見ずにライアーくんは私に向けて声をかけてきた。


「《魔力壁は私が張っておきますので、彼女の治療をお願いします。》」


「ライアーくんは…どうするの?」


 私はそんな彼に問いかけると、彼はこちらを見つめながら言った。


「《私のことは気にしないでください、大丈夫ですので。》」


 私の問いにそう答えると、ライアーくんは踵を返して行った。そんな背中を見ながら、私はアイリスちゃんの治療へと向かった。




「貴様、どういう事だ!?魔術士ではなかったのか!?」


 ライアーの様子を見て、儂は内心焦っていた。魔術士と思っていたライアー・ヴェルデグランは突如として魔法壁を使ってきた。それだけでなく、こちらの魔法士が放った魔法を体から滲み出た魔力のみで消し去ったのだ。

 

(こんなことがあるわけが無い、奴が魔法士など!!)

「やってしまえ!!」


 儂は頭の隅に浮かんだ考えを振り払うと、儂は魔法士に攻撃の命令をした。残った二十人ほどの魔法士が一斉にライアーに魔法を放った。様々な属性の魔法が奴に向かって飛んでいく。


「死ね、ライアー・ヴェルデグラン!!」


 儂は勝利を確信して叫んだ。しかし、それは誤算となった。


「《攻撃を確認、対処します。》」


 その声と共に、ライアーは右手を横薙ぎにした。そこから体から放出されている紅い魔力が前方に拡散された。すると、その魔力に触れた魔法が次々と消滅していった。


「なんだと…」


 その光景に儂は呆然とした。儂が集めたラティスの魔法士レヴィルを含めて二級魔法士が多い、それに呪いの魔道具(カース・アイテム)を使い一級魔法士に迫る魔力を得ているはず。それなのに、その魔法をただの魔力のみで消し去ったのだった。


「《終わりですか。》」


「!?」


 突然、ライアーが話しかけてきた。その表情は先程とは違い、無表情だ。


「き、貴様、何をした!!」


「《防衛を行いました。》」


 儂は謎の恐怖感を押し殺しながら問いかけた。しかし、奴は淡々と答えるのみだ。それに言いようの無い気持ち悪さを感じた。儂はそれを振り払うかのように攻撃命令を出そうとした。


「《では、次は私の番ですね。》」


 しかし、それより先に奴の方が動きを見せた。奴の体から滲み出ていた魔力が渦を巻いていく。それは赤黒い熱を持った何かへと変わっていき、どんどんと大きさを増して言った。


「なんなのだ…貴様は一体なんなのだ!!」


「《貴方が知る必要はありません。》」


 儂は叫んだ。傍から見れば魔法ではあるが、それは得体の知れない未知の魔法に見えた。しかし、奴は一言だけ話すと、こちらへ向かってそれを打ち込んできた。


「《消えなさい、漆黒の爆炎(インフェルノ・ノヴァ)》」


 その瞬間、辺り一面を赤黒い炎の渦が包んだのだった。

ありがとうございました。

次話は今週中には時間を作って投稿したいと思っています。

次回もよろしくお願いいたします。

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